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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第四話 その盗賊達がどうなったかを彼らは知らない
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SS・その猫の冒険を彼しか知らない

※ただの猫の徘徊回。つい魔が差しました。

 その日、マイネフランにやってきた我々にゃんだー探険隊は、初めて見る人間と魔物が混在する都市を見て呆然としていた。

 いつもは冒険心が先に立ち、我先にと冒険に出掛ける我が隊員たちも思わず口を開けて見続けている。

 古めかしい街並み。レンガ造りの家や木造建築の家がまばらに存在し、宿屋が乱立するマイネフラン宿屋街。


 マイネフランの入り口にして人々の骨休めの場所である。小生にゃんだー1世もここの宿屋のどれかに入ることになるだろう。

 それというのも、我々にゃんだー探険隊が所属するアルセ姫護衛騎士団という名の冒険者パーティーが宿を取り、骨休めを行うからだ。冒険をし終えた後はその宿に戻って休眠に入るのである。


「では、私宿屋取って来ますね」


「え? いらないわよセネカ。ウチらのパーティーは教会で休めるから。アルセ姫護衛騎士団の本部があるからそこで寝泊まりするわ。王城でもいいけど」


 我が冒険者パーティーは少々異質であるようだ。我々が泊まるのは宿屋ではないらしい。小生もそこまで親しい間柄ではないし、途中加入のためこの国のことはあまり知らないのだが、この国の王が我がパーティーの元リーダーなのである。

 この国自体は何度か来た事あるし街中を探索もし終えているのだが、少し見ない間に随分と変わったモノだ。魔物だらけではないかこの国は。


「ルグス、とりあえず教会に宿取るから、にゃんだー探険隊満足させたら連れて帰って来てね。ホットミルク用意しとくわ」


「にゃーっ!!」


 ホットミルクですと! ではついでに食事は焼き肉がいいですにゃー。じゅるり。

 大喜びの隊員たち。アカネに敬礼を行っておく。

 よし、探索後の御褒美は確定した。にゃんだー探険隊。どこがどう変わったのか、探索開始ですにゃーっ!


 にゃーっと走りだすにゃんだー探険隊。どうやら全員別々の方向を探索するようだ。

 小生も走りだすが、中央広場までやってくるとルグス殿が散って行く隊員たちを見て慌てていた。

 今日は誰に……おおにゃんだー7世の後を追って行ったな。


 小生は噴水の縁に飛び乗り流れる水をちょんっと前足で掬う。

 ひゃっ、冷たい。水恐いっ。

 縁を少し歩いてその場に居座る。

 日向ぼっこというわけではないが、しばしまどろみながらニンゲン観察を行う。

 噴水横なので涼しい。しかし直ぐ横に水があるのはちょっと怖いな。


「わぁー、見て見てー、猫さんいるよーっ」


「珍しいわね。あ、でもこれ魔物じゃない。また新しい魔物来たんだねー。ね、ゲッツ君」


「ブヒッ」 


 あ、こら勝手に触るな。

 そして髭を引っ張るな。

 あと一匹豚が混じっているじゃないか。ゲッツ君オークじゃないかね?


「にゃーっ」


「あーっ。待ってよー猫ちゃーん」


「ああもう、そんなに触るから」


 三人の子供たちから逃れた小生は飲み屋街へと身を躍らせた。

 この辺りはおっさんが多い。一部ほろ酔い加減の女性客もいるが、最も繁盛しているのはビアガーデンと化した店だろう。アルセイデスの休み処だったか? 休憩所? まぁどうでもいい。小生には関係のない場所である。

 繁盛しているせいか物凄く忙しそうだ。

 そんな店の奥に、マスコット化して寝入るにゃんだー3世を発見。

 客が可愛い可愛いと言っているのが気に入ったのか時折尻尾が揺れているのが見えた。


 そのまま飲み屋街を抜けて貴族街へ。

 この辺りは前回探索出来なかった。

 というのもパンダリーネとかいう女に首根っこ引っ掴まれて押し戻されたからである。

 貴族というのは結構危険人物が多いので見つからないようにしろと怒られたのである。

 しかもそこらの野良魔物扱い。実に不愉快である。


 まぁ、今回はアルセ殿に頼み込んでおそろいの首輪を作って貰った。薄緑に輝くベルト型の首輪で、チリンチリンと歩くたびに鈴の鳴る首輪である。

 これはスニーキングミッションには向かないが、身分証明にはこれ以上に有効な物はない首輪なのである。

 なにしろ、これを見た各国の人々はアルセイデスの蔦で首輪作るとかどれだけの金持ちだよ。とか手をだしたら何されるかわからねぇとかいいながら遠巻きに見て来るのだ。


「ヒャハァ?」


「にゃー?」


 ふと、目の前に誰かが現れた。

 一歩下がって相手を認識する。

 相手も小生に気付いたようで、なんだ? と視線を向けた。

 これは、ヒャッハー殿ではないか、なぜここに? コルッカにいるのでは?

 相手も意外だったようでヒャッハーっとテンションを上げて何やら喜んでいた。


「何をしてンだぁお前。あん? 猫?」


 おや、これはこれは、確かゴードンとか言ったか。一度だけ見たことがあるぞ。


「ヒャッハー!」


 ヒャッハー殿が挨拶をするためにナイフを舐める。

 一瞬警戒したゴードン殿だが、相手が魔物と気付いたらしく溜息吐いて頭を掻いた。


「魔物同士の邂逅だったか。悪りぃ邪魔したな」


 邪魔ではないが、ちょうどいいので小生も彼らと別れて街の探索に戻る。

 ふむ、しばし探索してみたが魔物と人間で衝突は一つも起こっていないようだ。

 実に自然に魔物達が国内に居る。不思議な国マイネフランの誕生である。

 小生は疲れたので他の隊員より先に戻らせて貰うか。教会に向かいホットミルクを頂くことにする小生であった。

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