その復讐者を皆は知りたくなかった
「リフィ!?」
「まさか、あんたが四聖獣!?」
「えええ!? ち、違います違います。私ではなくですね、えっと私はそのプレシオ様に海洋同盟に参加していただきたいなと思いましてその交渉に……」
海洋同盟ってなんだそれ?
「海洋同盟?」
「はい。私この付近の海洋全てを母に統治するように言われてるんです。でも海の中広いですし、魔王様大量に居るし、邪神も存在してるしで混沌としてるので、だったらその人たちと敵対して事を荒立てるよりは海洋同盟という名の不可侵条約を結んでしまおうと思ったのです。今は魔王様方に話し合いの場に付いていただきたく直接交渉中ですね」
といっても……と思わずため息を吐く。
「今のところ30カ所ほど回りましたが皆さんめんどくさいとか、なぜ俺がそんなものに合意せねばならんとか。身勝手ばっかりなんです」
そりゃそうでしょ。もともと自分の領地で好き勝手やっていたのだ。気に入らない領地と戦争したり、弱そうな領地を接収したり。思うままやってきたのに、今更ぽっと出のリフィが同盟組もうとか言ってきてもじゃあ同盟組みましょう。なんてよっぽど優しい奴か詐欺を行おうとしている奴かぐらいだ。
「海の事情とかはよくわからないけど、大変そうですね」
「そうなんですよぉ。だから、ちょっとだけ慰めてください」
と、なぜか僕に触手を巻きつけるリフィさん。
ちょっと、何で僕なの? あ、らめぇ、触手プレイとか誰も得しないからぁ。
「るぅぅ!!」
何してるの!? とルクルが慌てて救出に来る。
しかしリフィはそんなルクルの手まで引いて、近くの岩場に腰掛け、僕の腕に抱きついて来た。
ぬるぬるしてます。軟体生物なうえに先程まで海水浸かってたのでぬるぬるしてます。
逆の腕にはルクルさん。なぜこうなってるのか戸惑いながらもリフィに対抗して腕に抱きついて来ます。
「あ、あらぁ……」
「リエラ、なんかライバル多いわね」
「パルティこそ、焦ってるみたいですよ」
「な、なんのことかわからないわね」
リエラの言葉にパルティがそっぽ向く。
アルセとアニアが無事だったおいどんは自分の道を行くでゴワスの元へと向かい大丈夫だったのか声を掛けている。
どうやら湖の中に入ったゴワスさんはそのままここまで落下して来たようだ。
何を思ったのか僕らが来るのを待っていたようで進むことなく二人の話を聞いている。
「食らえ!!」
リエラが油断したその瞬間だった。
泉から何かが放たれる。
声に振り向いたリエラ、咄嗟に身体を捻り攻撃をやり過ごす。
背後に居たハイネスが避け切れずに直撃する。
そして、彼の鼻にそのフックがひっかかり、豚鼻へと変化させた。
驚くリエラ。すぐさま泉に視線を向ける。
「ふふふ。ようやく会えたわ。アルセ姫護衛騎士団。私に対するこの仕打ち、メガイスちゃんの仇ッ!!」
「うわわ!? あ、アマンダさん!?」
ざばり、出現したのは何を隠そう紫炎蜉蝣の元メンバーアマンダ。
ワカメが張り付いているせいか濡れ女か何かかと思えるくらい恐ろしい容姿で一瞬魔物かと焦ったよ。
「何でここに!?」
「あらー、やっぱり皆さんが仇でしたか……」
まいったなぁ。とリフィが頭を掻く。どうやらリフィが連れて来たらしい。
なんでも海の中で魔物や魚に追われていたところを助けたのだとか。
するとモンスターにテイムスキルで強制的にリフィのテイムニンゲンとなってしまったらしく、リフィが見かねて保護したのだそうだ。
アマンダはアルセにちょっかい掛けたから僕がバグらせたんだよね。
そのせいで攻撃スキルがなくなったらしく、唯一あった鼻フックスキルで鼻フックを放って来たようだ。ハイネスが面白い顔になってます。
「リフィさん、こいつらです。こいつらが私のメガイスちゃんを……リフィ……さん?」
「あー、その。ごめんねアマンダさん。私も、アルセ姫護衛騎士団の一員、です」
「な、なんですってぇぇぇ!? わ、私を、騙したの?」
「いや、騙したというか、その気は無かったのだけど……」
「おのれアルセ姫護衛騎士団ッ! 何処までも私の邪魔をしてっ!!」
「ちょ、逆恨み!?」
「煩い! この鼻フックで恥ずかしい姿を晒してしまいなさいっ、ふふ、この水晶にあんたたちの恥ずかしい姿を収めて新聞社に売り込んでやるわ」
「しゃ、社会的に殺す気だわ。ああ、どうしましょう、あんな不細工面を写真に取られて全国に配布されるなんて。ああ、なんて、なんて可哀想なアニアちゃん」
アニアが妄想に入ってしまった。もう一時間くらいはあのままになるだろう。
放っておいてもいいが鼻フックにされるのは確かに嫌だよね。アルセ、こっちおいで。あ、こらハイネスの顔見て指差して笑わないの。
「食らえ鼻フック」
水中に鰓を入れたまま鼻フックを放って来るアマンダ。
リエラが避け、パルティが避け、アカネさんが直撃しぶふぷぅっ。
思わず噴き出したけど、直後空気が凍りついた。アマンダの奴、マジで写真取りやがった。
無言でアカネが鼻フックを取り外す。
「いっぺん……死んでみる?」
笑顔で告げるアカネさん。目元だけは当然ながら笑っちゃいなかった。
そして、地獄が始まった……




