その新聞社との確執を彼女以外知りたくなかった
「さて、最初の目的地はロックスメイア、でいいのよねメリエ?」
マイネフランから一路ぺズンへやって来た僕らは、オヒシュキのいる泉の真上にエアークラフトピーサンを待機させて、空軍カモメに乗って舞い降りる。
異変を察知して現れたオヒシュキが空を浮かぶ巨大鳥を見て呆然を大口開けているのが間抜けだった。
「お!」
湖畔に降りて来たアルセが笑顔で御挨拶。
「ヒ、ヒヒン?」
思わず頷き返すオヒシュキ。驚き過ぎて返答に感情が追い付いてないようだ。なんか長い間会ってない知り合いかもしれない人に挨拶されたような返答になっていた。
「オヒシュキ様大挙して押し寄せてしまいすいません」
「ブヒヒン」
おお、セネカ、っていや、マイネフラン行ったのなら帰ってくるの早くね? みたいなことを尋ねるオヒシュキ。残念ながら言葉が伝わらなかったようで皆には無視される結果になった。
「あの、お願いがあります。これを私とウンディーネ仲間のムーちゃん以外が使用できないようにしてください」
「ブヒ―ン」
鼻息荒く、寄って来たセネカに頭を擦りつけるオヒシュキ。ちょ、胸にわざわざ当てに行きやがったぞ。
「あ、もぅ、くすぐったいですよオヒシュキ様」
セネカの胸を堪能したのか、身体を離したオヒシュキは一声嘶き魔物……じゃなかった人物図鑑に呪いをかける。
僕とアルセが魔物図鑑使って見てみれば、オヒシュキの加護とやらがしっかり人物図鑑についている。
えーっと、セネカとムース以外が内容を読もうとするとオヒシュキ特性お呪いトラップ1~1527までが連続発動する。
オヒシュキの気分と相手の性別により凶悪度が増減する。うん、流石エロ馬。容赦ねぇや。
たぶん犯罪者が女性だった場合とか凄いエロいトラップが発動するんだろうなぁ。服が吹っ飛んだりとか本から触手が現れたりとか、オヒシュキの命令に絶対服従になったりとか。
男だった場合は? そんなもん絶対即死級トラップだろ。気を付けよう。
「それじゃ、私、ムーちゃんにこれ渡して来ますね」
空軍カモメに飛び乗ったセネカがさっさと飛び去る。
しばし僕らはここでセネカ待ちだ。
オヒシュキが呆然としている中、皆が思い思いに過ごし始める。
オヒシュキさん蚊帳の外。可哀想に
「ブヒヒーン!?」
お前ら俺様の湖前で何してやがる! さっさと帰りやがれ!
叫ぶオヒシュキに無防備にやって来てどぅどぅと首元をぺしぺし叩く落ちこぼれニンニン。君何やってんの? 殺されても仕方ないことしてなくない?
「ブヒーン」
イラッと来たらしい。オヒシュキはくるりと身体を入れ替えると。影からニンニンを後ろ足で蹴りつけた。
馬としての最大の武器だ。
それに当った丸太が空を飛んで爆散する。
「うわっ!? な、何!?」
ぼわん。っと煙と共にオヒシュキの背中に乗った影からニンニン。ぎりぎり避けられたようだ。
しかし、出る場所また間違えたなあいつ。むしろワザとか?
驚いたリエラの見ている前で、暴れ馬に乗った影からニンニンが再び湖へと消えて行く。
至高帝、またお願いします!
やれやれですな。と至高帝が服を脱ぎ去り湖へと突入する。
しばらくして振り落としたらしいオヒシュキだけが湖から上がってくる。
全くこりないな落ちこぼれニンニン君。
至高帝に救出された影からニンニンが岸に上がった瞬間ぶるるっと震えて水気を飛ばす。
犬か!?
満足したらしい影からニンニンはそのまま岩隠れを行う。
岩隠れ用の岩を忘れたようで、ただその場に座り込んでいるようにしか見えません。
そうか、岩の中では忍者たちは三角座りしてるのか。
ああうん、違うよね、この落ちこぼれニンニンだけだよね、多分。
ただの三角座りを始めた影からニンニン。アルセが木の枝で突きだしたけど気付いてないようで必死に自分は石だと言い聞かせているらしい。
アルセ、ほどほどにね。
「皆さんお待たせしました」
少しして、人物図鑑を渡して来たらしいセネカが戻ってくる。
メリエやアルセにもうちょっと一緒してほしいと言われたためかセネカがパーティーに加わり、僕らは再び空へと舞い上がる。
オヒシュキがなんか罵声浴びせてたけど空に舞い上がる僕らには聞こえなかった。
というか馬の罵声とか聞きたくもないし。
「んじゃ、改めて、ロックスメイアに行きましょうか」
「大丈夫ですかアカネさん。あそこの記者さんたちと結構敵対してますよね私達」
「また変な記事書いてやがったらへこませてやればいいのよ」
と、強気だったアカネさん。ロックスメイアのツバメ邸に辿りついて見せられた新聞を見てわなわなと震えだした。
ええ、あの全裸卿アルセ神にドロップキックされた件がしっかりと新聞になって出回ってました。
完全にアカネに喧嘩売った新聞社に、アカネさんも堪忍袋の緒が切れたようだ。くしゃりと新聞を握りつぶし人殺しそうな眼で壊れたように笑いだしたのだった。




