その国の危機を僕らは知らない
「じゃぁ、行って来るね」
セネカが自分の事務所から出てくる。相方に今回の僕等を案内した代金預け、しばらく一人で営業して貰うように頼んで来たのだ。
向こうもむしろこの突然の休暇宣言に乗り気で、絶対に魔物図鑑手に入れて来てね二人分っ。と元気にセネカを送りだしていた。
扉を閉める際臨時収入~るりるらーとか聞こえたのは気のせいだと思おう。
「あはは。帰って来た時お金残ってるかなぁ……」
苦笑いのセネカがパーティーに加わり、代わりにアフロ狩りガニがアルセが城の近くに作った水上蔦のアルセ教会ぺズン支部の前でアフロ化屋を開設。ぺズンに留まる事になりました。
アルセ教会の方にはマイネフランから司教が数人来るらしいです。
オヒシュキが率先してアルセ教教会にまで来てくれているので興味を覚えた案内人の女の子たちが入信を始め、それなりの賑わいをみせ始めている。
あと切実な男達が列を成してアフロ化屋に並んでいるのが印象的だった。
きっとぺズンはこの先アフロの街としても有名になって行くんだろう。軽く悪夢だ。
そして僕らはぺズンに別れを告げてエアークラフトピーサンの元へ。
空軍カモメたちとしばしの憩いを堪能していたエアークラフトピーサンは僕らを見付けると行くのか。と問いかけるように瞬きした後、クェェと一声。
空軍カモメたちが一斉に整列してエアークラフトピーサン内部へと入って行く。
少し遅れ、にゃんだー探険隊とルグスが合流。満足した顔の猫達に群がられ、ルグスが真っ先にエアークラフトピーサンに乗り込んだ。
「え゛!? 魔物の口に入るんですかっ」
「そういう魔物なのよ。本当に食べられる訳じゃないから、ほら、行きましょう」
リエラに連れられセネカが恐る恐るエアークラフトピーサン内へと入って行く。
口の中に入って行く姿はまさに巨鳥に喰われるようにしか見えません。
他のメンバーもつぎつぎと乗り込み、残るはアカネだけ。
僕も取り残されないように乗ろうとしたのだが、その腕をアカネが掴んだ。
どうしたアカネ?
少し憮然としたような、でも顔が赤いような気がしなくもない顔で、彼女はそっぽ向いて告げる。
「あー、その。なんていうか、昨日のことは忘れなさい。別に私はこの世界が嫌いって訳じゃないからね」
ああ、地球帰りたいとか呟いてたことか。誰だって弱った時はホームシックになったりするよ。そのくらいは……でも、確かに地球の街並みとか食品とか物凄い欲しいなとかって思う時はあるよね。二度と手に入らないと分かってるから余計にさ。
「リエラと上手くやんなさいよエロバグ」
恥ずかしそうに一言残し、アカネがエアークラフトピーサンに乗り込む。
って、待って、アカネが入ったら僕認識されてないから入れなく……
「るー?」
あ、そっか。僕のストーカー様が常にいたわ。
ルクルがまだ行かないの? みたいな顔をしていたので感謝の意味を込めて頭撫でときました。
いきなりなんなのっ!? と困惑していたルクルをひとしきり撫でまわした後、二人揃ってエアークラフトピーサンに乗り込んだ。
巨鳥が浮上する。
空へと滑空する巨大な鳥。その中では外の景色が普通に壁に投影されていた。
セネカが大口開けてその光景に魅入る。
「え? あれ? 私、巨大な鳥の中に入りましたよね? え? 何ここ」
セネカの常識が一つ破壊された。
SAN値直送の一撃に思わず頬を抓るセネカ。
大丈夫、夢じゃないよ。
「あ、あの、リエラさん、これ、これ何ですか!?」
「えー、あー、えっと。エアークラフトピーサンです」
「それは分かります! 鳥の中なのに外が見えるってどういうことですか!?」
「そういう仕様で……」
「意味が分かりませんよ!? なんですかこの生物! どうしてこんなのが存在してるんですか!?」
「……アルセの知り合いだから」
返答に詰まったリエラは伝家の宝刀アルセだからを使用。アルセの知り合いだからっておかしい人ばっかりじゃ無いんだよリエラ。
未だ納得していないセネカだったが、非常識さはまだまだ彼女に襲いかからんと犇めき合っているのだ。
「あ、あの、あの魔物、食べられてません?」
にゃんだー探険隊に群がられているのはワンバーちゃん。甘噛みかと思いきやどう見ても食べられてます。
犬、猫に破れるの図。
泣きそうな顔のワンバーちゃんからルグスとのじゃ姫がにゃんだー探険隊を遠ざけようと頑張ってます。
こうして見ると本当に個性的というかおかしな生物ばっかり仲間になってるなぁ。
「あ、見てください、メリケンサック公国ですよ」
「え? もうっ!? さっき飛び立ったばっかりですよね!?」
エアークラフトピーサン速いからなぁ。
……って、あれ? なんか国から火の手上がってない?




