表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第四話 その盗賊達がどうなったかを彼らは知らない
1118/1818

その致命的失敗を彼らは知らない

「あ、アルセーっ!?」


 アカネが焦る。

 セネカが呆気に取られ、ハレッシュが慌てて子供達を救おうと走り出す。

 しかし盗賊の群れに阻まれ荷馬車に近づけない。


「るーっ!」


 巨大なカレーライスを召喚し、思い切り投げるルクル。しかし盗賊達を薙ぎ払うには至らない。


「野郎ども逃走開始だーっ!」


 遠くの鐘楼を占拠した男が叫ぶ。

 魔法を使っているのだろう、よく通る声が国中に響き渡った。

 マズイマズイマズイ。このままじゃアルセが、アルセが粗野な盗賊どもに身の毛もよだつようなことを……させるか、させる訳にはいかない。例え世界を破壊してでも阻止しなければっ。


「あ、ちょ、エロバグ!?」


 走り出す僕に気付いたアカネ。しかしすぐに意図を察したようで、ああもうっと叫び頭を掻きむしりながら杖を取り出した。


「全力フォローするから何とかしてみなさい!」


 すぽぽぽぽーんとアカネの服が空を舞う。

 粗野な男達から歓声が上がった。しかし、次の瞬間飛び交う無数の火炎球に阿鼻叫喚の地獄絵図が出来上がった。

 僕は押し合い圧し合い逃げだす盗賊達に紛れて馬車を追う。


「るーっ」


「駄目よルクル。あんたは留守番!」


「るっ!?」


「あんたが行ったらバレるでしょ。あいつは単身だからアルセを救えるのよ!」


「るー……」


 胸と恥部を両手で隠しながら杖を手放さないようにしっかり持って魔法を行使するアカネに窘められ、しょげ返るルクル。しかしすぐに決意新たにカレーライスを近くの盗賊に叩き込んでいく。


「撤退だ阿呆共!」


「しかし全裸の女っすぜ!」


「盛って死にたきゃ勝手に死ね! 逃げるぞ!」


 数人が残り盗賊達が引いて行く。

 残った盗賊たちが下卑た顔でアカネに近づこうとするが、魔法連弾に攻めあぐね。カレーを顔面に食らって倒れていく。


「貰った!」


 しかし、背後に回っていた盗賊の一人がアカネに飛びかかった。

 気付いたアカネだが両手が塞がっているので動きが悪い。

 マズい。慌てたアカネ。迫る男の手。


「させないってば!」


 しかし、アカネを後ろから羽交い締めしようとした男の顔面にオールが叩き込まれた。


「げぶっ」


「乱れ水飛沫!」


 オールを水が覆う。水属性と化したオールの連撃が男に襲いかかり、セネカの回し蹴りがトドメに叩き込まれた。水飛沫と共に男が倒れる。


「捕縛します、アカネさん、ルクルさんフォローを」


「え。ええ」


「るーっ」


 よし、あっちは大丈夫そうだ。

 僕は、馬車を追う。

 アカネ達は大丈夫そうなので近くに居た盗賊の後を走りながら隠れ家へと向かう。


 運動をしてない僕には辛い作業だ。

 だけどアルセが攫われたのだ。僕の辛さ、痛み、苦難など何するモノぞ。

 アルセの危機に比べたら、そう、盗賊達よ後悔しろよ。

 アルセにその汚い手を出しやがったら全員死ぬより恐ろしいバグを喰らわせてやるからな!


 盗賊たちは山中に逃げ込み、待っていた馬車に合流すると、ゆっくりと追っ手が掛かっていないかを注意しながら進みだす。

 御蔭でアルセに追い付けた。

 流石に牢屋内には入れないけど鉄格子の前まで接近できたので、そのまま馬車に乗り込み目的地まで輸送して貰うことにした。


 はぁ、疲れた。

 やっぱり走り込みとかした方がいいかなぁ。

 それなりに走れるようになっとかないと今回みたいな事があればアルセを見失いかねないぞ。


「おー?」


 あれ? なんでいるの? みたいな口調でアルセが近寄って来た。

 あのね、なんでいるの、じゃないの。あるせってば、もう、もう。あれ程知らない人について行っちゃダメっていったじゃないか!


「あのさ、その、ごめんな。俺が手を引っ張ったせいで君まで……」


 同じ牢屋に入れられていた少年が申し訳なさそうに告げる。

 ホントだよ。お前のせいだよ。でもアルセを助けようとした心意気に免じてデコピン一発で許してやろう。

 首は飛ぶかもしれないけど、そのくらいは仕方ないよね?


「あでっ!?」


 え? なに? みたいに周囲を見回す少年。アルセに近寄ったことで鉄格子に手を入れればデコピン出来る距離だったので遠慮なくやらせて貰った。仕方ねぇ、お前への罰はこの程度で許してやるよ。


「俺、ホーテ。ホーテ・ドンキって言うんだ」


 逆にしたら物凄い有名な名前になるじゃないか!?

 なんだっけ、確か無謀な吶喊してそれが悉く成功した人の物語りだっけ?


「おー」


 これはどうもご丁寧に。とアルセが貴族風の御挨拶。

 貴族令嬢の御挨拶まで出来るなんてさすがアルセ。白のワンピースもとっても可愛らしいよ。


「つかよークソガキ。そいつ魔物だぞ?」


「え?」


 牢屋番というか護送係のおっさんが呆れた顔で告げる。

 粗野な出で立ちなのは盗賊の一味だから。しかしその姿はどこか憎めない人の良いフランクなおっさんといった感じがする。


「え? 魔物?」


「おう、そいつは多分アルセイデスだ。近くの森から街に迷い込んだんだろ。まぁ、こっちが攻撃しなけりゃ危害はねぇだろ。大人しい種族らしいしな」


 好奇心旺盛なやんちゃ娘だけどね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ