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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第十四部 第一話 その少女が求めるものを僕らは知らない
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そのパティア祭を僕らは知らなかった

「み、皆さん今日も来てくれてありがとーっ!」


 幼い少女、パティアちゃんが手を振ると、動けない僕ら側から盛大な声援が返る。

 そして右端の方に居る一団がパティアたーんっ。とか叫んでいた。

 って、あそこに居るもじゃ頭、ジョナサンじゃないか。至高帝も横一列に並んで僕らを監視するように見てるぞ。彼らの横には精鋭部隊だろうか? ピンクの法被を着たロリコーンの群れが整列していた。

 パティアたんラブというプリントTシャツ着てるからロリコーンとは違うのかもしれないな。


「あいつらオッカケっていうんだけどね。パティアのことが好きらしくって、毎日ギルドに押し掛けてたのよ。時々この結界を使って無理矢理パティアを舞台上にあげたりしてたんだけど、パティアが泣きながら酷いことしないで。と告げたことで一日一回、決まった時間に一曲歌う事を条件に大人しくして貰ってるの」


 ハタ迷惑なオッカケ軍団だな。パティアちゃんも可哀想に……かわい、そう? なんかあの子恥ずかしがりながらも結構ノリノリで歌いだしたぞ。

 そして近くに居たカルエさんが呪い殺しそうな顔で呪詛吐いてます。

 まぁ、この人気に自分の人気一気に持ってかれたらそりゃ怒り狂うよね。

 イジメたくてもオッカケたちに守られてるし、ただただ泣き寝入りするしか出来なかったんだろうなぁ。ストレス溜まるのは分かる気はする。でも人に呪詛吐くのはやめようカルエさん。

 折角の自分の持ち味殺してますよ。


 にしてもパティアちゃん歌だけじゃなく踊りまでやってるな。ノリノリな少女の踊りはなかなか可愛らしく仕上がってる。

 至高帝達もしきりに涙を流しながら素晴らしい出来だ。みたいに頷いてるし。

 ジョナサンもいい仕事してやがるぜ。みたいに鼻擦ってやがる。


 どうやらオッカケさんたちと練習したらしい。

 オッカケ達は所々でパティアたーんの掛け声をかけて場をさらにヒートアップさせる。

 そして歌が終わって決めポーズ。

 割れんばかりの拍手と共にアンコールの嵐が。


 困った顔のパティアちゃん。苦笑いをしながら今日は……と遠慮がちに舞台から降りようとしたのだけど、そこへまさかの乱入者。

 オッカケ達がざわめく中、緑の少女が舞台へと飛び上がった。


「なんと!?」


 ジョナサンが思わず驚く。

 舞台上に上がったのはなんとアルセさんです。

 驚く冒険者たちに笑顔で手を振る。ちょ、誰だ今引っ込めとか言いやがった奴は! ちょっとこの拘束解いてくれないか? あいつ殴ってくるから。


 アルセは罵声などなにするものと皆に笑みと手を振り返し、パティアの隣に来ると、おっと挨拶を行う。

 手を上げて告げたアルセに戸惑いながらもこんにちわ? と告げるパティア。

 そして突如踊りだすアルセ。その動き、BABA-BA洞窟で貰った歌詞の奴だよね。


「わ、凄い。これは何です? 歌詞?」


 踊るアルセから何かを受け取ったパティアはそれを読み込み始める。


「うわぁ。見事にお婆さんばっかり、でも、これなら歌える……かな? 曲調は?」


「おー!」


 ばさりと種を蒔くアルセ。舞台のそこらじゅうにアルセギンが現れ、彼女達がアカペラコーラスを始める。

 ようこそBABA-BA洞窟への曲調だね。ちょっと嫌な過去を思い出したよ。


「そ、それじゃあ、アンコールの新曲? やっちゃいます。曲名は、すべては孫の笑みのため」


 アルセギンのコーラスに加えパティアの歌が紡がれる。

 巧い。ババァ達が歌うより断然聞き惚れる。

 初めて見ただけの歌詞で、曲調も分からないだろうに適当に歌ってここまで完成させられるのか。

 思わず感動する。何せコーラスはアルセなのだから。これはもう拍手喝采しかないだろう。


 見事歌いきったパティアとアルセ。

 割れんばかりの拍手と新曲を持って来たアルセへの賛辞。先程野次を飛ばした男もアルセのことを褒めていた。調子のいい奴め。ぶん殴ろうと思ったけどアルセ褒めたから見逃しておいてやろう。

 にしても、結局何なのこの舞台?


 オッカケ達がむせび泣く中、舞台が消えて元通りのギルド本部へと舞い戻る。

 おお、身体が動く。

 そしてふとカウンターを見れば、悔しげに呻くカルエとその隣で恥ずかしそうに顔を真っ赤にして縮こまってるパティアちゃん。またやっちゃった。みたいな顔でぷるぷる震えていた。


「いや、素晴らしかったですお嬢様」


「本当に、乱入したときはどうなるかと思ったぜお嬢」


 ギルド入り口から至高帝とジョナサンがやってきてアルセに賛辞を送る。

 アルセがてへりと照れながら、楽しかったよ。と微笑む。

 一瞬、パティアと目が合ったアルセ。微笑みを浮かべるとパティアも控えめな笑みを返して来た。

 こうしてアルセの踊り仲間がまた増えたのだった。

 踊りを終えると休憩に入るそうで、別の受付嬢に任せて奥へと引っ込むパティア。


 僕らもコリータさんに用事があるので奥へと向かうことになるんだけど……至高帝とジョナサンも付いてくるの? 別に来なくていいんだよ、パティアに会いに行く訳じゃないんだからさ。

 ほら、あそこにバルスたちいるからあっち行って来なよ。あ、やっぱ来るのね。

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