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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第十四部 第一話 その少女が求めるものを僕らは知らない
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その握手会の事件を彼らは知りたくなかった

「すごい……としか言いようがない、かなぁ」


 ライブ会場に入り切ったオッカケ達を見て、リエラは思わず呟いた。

 すでに1000人規模の律儀に並んだオッカケたちは壮観だ。

 皆、棒立ちになりパティアの登場を待っている。

 椅子が用意されてないのは彼らが椅子を必要としないからだ。

 それにライブでは彼らも動くので椅子は邪魔でしかなかった。


 自分たちが動いても隣のオッカケと接触はしない程度の隙間を開けた彼らは、行儀よく並んでいるのだが、パティアの登場はまだまだ先である。

 本来ならこのすぐ後にパティアがライブを行って解散となるのだが、途中参加で握手したいという冒険者たちのせいで時間が伸びているのである。


 パティアファンにとってパティアと触れあえるというこの機会、逃す気にはなれなかったようだ。

 そして、冒険者ファン1000名程が一挙に押し寄せる。

 合計2000回の握手をすることになったパティアは、途中から手の感覚無くなって来ましたと思わず泣きごとを呟いていたけど、ファンに聞こえない程度の声だったので近くで護衛していた僕以外誰も気付かなかった。


 時折パティアの手を布で拭いてやる。汗ばんだ状態で次の人の手を握るのは失礼だからと気を利かせたのだ。得に何日も風呂入ってない冒険者たちの手を握手してるからぬちゃっとしてたり、垢がついたりでさすがに次のお客さんに失礼だったので。

 一応テント使って個室化しておいて良かった。タオルで手を拭いてるの見られたら怒られかねないからな。ちなみにタオルは僕がポシェットから出し入れしてます。


 パティアが僕について何か言いたそうにしてたけどリエラが大丈夫です。とか良く分からない言葉を吐いたせいで聞くに聞けなくなっているらしい。

 大丈夫だよ、変なことしないよ? 手をむにむにマッサージしてあげてるだけだよ?


 そして、それは冒険者を500人程握手した時だった。

 次の人~とリエラが呼んで入って来た男は、テントに入室したと同時に抜剣。

 驚くリエラを放置して真っ直ぐにパティアに走る。


「パティアたん、僕のモノになってくれぇぇぇ。死んで、僕だけのモノにぃぃぃっ」


「き、きゃ……ぁっ?」


 はい、排除~。

 パティアが悲鳴をあげるより早く、僕は鞠を取り出し相手の顔にぶん投げる。

 突然現れた鞠に驚く男の顔面を穿った鞠がぽーん、てんてんと地面に転がる。

 いや、さすがにパティアの目の前で血飛沫あげるのは悪いかなと思って、無礼でおじゃるからドロップした蹴鞠用の鞠使ってみました。ポシェットの肥やしになってたから使う場所があってよかったよ。


 アイドルの握手会ってのは時々この手のクソ野郎がでるから警戒しといてよかった。

 とりあえず倒れた男が起き上がる前に頭を蹴って昏倒させておく。

 握手会中止にはさせないよ?


 男はすぐさまリエラに捕えられ、異変を察知して現れたヘイオ君に引き渡された。

 ライブ会場に連れ去られた男はオッカケたちの私刑が待っているようだ。御愁傷様です。

 今後彼がパティアちゃんに近づける機会はないだろう。というか生きて帰れないかも?


「ちょ、ちょっとびっくりしました」


「私も、まさかあんな人がいるとは思わなかったなぁ。ごめんなさい護衛なのに」


「い、いえ。こちらの方? が守ってくださいましたし。本当に、いらっしゃるんですね。ありがとうございますエロバグさん」


 ちょ、エロバグ言わないで!?


「ちょ、ちょっとパティアちゃん、流石にそれは……」


「え? アカネさんがそう言ってたし、エロバグさんって名前なんじゃ……」


「せめてバグか透明人間さんと言ってあげてください。確かにエッチですけど」


 やめて、そこは否定してリエラ。エロバグになっちゃうから。本当に名前がそっちにされちゃうから。神様絶対手ぐすね引いて待ってるからっ。


「うしっ、気合い入れ直しました。残りの握手会を終わらせて、ライブ成功させます! リエラさん、バグさん、護衛、よろしくお願いします!」


 ぱんっと両手で頬を叩き、パティアが気合いを入れ直す。

 この子、強いなぁ。

 今、命を狙われたばかりだというのに、顔にはすでに笑顔が見える。


「リエラさん、お願いします!」


「あ、はい。次の方どうぞー」


 そしてしばらく、ついに全てのファンと握手を終えたパティア。今は冒険中だったりこの国を離れていたりで来れなかったファンには申し訳ないけど、無事握手会は終了です。

 パティアを襲おうとした男は冒険者たちにもそのことを知られたために冒険者ギルドでも身の置き場を無くしたようだが、一応まだ生きてました。


 壇上にパティアがやってくる。

 オッカケ達が楽しむために男の身柄はのじゃ姫が召喚した殿中でござるたちに拘束させて、皆がパティアの歌と踊りに意識を向ける。


 無くなっていた手の感覚はアルセが渡した赤い液体を飲んだ瞬間快復しました。アレってもしかして……アルセの血、だったり……

 パティアのステータス見るのが怖いから見ないことにしました。

 絶対チート化してるだろ。ギルドの受付嬢なのに……


 パティアが歌い、オッカケの群れが一糸乱れぬオタ踊りを披露し、釣られた冒険者たちもその踊りを真似、会場一体となってライブは大盛り上がりを見せた。

 トラブルはあったけどアルセも楽しそうにしてたし、うん、満足な握手会ができた、かな。

握手会で事件、ダメ、ゼッタイ。

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