その人類が到達できない筈の場所を僕は知りたくなかった
「クエ――――!!」
珍しくエアークラフトピーサンが叫ぶ。
ダリア連邦から数分、僕らがやって来たのはメリエ曰く人類未踏区という場所らしい。
メリエさんが既にトココカ湖? とやらに向かい、僕らが行けるかどうかを調べて来たらしいので未踏区ではないと思われます。
そんな未踏区と呼ばれる氷雪地帯に来た瞬間、エアークラフトピーサンが一声上げたのだ。
なんだ? と思った次の瞬間見る見る高度が下がり、まだ氷雪地帯の入り口付近なのに氷の上に着陸してしまう。
僕らは小首を傾げながらもエアークラフトピーサンの外へを向かう。
「おー?」
「クェェ」
皆が外に出て、どうしたの? 代表して尋ねたアルセに、エアークラフトピーサンは申し訳なさそうに嘶く。
どうやら寒過ぎてこれ以上は無理らしい。
アルセが大丈夫だとにぱっと笑顔でエアークラフトピーサンを撫でる。
エアークラフトピーサンはまたここに迎えに来てねというアルセの言葉に頷くと、空軍カモメたちと共に空の彼方へと去っていった。
さて、という訳でこのさっむい氷の大地で中央に存在するらしいトココカ湖という場所向けて探検です。
アルセ、鼻提灯でてるよ。ほらきちゃないきちゃない。
アルセの鼻を拭いてあげる。その間にアカネが暖房魔法を作りだし、全員に施すことで寒さは和らいだようだ。
ところでアカネさん。僕には暖房掛かってませんよ?
いや、寒くは無いんだけどね。むしろほのかに熱いんだけどね。
やっぱりこれ、温度調整バグってないかな。
「人類未踏区……ですか」
「といっても未踏ってわけじゃないけどね。何人か既にここに来てるし」
とはパルティの言葉で、彼女が認識しているだけでも数人ここに来た事があるらしい。
殆どがトココカ湖へと向かうらしいのだが、そこでワカサギ釣りをして帰るおっさんたちが数人いるらしい。
わざわざこんな所に来るなよ。と言ってやりたいのだが、おっさんたちは趣味で来てるだろうから何とも言えないな。
「あ、見てくださいです。誰か近づいて来ますよ!」
「テッテちゃん、あれは多分偽人のクッコロさんだよ」
人かと思えばこの地に生息する偽人でした。
現れたのは金髪の甲冑女性。綺麗な顔の同一人物数人は、僕等を認識するとすっと剣を手にして走り込んで来る。
「トココカまでの道のりで出てくるのはこのクッコロさん、フリージー、アイスゴーレム、ペンペンたん、きちゃナース、血塗れトナカイ、ビルダースノーマンなどです」
メリエさん、ぺんぺんたんってあれか? 時代劇の逆塔でボスとして出現した巨大なペンギン娘。アレの下位存在ですか!? お持ち帰りおっけーですか!?
「いくです!」
先制とばかりにテッテが拳を振るう、ダメージを受けたクッコロさんは何故ダメージを受けたのか驚いている。
「ぬはは、無敵。です」
「あんまし調子に乗らない方がいいわよテッテ」
アカネさんが思わず苦言。アカネが言うのでテッテも慌てて気を引き締める。
調子に乗ってポカしたアカネさんが言うと言葉の重みが違うね。
「クッ、殺せ!」
HP危険水域になったようで、クッコロさんの一人が乙女座りに倒れ込み、テッテを睨む。
テッテは遠かったせいでその視線に気づかずクッコロさんを撃破した。
テッテさん、マジ鬼畜。
ここはバズが居ればなんかこう、バシッと絵になってたんだろうけどいないからなぁ。居ればまず間違いなくあのエルフさんによってクッコロさん殲滅させられそうだし。
ウチの夫に色眼使うなーとか言いながら種族壊滅するまで暴走しそうだ。
「敵が倒しづらい気が……」
「なんでしたら私にお任せください。幼女以外であれば容赦は致しませんぞ?」
「いや、女性偽人相手に全裸卿はちょっと……」
パルティの言う通り物凄く酷い絵面になりそうだから至高帝よりはのじゃ姫の召喚侍たちの方がまだマシかな。
「フリージー来ました、あっちのは……アイスゴーレムかな?」
「とりあえず進みながら撃破しましょ。メリエ、トココカまではどのくらい?」
「えーっと、この辺りですから四時間程でしょうか?」
「結構掛かるわね。まぁいいわ」
「リエラさん、アイスゴーレム相手なら私にお任せくださいませんか?」
「ギリアムさん? ええ、いいですよ?」
ギリアムがここぞとばかりにリエラに主張してきた。
うーん。なんかこう、もやっとというか、なんというか、内からバグが溢れて来る気がします。
そして走り込むギリアム。アイスゴーレムの大ぶりな一撃を喰らい吹っ飛んだ。
「ちょ!? ギリアムさん!?」
ふ、ざまぁギリアム。ところで皆さん気付いてる? レーニャがかっちこちに固まってるよ? ネズミミックも危機感を覚えたようでレーニャから出て彼の頭の上で寒そうにしてます。
レーニャの動きが油切れかけの機械みたいで面白いぞ。




