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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第二話 その火山の山頂を僕らは知らない
1163/1818

その魔物がなぜ無事なのかを僕らは知らない

「てぇや!」


 テッテの拳が空を切る。

 離れた場所に居たファイアリザードが打撃を受けてマグマの中へと吹っ飛んで行った。

 うん、テッテが無敵過ぎる。

 見敵必殺とばかりにその場でシャドーボクシングするだけで敵が次々駆逐されて行きます。

 そのせいか他のメンバーが切り結ぶ暇すらない。


 近場のマグマから出現する敵もリエラがいる御蔭でノ―ダメージで撃退してるし、大軍に囲まれてもアンサーが対応。もはや敵の方が可哀想な位に鉄壁な布陣です。

 殆どのメンバー暇そうだ。武器構えるだけで敵が死んでいるので何も出来ずただ見るだけになってます。


「ふぅ、良い汗かけますね」


「熱いしな。俺らは不快な汗しかかけてないけどな」


 コータが思わずむっとして告げる。

 さっきから敵襲の度に剣を手にして突撃して、数歩踏み出したところで撃退される敵を見て足を止めるを繰り返しているので不満が溜まっているようだ。


「そうね。そろそろ他のメンバーも運動した方がいいかも。リエラ、手ごろな敵を見付けたらテッテとアンサー休ませて他のメンバーで対応して貰いなさい」


「あ、そ、そうですねアカネさん」


 リエラもリーダーになったとはいえ引っ張ることには慣れ始めたけどメンバーの不満解消とかそれを察知するだけの余裕はまだないようで、その辺りを目ざといアカネが居ることでなんとかリーダーの面目躍如になっているようだ。

 リエラもまだまだリーダーとしては未熟だね。頑張れリエラ。


「にしても熱いわね」


「パルティさんでしたら大丈夫そうですのに、魔法とかは使わないので?」


「使えるけど、私一人だけ涼しくなっても皆に悪いじゃないですかメリエさん」


 それもそうだね。ちなみに、僕はバグのせいか熱さを感じないのですが、これは卑怯と言っていいのかな。むしろどこかでバグってるのか少し寒いくらいなんだけど。

 あ、止めてアルセ。僕も熱いかもって思ったのは分かるけどポシェットから取り出した団扇で煽がないで。アルセの蔦使って作って貰った奴有効活用してくれるのはいいけど寒いから。


「と、ところでリエラさん、中腹ってまだですかね? もう一時間は歩いてる気が……」


 水属性なセネカにはきついらしい。

 しかし、目視でも分かるように未だに中腹すら豆粒である。あと五時間くらいは登らないと着きそうにないなぁ。


「ああっ!? レーニャ溶けてる!?」


 アニアが気付いた。レーニャが猫スライムみたいに半分溶けてます。アフロヘアも蕩け切って元の猫型に戻ってるし、ネズミミックの頭がレーニャの頭から付き出てます。ジタバタもがくネズミミックがちょっと可愛い。

 見ないで、私を見ないでーっと恥ずかしそうに悶えるネズミミック。隠れ家が無くなったことで精神不安になってるみたいだ。

 しかしレーニャは自分の身体が蕩けているのに気にしてないようで、溶けたカレールーバーを齧っている。


「にゃー……」


 にゃんだー探険隊も流石に熱すぎてはしゃぐ気力はないらしい。空飛ぶルグスに全員がくっつき、ルグスは自身に氷魔法を使って全身を冷やすことで猫達を癒していた。

 そして、のじゃ姫もまた力尽きワンバーちゃんに寝そべってたれのじゃ化していた。うん、ごめん、いつも通りだった。

 ただし、殿中でござるを一人召喚してそいつにアルセ団扇で煽がせている。


 ついでにもう一人。ルクルさんが死にそうです。

 もともとが海兵洞窟で水属性なルクルさんは、灼熱の山に耐性がなかったようだ。ただ歩くだけで大量の汗を掻いてふらつき始めている。

 時折回復魔弾打ち込んであげてるけど焼け石に水だなぁ。

 何とかしてあげたいけどどうしようもないぞ? アルセ、何とか出来ない? アルブロシアは無しの方向で。


「来ました敵です。えーっと……」


「カルネボンスワロゥですな」


 マグマの川から現れたのは巨大なツバメ……の骨格標本。ああ、ボンって何かと思ったら、カルネージボーンスワローの略か。あれって、生きてる生物でいいの?


「リエラさん、向こうからも何か来るです!」


「おお、珍しい。入浴親父ですな」


 どっかで見たことのあるような生物だ。側面と頭頂部に毛が一本の丸メガネをかけたような頭がお尻みたいな形してるおっさんがハラマキと丸首シャツ、トランクス姿でマグマの海を泳いでいる。

 僕らと視線が合うと、その場で寝ころび足をチラ見せ、ちょっとだけよぉ。みたいにこっちに挑発的な顔見せるのは止めてください。


「テッテ、悪いんだけどアレは相手するのいろんな意味で大変そうだから迎撃」


「あいさー!」


 遠距離からの拳一撃で狙撃。

 ところであいつ。マグマの中に生息してるのになんで無事なんだろう。

 意味不明な生物だったぜ。


「しっかし、各所に時々いる変な生物はなんなのかしらね」


 グーレイ神と駄女神の悪ふざけだと思いますアカネさん。

 パルティもそんな事を思ったようで、気まずげに視線を逸らしていた。

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