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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第四話 その二人の子供がどんな姿になるのかを僕らは知らない
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その妖精の中に悪妖精が居たことを僕しか知らない

「おー、豚がいる」


「アレはアーカン・ソナだね。触れると幸運になれる豚らしいわよ。人間的には」


「え、じゃあ触れて来よう」


「ちょっとまってセキトリ、なんかこっち来るわよ」


 アーカン・ソナという名の豚妖精は赤い耳と真っ白な身体の豚だ。

 そいつがなぜか近づいてくると、アルセの前にやって来て頭を垂れる。

 その頭をアルセが撫で始めた。


「なんか、アルセ大人気ね」


「そりゃ一応神様候補な訳だし、妖精にとっては敬うべき存在なのよ」


 実は凄かったアルセ。そのパーティーに居た御蔭で普通にアーカン・ソナを撫でれたテッテたちが興奮しながらこれで私も幸運です。とか喜び合っていた。


「あー、居た。人間の群れはっけーん」


「おー、突撃だー」


「ひゃっはー金髪以外は殴っちゃえー」


「げ、エサソンが来た」


「アレも金髪だけどタルイス・テーグとは違うの?」


「身体が透き通ってるでしょ。こいつ等この国にしかいないからタルイス・テーグ族とは別種に指定されてるの。一応一人の場合エシル、大勢だとエサソンというわ」


「さすがアニア、妖精の名前は得意そうね」


「妖精だもの」


 金髪以外のメンバーの髪を引っ張ったり肩に止まったりして遊びだした妖精たちを引き連れ、アニアに案内される僕たち。

 おお、なんか子供位の背丈の妖精が昼間っから酒飲んでる。少年少女が酒飲んで笑ってる風景にしか見えないぞ。


「アレは?」


「レプラホーンとクルーラホーン、フィル・イァルガの三人組ね」


 フィルなんちゃらって確か悪戯妖精じゃなかったっけ?


「折角だから他の妖精も教えてほしいです。ほら、あの水辺の辺りのオットセイモドキの被り物被った女の子とか」


「あれはセルキーあと向こうに居るのが右から順にローン、シェリーコート、サムヒギン・ア・ドゥール。あっちでパイプ咥えてるのがチャーン・ミルク・ペグ、目にバンドみたいな黒い帯嵌めてるのがビリー・ブラインド、あっちの手を振って来てる黒髪の女の子がブラック・アニス。あっちのおじさんがリュタンで、向こうに居るイケメンがガンコナー。あそこで虫歯痛いとか言っちゃってるのがワグ・アト・ザ・ワだね。あと、ほら、迎えが来たよ」


 と、アニアが指差す先に、食べ物の衣装を身に纏った女の子がとことこと近づいて来た。

 どうでもいいけどさ、ブラック・アニスって確か迷子の子供を食べる悪妖精じゃなかったっけ? アルセ、手を振らないで、なんか肉食獣が獲物見付けたみたいにギラリとした視線見せて来たからっ。


「お、本当に来たのだわ」


 ローストビーフの上着にチーズの帽子、パンのボタン二つで上着を止めてる女の子が帽子を押さえながら近づいて来た。

 赤いウェーブのかかった髪を揺らし、とことこと歩いて来るのは、アルセの半分くらいの背丈の妖精。


「エイケン・ドラムよ。よろしくなのだわ」


 お辞儀した拍子にチーズが落下した。


「のぉっ!? もったいないっ。さ、三秒。三秒前だからだいじょーぶ。まだ食べられるのだわっ」


 慌ててチーズを拾いあげ頭に乗せるエイケン・ドラム。

 どう見ても既にアウトだと思います。チーズに土が付いてたので払ってあげる。


「じゃあ案内よろしくねー」


「お任せあれなのだわ」


 アニアに任されるとエイケン・ドラムがくるりと踵を返して僕らの先頭を歩く。

 どうやらここから先はこの子に案内して貰うようだ。

 というか。さっきから後ろからブラック・アニスの視線が突き刺さってくるんだけど、これ、絶対誰かをロックオンしちゃってるよね? 


 あ、オヒシュキがいる。

 アルセの首をそちらに向けてやる。ほら見てアルセ。オヒシュキの色違い。


「おおっ!?」


「あ。こらエッヘ・ウーシュカは来るななのだわ!」


 気付いたエイケン・ドラムがフランスパンを引き抜き構える。

 ちょっと待て、それどこから取り出した?


「あれ? あの馬はオヒシュキではないのですか?」


「近づいたら肝臓以外食べられるのだわ。ニンゲン接近禁止なのだわ」


 悪いお馬さんのようだ。僕は咄嗟にアルセとペンネをエッヘ・ウーシュカから遠ざける。

 折角の食事なのに。と残念そうにするエッヘ・ウーシュカが湖へと帰って行くのを見届け、エイケン・ドラムがフランスパンを仕舞った。


「妖精同士なら問題は無いけど良い妖精も悪い妖精もニンゲンが来たってことで興味津津なのだわ。下手な妖精には付いて行かない方がいいのだわ。勝手に付いていって死んでも知らないのだわ」


「あはは。ちなみに近づかない方がいい妖精は居ますか?」


「あそこの川に居るジェニーとかペグ・パウラー。近づくと引きずり込まれるのだわ。赤い帽子は殆どレッド・キャップだから近づくと血塗れにされるのだわ。バンシーは叫ぶと死ぬし、デュラハンは指差されると死ぬのだわ。雄だとバーバンシーには気を付けるのだわ。群れで狩りを行うからベテラン冒険者でも潰されるのだわ。あと妖精墓場には近づかないことをお勧めするのだわ。モーザ・ドゥーグが墓守しているから見ただけで死ぬのだわ」


 とりあえず危険な妖精は結構いるらしい。皆気を付けよう。あとブラック・アニスが普通に後ろ付いて来てるんだけど、こらアルセ、おいでおいでしないで。確かにちょっと可愛いけど。アカネみたいにゴシックロリータファッションの黒髪の女の子だから可愛いけど、絶対ヤバい人だからっ。

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