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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第二話 その火山の山頂を僕らは知らない
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その生まれ変わった物体を彼らは知りたくなかった

「ふはー、つっかれたぁ」


 ダリア連邦に戻ってきた僕たちが馬車から降りると、セネカが思わず息を吐く。

 皆も思いは一緒らしく、その場に座り込むコータやセキトリ。


「もう、セキトリ様はしたないですよ」


「クルルカは元気だなぁ」


「私も疲れてますってば。ほら、宿までもう少しです頑張って立ちましょう」


「コータもよ。ほら、肩貸してあげるから」


「ちょ、女の肩借りるとか恥ずかしいだろ。くっつくなってば、わ、わかったよ。立つ、立つから。ちょっと、ローアさん胸っ、胸当ってる」


「当ててるのよ」


 なんだこれ? なんだこれ? リア充共爆死しろちくしょぉっ!!


「ひとまず我が屋敷にご案内いいたしますアルセ神様。お気に召さないかもしれませんが、我が家でおくつろぎくださいませんか?」


「お!」


 よきにはからえ。とばかりに拳を突き上げるアルセに、ありがたき幸せ。とステファンが拝礼して自分の屋敷へと案内する。

 まぁ、馬車が止まったのが彼の屋敷前だってのもあるんだけどね。

 にしても、すごいなこの屋敷。黄金に輝いてやがらぁ。


「なんていうか、すごい、ですね」


「リエラ様分かりますか? 私は黄金の輝きが好きでしてな。財力にモノを言わせて黄金の屋敷を作ったのですよ。アルセ神様の教会も黄金にしてしまいましたよ。ハハハ」


 その辺りは教会見たからよく分かるよ。

 にしてもまばゆいというか眼に痛い屋敷だな。内部も黄金とかだったら僕は野宿を敢行するぞ。流石に眩し過ぎて何かやだ。


 結論から言うと廊下も黄金でした。

 なんだこの屋敷。滅茶苦茶ヤバいじゃないか。赤絨毯敷かれてるからいいけど、黄金を踏みしめていると思うとこう、なんていうか罰当り感が……


「黄金って結構柔らかいんですね」


「ええ。踏み締めすぎると足跡が付きますので気を付けてください。慰謝料は高いですよ」


「うぇ!?」


 セネカさん驚きする。メリエは恐がりすぎだ。見て見ろニンニン君を。こんなところでも天井にひっついて移動して……指紋――――っ!!?


「こちらの部屋が男性用となります」


 広い!? なんだこの広さは!? 二十畳はあるよな? え? もっと? 僕にはよくわからないよ。なんかもう広いとしか言いようがありません。

 運がいい事にこの部屋は黄金が少ない。というか黄金の壁とか天井に壁紙とか張って黄金を隠してるっぽい。


「それで逆方向にあるのが、女性用です。内部のトイレとジャグジーは自由にお使いください」


 こっちも広い! というか男子部屋よりさらに広い。60畳くらいあってもおかしくないぞ!?

 ベット何台入ってるんだ。ここまで凄いとむしろ壮観だよ!?

 若干引き気味の僕等に、ステファンさんはふっと笑みを浮かべる。


「いかがでございましょうアルセ神様?」


「お」


 アルセは笑顔で一言。そして再び拝礼するステファン。よくわからないけどアルセの思いを理解できてるならそれでいいかな。

 ステファンさんのお言葉に甘える形で僕らはステファン邸に一日泊まることにしたのだった。

 ちなみに僕は今回女性部屋に入り込んだんだけど、バグソナーのせいで直ぐに見つかり男性部屋へと連行された。

 どうでもいいけどにゃんだー探険隊って半分くらいがメスだったんだなぁ。




 明けて翌日。

 昨日は男どもの部屋で眠ったので寝た気がしない。

 畜生のじゃ姫のペットだからってワンバーちゃんだけ女子部屋に残りやがって。


 屋敷を出て迎えに来たエアークラフトピーサンに乗って次の場所へ行くことにする。

 見送りに出て来たステファンにお礼を告げて、僕らは次々とエアークラフトピーサンへと入り込んでいく。


「お」


「どうかなさいましたかアルセ神さ……そ、それは!?」


 道案内御苦労さま。お礼だよ。とばかりに渡されたアルブロシア。

 ああ、またバグキャラが増えちゃう。

 涙を流し感激のままにその場で齧るステファンさん。そして、変化が起こった。


 ステファンが輝き、周辺の空に黒雲が集まってくる。

 ビシャァンっと稲妻が駆け降りステファンを襲った。

 否、それは襲ったというよりは、力を与えたというべきか。

 光が収まった先に、三角座りで回転しながら浮いているステファンさん。ゆっくりと回転していたが、光が全て収まると地面に降りて来た。


 眼を開き、立ち上がる。

 って、なんか服無くなってる!? 何処に? あ、空からひらっひらと降って来た。


「こ、これは、一体……」


「ひゃぁぁ!? ステファンさん服、服!? というか羽!?」


「服? 羽?」


 ステファンがゆっくりと自身を確認する。全裸状態となった自分の体を見て呆然と、しかし視界の片隅に映った自分の背中から出たモノに気付いて視線を向ける。

 ステファンの肩甲骨辺りから、透き通ったミルクグリーンの翼が一対、生えていた。


「こ、こんな、こんな奇跡が!? これではまるで天使ではないか。天の使い、否、これはまさか、神の……使い?」


 はっと見上げたその先には、エアークラフトピーサンに乗り込もうとしているアルセと僕。

 うん、まぁ、なんだ。好きに生きると良いと思います。

 人を止めてしまったステファンさんに黙祷捧げ、僕らはエアークラフトピーサンで飛び立つのだった。


「ああ、神よ、我が神よぉぉぉ! 私は神の使いとして、誠心誠意、命をお掛けすることを誓いますぞぉぉぉぉぉ――――っ!!」


 豆粒のように遠ざかるステファンさん、僕らの場所まで届くほどの大声で叫び続けるのであった。

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