その男が利益を貰っているのかを僕らは知らない
「はいよ、いらっしゃい」
一足先に部屋に辿り着いたコリータは、眠そうな顔で僕らを部屋に招き入れると、先に休んでいたパティアの横にドカリと座る。
あの、ここパティアちゃんが休んでる場所じゃん。なぜ休憩の邪魔するようにこの部屋に来た? 新手のイジメに僕らを巻き込まないでくれかな?
しかしパティアちゃんは気にしたふうも無く、むしろ待っていたような顔で僕らを出迎えた。
なんだか嫌な予感がちょっとしてます。変なことに巻き込まれそうな予感?
特別依頼とかしてこないよね?
「んじゃ、とりあえず要件聞こうか」
対面の座席にリエラ達を促す。
三人まで座れる長椅子に、リエラ、テッテ、セネカが座る。
僕はリエラの後、その横にルクル、逆隣りに至高帝。
アルセとジョナサンはさらに背後で踊りだした。
「あ、はい。こちらのセネカさんが魔物図鑑が欲しいそうです」
「ふむふむ。魔物図鑑は10000ゴスで売ってるわよ」
「あ、売りにだしたんですか?」
僕らのは試しだったからタダで貰ったけど魔物図鑑売りに出したんだ。結構高い値段な気がするけど魔物の能力が知れるということで売れ行きはいいらしい。
しかも冒険者ギルドが独自発行しているため商業ギルドの手数料がいらないので冒険者ギルドに直でお金が入るらしい。その内の半値をコリータさんが頂いているそうだ。
もう一人の功労者ミクロンは? ああ、お金貰ってないんだ、学者さんだから編纂し終えたら興味を無くしたようだ。
金儲けを考えない純粋な研究者である彼は貧乏くじを引いてしまったようである。
「その、それで人物が登録されるんですよね。なら買います!」
「ん? 人物……あ、そっか。リエラさんたちに渡したのは旧式だから生物だろうとアイテムだろうと全部登録されるんだっけ。参ったなぁ」
「あれ? 今売りに出されてるのは違うんですか?」
「ええ。ミクロンと編纂して魔物しか登録されないようにしたのよ。流石に人の個人情報駄々漏れになるといろいろ問題でしょ? 少し前図鑑を使って個人情報取られたせいでストーカー被害で女性が一人殺されそうになって、そこからフィルター掛けるようにしたの。今売りだしてるのは魔物図鑑とアイテム図鑑だけよ」
ありがちだなぁ。便利なアイテムって犯罪に使えば凄く便利だから悪用する奴でてくるんだよなぁ。
それで発売禁止じゃなくフィルター掛けられるギルドも凄いけど。いや、ギルドじゃなくてコリータとミクロンが凄いのか。
「んーでもリエラたちの知り合いみたいだし、用途は?」
「あ、はい。私ぺズンで水先案内人してるんですが、相手が貴族か平民かが分かれば接客の差を付けられるので皆さんを怒らせなくなるなぁと。貴族の方には稀に平民と同じ船だったり、案内の仕方に貴賎がないとお怒りになる方がいらっしゃるので、後そういう要注意人物をブラックリストにするのに便利だなぁと」
「ふむ……じゃあ魔物には使わず本当に人物のみが欲しいのね」
「そうなりますね。あの、やっぱり駄目でしょうか?」
「いいえ。リエラたちが認めたという実績があるなら信頼でお渡しするのは可能です。ただし、証明書と誓約書は書いていただくことになります。あと紛失した場合の処置についても厳しくなりますので」
「あ、それは大丈夫です。オヒシュキ様に御加護を頂くのでもしも私以外が悪用したり盗んだ場合オヒシュキ様の呪いが降りかかるようにしておきますので」
オヒシュキの呪いとか悲惨なことになりそうだな。あいつ女好きだからセネカさんの頼みに全力で応えそうだし。鬼畜設定の呪いが付きそうだ。
「了解。じゃあミクロンと作成を行うから数日待って貰える?」
「はい。ありがとうございます」
目的のモノを入手できると知ったセネカが喜色を浮かべる。
話が一段落したのを見て、コリータはすぐ隣に居たパティアに手を向けて紹介を始める。
あ、パティアの隣に来たのってやっぱり彼女案件の何かがあったからか。
「何度か会ってるだろうけど紹介するわ。彼女はパティア。もともと一般人だったのだけど、オッカケたちに気に入られたことで冒険者ギルドで受付嬢を始めたの」
オッカケに気に入られたことと冒険者ギルドで働きだしたことの関係性が知りたいんだけど……あ、そこは教えてくれないのか。
僕の疑問には全く触れることなく話を続けるコリータ。
「実は彼女、今悩んでることがあるらしくてね。貴方達にはロリコーン紳士がいるでしょ」
「あ、はい。紳士というか、既に至高帝になってますけど」
「私のことですな。何かご用でしょうか? お嬢さんのお悩みであれば私、喜んで火の中水の中飛び込む所存でございます」
「えうっ!? しゃ、喋った!?」
至高帝は普通に喋れます。ルクルやアルセは喋らないのに、この違いってなんなんだろうね? ねールクル?
「るー?」
隣のルクルに尋ねた僕、当然良く分かっていないルクルは鳴き声で返して来るのだった。




