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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第三話 その一番の被害者を僕らは知りたくなかった
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その休息法を皆は知らなかった

「さ、寒い……」


 アカネの魔法は万能じゃ無かった。

 特に闘いが始まるとよく分かる。

 アカネから一定距離離れると途端ブリザードの直撃を受けるのだ。

 暖かい場所から急激な寒さ。皆戦闘大苦戦である。

 いや、テッテはいつも通りアカネの側でシャドーボクシングするだけでいいみたいだけどさ。


 というか、マホウドリここにも来てるし。まっほぅじゃないよ。エアークラフトピーサン居なくなったのになぜお前だけ残ってるの?

 あ、ネズミミックがマホウドリの背中に飛び乗ったぞ。羽毛だからぬくぬくだ。

 アルセがソレを見てポケットに入れてたチューチュートレインをマホウドリの背中に乗せてあげていた。

 そいつらも寒そうにしてたもんね。やさしいなぁアルセは。


「なんだあれ、汚っ!?」


 薄汚れたピンクの服を着たミニスカ女性が注射器持ってやってきた。

 この寒い中よくもまぁ薄着で……


「きちゃナースです。臭いので気を付けて」


「可愛らしい顔をしているのに、なんと残念な……」


「うわ、マジやべぇ!?」


「コータ大丈夫!?」


 近づいて攻撃しようとしたコータが数メートル手前で慌てて引き返して来た。

 ローアが彼を抱き寄せ自分の臭いを嗅いで落ち付いて。とか言ってます。おまわりさんこいつです。


「テッテ、悪いんだけどアレの相手はお願い!」


「任されました! そいや!」


 テッテがいるだけでかなり楽になるなぁ。接近されると攻撃無効化特性が発動するからちょっと面倒だけど、遠距離での闘いなら彼女の右に出るモノはいないだろう。

 いやー、僕もたまにはいい仕事したよな。


「ふぅ、結構歩きましたね」


「戦闘しながら五時間分だもの、疲れて来たでしょリエラ」


「はい。でも、トコカカまではもう少しでしょうし、まだ休む気は……」


「いえ、まだ半分くらいです。今日はこの辺りでキャンプをしましょう」


「え? 半分!? メリエさんここでキャンプって、どうやって……」


「え? いつも通り野宿を……ん?」


 小首を傾げるメリエ。どうやら前回もこの辺りで野宿したようだ。よく凍死しなかったな。

 神の御加護か何かか?


「ちょっとメリエ、まさかそのまま氷の上に寝っ転がるつもり?」


「雪が冷たくて気持ちいですよ?」


「アホか」


 アカネさんが引いてます。メリエ、アンブロシア食べたせいで人間辞めちゃったんだね。普通の人は今の場所で野宿したら次の日凍死して凍ってるんだよ?


「仕方ない。皆、カマクラ作るわよ」


 ため息交じりに告げるアカネ。

 しかしその場に居たメンバーはよくわからなかったようで小首を傾げる。


「あの、アカネさん、カマクラって、何?」


「あ、私もそれは知らないかな。地球では常識なのアカネさん?」


 パルティも神界で日本知識とやらを手に入れたようだけどカマクラまでは知識に取り込んでなかったようだ。


「……というわけで、人数が多いので数個にわけてカマクラを作ります」


 で、数分後、アカネさんによりカマクラ作成講座が始まった。

 まずは周囲に降り注ぐブリザードで積もった雪を魔法で集めて饅頭型の山を作ります。

 次に入口になる場所から掘り進め、内部を固めながら雪を掻きだし内部に空間を作っていきます。


「これだけ、ですか?」


「基本はね。簡単でしょ? 雪風防げて寒さも和らぐ。これぞ人類の知恵って奴よ」


 煉瓦状に組み上げて行くパターンもあるよね。確かこの掘り進める奴、内部が柔らかい状態のままだから崩れる可能性もあるんだよね。煉瓦状に固めて徐々に作った方が耐久度は高そうな気がします。

 でも簡易で充分らしいので皆が何グループかに分かれてカマクラ作りが始まった。


「おー?」


 あ、アルセ、蔦でカマクラ作っちゃったの!? それをやっちゃぁおしまいだよ……

 アルセのカマクラは隙間風びゅうびゅうだったので僕はそれに雪を被せて偽カマクラにしておく。骨格はヒヒイロアイヴィなので強度は万全だろう。ほぃ出来上がり。


 リエラとパルティ、ルクルが取りかかっているのは無難にできそうだ。

 のじゃ姫は侍たちを召喚して手掘りさせてます。頑張れ殿中でござる軍団。寒過ぎるからって主君討ちはしちゃダメだよ。たれのじゃさんに怨みがましい目をしないであげて? 一応姫だから。


 落ちこぼれニンニンは一人用の小さなカマクラを作っていた。

 他のメンバーに誘われたがわざわざ断って作ったようで、内部で火遁を始めて崩落していた。

 一人遭難したような状態で死にそうだったので救出してアルセのカマクラに放り込んでやる。

 既に退避していたマホウドリが突然投げ飛ばされるように入って来た落ちこぼれニンニンに驚きまっほぅ!? と叫んでいた。


 マクレイナとアンサー、コータとテッテ、クルルカとセキトリ、バルスとユイア、メイリャとハイネスが二人用のカマクラを作っており、ルグスがにゃんだー探険隊用のカマクラを必死に作っている。

 ジョナサンと至高帝はギリアムと共に男用のカマクラを、メリエとアカネは女性用のカマクラをセネカと作っている。


 うん、とりあえずアルセの蔦を皆使った方が早い気がしました。

 でも皆頑張ってるので伝えないでおく僕だった。ああ、自分で言うのもなんだけど、優しいなぁ僕。皆の努力を無駄にしないでおくなんて。


「お」


 アルセと共にカマクラに入り皆が終わるのを待つことにする。うん、ニンニン君、ここに火を焚いてくれたまえ。暖かハウスでゆったりしようぜ。

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