表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第四話 その盗賊達がどうなったかを彼らは知らない
1133/1818

SS・その巻き込まれた人がどうなったかを僕は知らない

 コルッカからマイネフランへの街道を、その男は歩いていた。

 ただの一般人といえば一般人だ。小さな村から冒険者になるためにお金を溜め、武器を買い、闘う力を身につけて、ようやくにっちゃうやガルーを倒せる実力を身に付けた。


 父と母からはそんな夢捨てて農業手伝えと怒られる日々だったが、旅の資金は出来たのだ。

 夢見る男はついに大海原へと踏み出したのである。

 マイネフランという国へと赴き、ギルドに登録したのが昨日のこと。

 どうせなら大きなことやってみよう。とギルドの受付嬢が止めるのも聞かずに商人の護衛任務を行った。


 コルッカ方面にある村への行商だったが、彼らは村にあるギルドで別の冒険者を雇ってそのままコルッカに向かうとのことで、彼はお役御免となったのだ。

 決してへっぽこすぎて途中でチェンジでと言われた訳ではない。

 護衛成功報酬もちゃんと頂いているのでこれが商人の目的地までちゃんと護衛したという証明だ。

 もともとはコルッカまでの護衛だったのにその途中の村で任務終了を告げられたからと切り捨てられた訳ではない筈なのだ。


「いやー、護衛任務儲かるな。これだけで農作業一カ月分くらいの稼ぎじゃないのか?」


 受け取った金貨袋を何度も開きながら歩く。

 白銀の輝きに思わずニンマリする。

 銀貨すら初めて見る彼にとっては商人にとって手切れ金のはした金でも大金なのだ。


「へへ、道中の魔物も大したことねーし、次も護衛任務受けようかなぁ」


 ついでに知り合った冒険者とパーティーを組んでそこに居た女性冒険者と恋仲になったり……


「ぐふっ、夢広がるなぁ」


 思わず人に見られてはマズい笑みがが零れる。

 気持ち悪っと言われそうな顔を慌てて引っ込めきりっと真面目な顔をする。


「いけないいけない、真面目青年しとかないと。俺が女の子目当てで冒険者になったことがバレちまう」


 バレたところで大して意味が無いのだが、彼にとっては重大事であった。


「にしても、片道二日とか聞いてたのにまだ半日も経ってないんだよなぁ。闘った魔物もなんだっけあのリスっぽい弱いの」


 リーフリスはこの街道に出現する雑魚キャラともいえる存在ではある。しかし、彼はさらに脅威が居ることなど知りもしないし、リーフリス相手でも用意した回復薬を半分以上使って倒した程度の実力なのだが、ちゃんと商人にお礼を言われてここまででいい。と言われたため、天狗になっていたのである。


「はっは。俺無敵伝説が始まっちまうぜ。もはやどんな魔物が来たって負ける気がしねぇ!」


 そんな大層な言葉を吐き散らした時だった。

 前方からブオンブオンと聞き慣れない音が聞こえた。


「んん?」


 ブオオオオオオオオオオオオオオオオンパラリラパラリラ~


「な、なんだ?」


 焦る彼の前から、黒い何かの群れが迫ってくる。

 二輪の乗りモノに乗った無数のポンパドール男達の群れ。

 先頭に居るのは白いガクランを来た強面の男。

 彼らは白い鉢巻を頭に巻いて薄緑のバットを持ってバイクに跨り集団で迫って来ていた。

 そんな凶悪集団が、自分に向かってきている。


 本能に従って回れ右した男は慌ててコルッカ向けて走り出した。

 何が起こったのか全く理解できない。

 しかし逃げなければならない。

 もしも追い付かれたら死ぬ。絶対に殺される。

 轢き殺されるのかあのバッドで集団リンチに遭うのか分からないが、確実なバッドエンドが待っている。


 殺気を迸らせる無数の男達から必死に逃げる。

 バイクに乗った彼らの方が速いのではあるが、彼らのリーダー格である総長辰真が、逃げる男に気付いて速度を落としていることに、男が気付くはずも無かった。

 辰真はなぜ彼は必死に逃げるのだろうか? 理解が出来ずに何度か小首を傾げたモノの、迫る闘いの為に些事を放置してバイクを走らせるのだった。


 そして男はツッパリの群れを引き連れトレイン行為を行いながらコルッカへと向かって行く。

 二日かかる行程を半日で駆け抜ける勢いで、持てる全ての力を使い全力で駆けた。

 その先に人の群れが居た。


 良かった。

 トレイン行為になるが、彼らに後ろの群れを任せよう。

 あんな群れ、ただの一般冒険者には荷が勝ち過ぎる。


「すまない、助け……っ!!?」


 助けて貰おうとした男は思わず立ち止まる。

 そこに居たのは棘付き肩パッドにパンクヘッドの男達。

 数体のガタイがいいカラスマスクも存在しており、チェーンをパシンパシンと手で叩きながら群れていたヒャッハー軍団が彼に一斉に視線を向けた。


「ぎ、ぎぃやああああああああああああああああああああっ!!?」


 慌てて踵を返す男、しかし彼の背後にはツッパリの群れ、振り返ればヒャッハー軍団。

 見事前後を挟まれた男はただただ前と後ろを交互に振り返るしか出来なかった。


「オルァアアアアアアアアアアアアアッ」


「ヒィャッハアアアアアアアアアアアッ」


 代表の男達が叫びだす。

 中央の男はただただ恐怖におびえるだけだ。

 徐々に縮まって行く戦線。

 今、ヒャッハーとツッパリたちの全面戦争が……幕を開いた。


「だ、誰か、誰か助けてぇぇぇぇ――――っ」


 その中心で誰かの声が一度聞こえたが、ヒャッハーとツッパリの抗争の中、小さく掻き消されて行った……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ