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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第四話 その盗賊達がどうなったかを彼らは知らない
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その二人の関係を僕達は知りたくなかった

「では、この四人はギルドの責任を持って……」


 とりあえず捕虜となってた女性や子供たちはハレッシュが騎士団と共に一度王城に連れて行って聴取を受けて貰った後で各家に返されるということで、一旦ハレッシュと別れた。

 ついでに盗賊の三人も連れていかれたが、あの三人の罪はあまりないらしい。というか捕虜の人たちがわざわざ牢番さんを庇ってたからな。彼が率先して道を教えてくれてなかったら彼らもモザイク人の仲間入りしてたかもだし。


 というわけで、後で王城に呼ばれるのは確定した僕達だけど、とりあえずはここのギルドに寄って目的の子供たちの御返却を行っていた。

 最後の四人の子供達をギルドのお姉さんに受け渡し、別れの挨拶をしていると、ギルドの扉がバンッと力任せに開かれた。

 なんだ? とギルド内の全員がそちらを見れば、


「カノンちゃんっ!」


 大声で叫びながら入ってくるハレッシュ。

 マッシュルーム男は大急ぎで戻って来たらしく、荒い息を吐きながらギルド内に視線を走らせ、目的の人物を見付けた瞬間走りだす。


「ハレッシュちゃんっ!」


 保護してた子供の一人がぱぁっと顔を輝かせてハレッシュ向かい走りだした。

 くりくりおめめの可愛らしい……幼女だ。

 もう一度言う。十歳にも満たない幼い女の子だ。


 その子が走り寄って来たハレッシュに飛び込み、ハレッシュが抱きしめ再会の頬ずりからの熱烈キッス。

 ちょぉ!? ハレッシュさん? 


「良かった。本当に良かった。カノンちゃんにもう、会えないかって僕はっ」


「私も、ハレッシュちゃんと引き離されて凄く恐かった」


「助けられなくて済まない。助けに行こうにも場所が分からず、僕は目の前で君を攫われて……ああ、本当に、愛しい妻すら守れないなんて僕は勇者失格だ」


「「「「「「「「「「妻ッ!?」」」」」」」」」」


 そこかしこから驚きの声が上がった。

 いや、そうだろう。カノンちゃんだっけ、どう見ても幼女、いや、もしかしてロリババアなのか?


「あ、あのハレッシュさん、そちらのカノンさん、と、夫婦?」


 リエラが思わず尋ねる。

 そこで周囲に気付いたようで、ハレッシュとカノンがかぁっと顔を赤くする。


「こ、これは失礼。アルセ姫護衛騎士団の方々。僕の妻を救ってくれてありがとう。こんなに早くまた会えるとは思ってなかった。ああ、もう離さないよカノンちゃん」


「は、ハレッシュ恥ずかしい。皆見てるし……」


「見たい奴には見せつけてやればいいさ。カノンちゃんは可愛いんだから。ああ、僕だけのカノンちゃん。今夜は寝かさないよ」


「や、やだもうハレッシュちゃんのエッチ」


 これ、マジな奴だーっ!?

 このロリコン変態野郎子供を騙して……


「ごほんっ。あー、ハレッシュどの。奥さんの逢瀬は家でやってくれないかね」


 騒ぎを聞き付けたギルド長さんが現れる。

 いかつい顔の熊みたいなおっさんだった。


「おっと失礼。彼女とは生まれた時から彼女と結婚するんだとずっと恋焦がれていたのでね。バカップルなのは許してくれ。僕は彼女を娶るためだけに勇者になってあのブラムガルンを討伐して来たんだからね」


 ロリコンここに極まれり。生まれたばかりのカノンちゃんに惚れてご両親に結婚させてくれと土下座したらしいハレッシュ。当然最初はアホかと相手にされなかったが、不意に父親がこの国を脅かすブラムガルンを倒せたら嫁にやってもいいぜ。と冗談を言ったらしい。するとハレッシュはそれを鵜呑みにして自身を鍛え、勇者となってマジで討伐しちゃったんだと。


 酒場とはいえ皆の前で告げたことだっただけに無碍にすることもできず、それまでの数年の間にカノンちゃん自身にも猛烈アタックで好かれるようになっていたハレッシュは、名実ともに幼女を娶り、王様自ら結婚式まで行ってくれたらしい。

 勇者の横暴ここに極まれり。

 ちなみにお義父さんはハレッシュより若いらしい。

 ハレッシュの英雄伝説として巷では有名らしく、ギルド長が溜息混じりに教えてくれた。

 ロリコーン至高帝が凄く喰いついていた話だったとだけしておく。つかお前彼女いるだろが。ハロイアに言いつけるぞ。


「ああ、そうだった。アルセ姫護衛騎士団は明日までこの国に居てくれないか?」


「明日、ですか?」


「ええ。公王陛下が皆さんをねぎらいたいとかで、明日に無理矢理時間を開けるため本日は城で缶詰状態です」


 缶詰状態って、缶詰って言葉の意味は分かってるんだろうか。というか、あるのかこの世界。


「では、本日は宿を取っておきましょうか。ギルド長さん、どっかいい居場所あるかしら」


「うむ。【最後の晩餐亭】はどうかな? 飯は上手いぞ」


 なんか凄い曰くありそうな宿だな。泊まった次の日死にそうだぞ?

 結局アカネが縁起を担いで【坂の上のボイ亭】に泊まることにした。ボイってなんだ?


「では、明日兵士が迎えに上がります。それでは」


 と、ようやく帰れるといった顔でハレッシュとカノンちゃんがお手手繋いで帰って行った。


「ハレッシュちゃん。私ね、凄い体験してきたよっ」


「そうなのかい。ふふ。今夜のピロートークは盛り上がりそうだなぁ」


「やん、ハレッシュちゃんのえっち」


「あはははは」


「えへへへへ」


 破裂しろバカップル。

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