その握手会に参加したい部外者たちを彼らは知りたくなかった
その日、アルセ姫護衛騎士団総出でパティアの握手会警護任務を行うことになった。
アルセは楽しげに並んでいるオッカケたちを眺めている。
同じ顔が一列に並んでる姿はある種異様なんだけど、なんていうか、面白いようだ。
「それにしても、握手会、ねぇ。よく考えたわねエロバグ」
「あ、これルクルじゃなくて透明人間さんが考えたんですか」
アカネの言葉にリエラがあ、そういうことか。と納得。気付いてなかったのか。
「そりゃそうでしょ。アイドルに握手会っていえば地球組の発想だわ。私だったらサイン会とかも発案してあげたんだけど、まぁその辺りは別にいいでしょ。またパティアちゃんが尋ねてきたら教えてあげればいいわ」
「はぁ、サインが何かはよくわかりませんけど、いろいろやりようがあるんですね。御見逸れしました」
「ま。今日は暴動起こらないように皆で楽しく終わらせましょ」
この国でやることはまだあるんだからこういうのはさっさと終わらせるわよ。なんて言いながらも結構楽しげなアカネ。
なんやかんや言ってこの地球で良くある光景を見て里心が少し満たされたようだ。
ようやく始まり、ヘイオ君がパティアと握手を行う。会員ナンバー順らしい。しっかし、どれだけの列になってんだこいつ等。目に見えるだけで軽く数百人はいるぞ。
ハードな握手会になりそうだ。
握手が終わった奴らが二度並びしないように、握手会が終わった後は会場に辿り着くようにしておき、最後に感謝ライブを行うというのがアカネが提案して来た案で、パティアがソレ大変な気がするんですが、と告げても強引に設置させた奴なんだけど、結果を言えば正解だったな。
こんな大人数二度も三度も並ぶ奴がいたら大変だし、皆おんなじ顔だから二度並びの奴かどうかなんてわからないよな。
「おー」
「のじゃー」
アルセとワンバーちゃんの上で寝そべるのじゃ姫が永遠にも続きそうなオッカケの群れを見て感心している。
おんなじ顔一杯だねーと告げるアルセに、キモいのじゃ。みたいに告げるのじゃ姫。
アンサーさんたちも列が乱れたりしないように列の向こう側を整理してるけど、うん。何人かは豆粒のように全く見えません。
ようやく50人程終わった頃だろうか? メイリャが困った顔でやってきた。
気付いたアカネが警護をリエラに任せて対応する。
どうしたんだろうね。問題起こしそうなレーニャならアルセの横で丸まってるから問題ない筈だし。あ、ネズミミックがレーニャの頭の上に乗ってる。珍しく出て来てるよ。そんな彼は背伸びしてオッカケの群れを眺めていた。
多分同じ顔が物凄い並んでるのが珍しいから外に出てきたようだ。
「どうしたのメイリャ?」
「それがー。オッカケたちだけはずるい、と、その、冒険者でパティアさんファンの人たちが並びたいと。物凄い数で、断ると暴動になりそうな……」
「ちょっと、これオッカケたちの為の握手会でしょ、なんでそっちのがしゃしゃり出て来るのよ」
「けど、やらない訳には……」
「必要無いでしょ、全員駆逐してしまいましょ」
アカネさんそれは過激過ぎです。
「あ、あの、さすがにそういうのは。皆さん私と握手するだけなんですよね。だったら私はかまいませんよ?」
アカネとメイリャの話を聞いていたパティアが握手をしながら声をかける。
「パティアたん……」
大丈夫? と握手中のオッカケが不安げに尋ねる。それに笑顔で大丈夫ですと応えるパティア。どう見ても普通にアイドルだ。もはやアイドル道に命すら掛けてそうな笑顔だった。
「そう……分かったわ。ただし、休憩を挟んでからよ。オッカケだけでも数時間かかるんだから、パティアも休ませなきゃ体力が持たないわ」
「え? 握手だけですよね?」
戸惑うリエラにアカネは溜息を吐く。
「そりゃ一回二回の握手なら問題ないわよ。数百握手を繰り返すのよ、腕の感覚無くなるわ」
その言葉を聞いたオッカケたちに戦慄が走る。
パティアを応援し、パティアの為を思う彼らにとって、自分たちのせいでパティアにダメージがくる行為などするべきことではないのだ。
「大丈夫ですよ皆さん。そんな不安そうな顔しないでください。私がしたいんです。皆さんと握手を、私には、これくらいしか皆さんにできませんから。日頃の感謝を、返させてください」
笑顔のパティアにオッカケたちは皆が涙を流しだした。
それほどまでに大切にされているファンなのだと、オッカケ達は改めてパティアのオッカケであることを誓う。
パティアたーんッ。その声が一斉に、遥か遠くまで届くかのように響き渡った。
しかし、これ今日中に終わるのかな……
パティアの体力本当に持つんだろうか?
一応体力回復魔弾は用意してるけど、ね、アルセ?
アルセ? 何してるの? アルブロシアはダメだよ? え? 何その小瓶。赤い液体は何が入ってるの? そんな訳のわからないモノパティアに渡しちゃだめだよアルセ!?




