その彼女が何をやらかしたのかを僕らは知らない
「それでは、これより第一回アルセ姫護衛騎士団円卓会議を始めます!」
本来であれば教会の会議室で行う予定だったこの会議、たまたま教会に来ていたカイン王が聞いてしまった事で場所が王城円卓の間に移りました。
お忍びで教会に遊びに来てたらしい。仕事しろ国王陛下。
中央の玉座に座るカイン。さすがに王様してるせいかかなり尊厳というか、厳粛さが滲んでいる。こうしてみると若いながらも王様してるなぁと感心してしまう。
その左右には右にネッテ、左にルルリカが座っている。
ルルリカ普通に側室として座ってんのな。まぁネッテの隣がよかったとか呟いてたのは聞かなかったことにしとくけど、あの人ブレないな。
ルルリカの隣には左回りにゴールデンベアー、ハーピークイーン、セキトリ、クルルカ、ギリアム、アニア、セネカ、バルス、ユイア、ローア、コータ、テッテ、至高帝、サタデーオールナイッ、マクレイナ、アンサー、メイリャ、ハイネス、ルクル、アカネ、メリエ、アルセ、リエラの順番に座ってます。リエラとネッテは会議が始まるまで旧交の誼で盛り上がってました。
そしてその会話から聞こえて来たのはネッテさんおめでたですってよ。
カイン爆死しろ。
そして円卓に座ることなく隅っこの方で話を行っているのはゴールデンベアーの護衛役、スカイベアーとティディスダディ、フレイムベアー。そしてワンバーちゃんの上で眠るのじゃ姫とその横で垂れるように眠るアクアリウスベアーとアフロ猫レーニャ。にゃんだー探険隊はルグスがミルクあげてるので今は大人しくしてます。影からニンニンはカインの護衛にやって来た影兵さんたちに影に潜む極意みたいなのを教わってるようだ。
あいつら最近居ないと思ったらネッテの護衛やってたらしい。妊娠したから安全面考慮で彼らが護衛してたそうだ。
まぁ、アルセの護衛はもはや不要な状態だしね。あ、そういえばストーカー野郎はどうしたんだろ。流石に王城には……いたよ。円卓会議場の天井隅っこに張り付いてやがる。
いつまでそこに居れるか見ものだな。既に腕ぷるぷるじゃないか。
ちなみにハーピークイーンはたまたまゴールデンベアーの元に遊びに来ていてアルセが来たってことでついでに参加したようだ。
鳥頭の彼女に会議が分かるかどうかは不明だが、神妙な顔で着席してます。
「アルセ。そろそろ時間が厳しくなってるわ」
「……お」
不意に隣のアルセに話しかけるメリエ。アルセも神妙な顔で頷いた。
あれ、本当に理解してるの? 何の時間が厳しいの?
「既に準備は終えてるから、後は四方を回るだけ。必要な素材は分かってますか?」
「お」
「では、この会議で方針を伝えるので、素早く回って下さい、おそらく、ギリギリになります」
「……」
無言でこくり、頷くアルセ。その鼻から鼻提灯出てる気がするのは気のせいかな? あまりに難しい会話で寝ちゃったか?
「さて。んじゃまず最初の議題なんだけど、カイン、王陛下とか付けた方がいい?」
「それが議題かよ。同じパーティーメンバーしか居ない内輪だし気にしねぇよ」
「んじゃカイン。アルセ姫護衛騎士団をクランにしようと思うんだけど、どうかしら?」
「ああ、クランか。確かに人数多くなってるしその方が良さそうだな。クランなら俺らもそのまま所属はできるしな。活動しなくとも同じクランとして存在できる。リエラ、それでもいいか?」
「クランのリーダーとかはカインさんにお任せしてもいいですか? 私にはよくわからなくて」
「ああ。俺も良く分からん。そういうのはネッテやルルリカの方が得意だから二人にリーダーと副リーダー任せるぜ」
「おい国王……」
思わずルルリカがツッコむ。傀儡政権がちらついて見えるよカイン。ルルリカさんネッテの為に国を良くしてくれ。君が頼りだ、たぶん。傾国だけはやめたげてね。
「戦乙女の花園に居た時は年一回皆で集まって報告会があったけど、他は大抵自由行動だったわね。必要な時はギルドに伝言頼んだり、会計係がアイテムとかクランの活動資金を管理してたかしら」
「ルルリカ、頼んだ」
「おい国王……」
「なんででしょうね、私の国の状況と被るような……」
アンサーさん、乗っ取られた時のこと思い出してちょっと悲しげです。
「んじゃ、クラン申請とか所属団員登録云々はルルリカとネッテに任せて、と。次の議題に移るわね。メリエ、貴女の報告聞かせてくれる?」
「報告というか、神様からのお告げになります」
グーレイ神か? とカインが小首を傾げる。
なんかカチョカヴァロだかなんだかとかいう自称神様らしいよ。
やっぱ知らないよねカイン。
「我が神カチョカチュア様より神託があり、私は成すべきことを行って来ました」
いきなり胡散臭くなったせいでカインがううん? と唸りをあげる。
「世界を巻き込む絶望が来ます。その対策の為、アルセを四聖獣と引き会わせたく思います」
四聖獣。あれか、玄武とか白虎とかの。
この世界にもいたんだなぁそういうの。
「ちょっと、四聖獣っていったらこの世界の楔に居る守護獣じゃない。そんなのに会うとかどれだけ大変か理解してるの!?」
アニアが思わず身を乗り出す。妖精の一人としてそういう話は見逃せないよう……違うな。なんか凄い焦ってるぞ。
「アルセが向かうべき場所です。アルセが行くかどうかが問題であってその護衛をするかどうかは皆さん次第です。アルセ、どう?」
「お!」
当然行くよ。と乗り気なアルセ。アニアさんさらに焦る。
「い、いやいやいや。待って、それってユグドラシル行くことになるんだよ。あ、あんな場所止めた方がいいわ。ええ、止めるべきだわ!」
うん、アニア、そこで何かやらかしたな。
アニアの態度から、僕は確信したのだった。




