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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第四話 その盗賊達がどうなったかを彼らは知らない
1113/1818

その桜並木の告白を彼らしか知らない

「あの、ところでこの水路の先ってどこに行くんですか?」


 ふいにリエラがセネカに尋ねた。

 しばし王城を眼下に見つめていたセネカは慌ててリエラに視線を向ける。

 やっぱり今もここから見る景色が好きなんだろうな。


「この先は北の湖に繋がってます。オヒシュキ様がいらっしゃいますが、お会いになりますか?」


「おー!」


 おおっとアルセが大喜びだ。見に行くしかないかなぁ。


「……リエラ」


「え? なんですアカネさん」


 少し考え事をしていたアカネは、顔を上げるとリエラに耳打ちを始める。

 困ったような困惑の顔になるリエラの肩をぽんっと叩きアカネは僕の元に来る。


「エロバグ、あんたリエラとここに残りなさい」


 ええっ!? なんでさっ。


「オヒシュキがどんなものか知らないけど、私達で何とかするわ。あんたはリエラの本心を聞くこと。どうせギリアムがカッコ良くなってリエラに話しかけてるせいで嫉妬してんでしょ」


 モロバレでしたか!? いや、いやいやいや、僕透明人間だし、リエラとどうこうとかは考えてないし。


「すいませんセネカさん、私はもう少しここを見ていたいので残ってもいいですか?」


「え? はい。ではそちらの岸に接岸しますね」


 ゴンドラを寄せて岸にリエラを上げるセネカ。後で迎えに来るのでここにいてくださいと言われた。

 僕もその隙にリエラの横に上がる。

 居残るリエラに皆が手を振り、ゴンドラが去って行く。

 ギリアムが普通に一緒に残ろうとしたけどアカネが無理矢理肩引っ張ってゴンドラに引き戻している姿が見えた。


 なんだろう、アレか? 昨日僕に慰めて貰ったから代わりにリエラとデートさせてやるとか、そんな感じですか。

 い、いらないお世話よ全く! ……ありがと。

 って思わずツンデレしそうになったじゃないかっ。


「……行っちゃいましたね皆さん」


 そうだね。あー、その、なんて言うか、緊張して来た。

 二人して桜並木を眺める。

 遠くまで見通せるそこは、桜の木々の合間に広がる湖の中の城や、城下町。

 無数のゴンドラがゆったりと行きかっている姿も見える。


「凄いですよね、こんな光景、初めて見ました」


 綺麗な光景ってのは見る人を魅了するからなぁ。

 僕も富士山からの雲海とか初日の出とか見るのは好きだったなぁ。

 ずっと一人で三角座りして見つめてたんだよ。


「アカネさんから聞きました」


 何を!? いや、別に僕は嫉妬なんかしてませんよ? リエラが誰を好きになっても気にしてなんか、な、ないんだからねっ。


「私は、自分の気持ちはあまりよく分かってません。ルクルやパルティみたいにあからさまな好意を向けることも、よくわからなくて、ただ、貴方とずっと一緒に居るのは楽しいです。やっぱり、アルセ騎士団はアルセが居て、皆が居て、そして……貴方がいてくれる」


 ふわり、優しい風が吹いた。

 掻き上げたリエラの髪が揺れ、桜の花びらが周囲に舞い散る。


「たぶん……私は貴方が好きです」


 横目に恥ずかしそうに、でもしっかりと告げる。

 悔しいことに目を細めたリエラの顔は、僕の顔に桜の花びらが覆いかぶさったせいで殆ど見られなかった。

 うあ、花びら口に入った。ぺっ、ぺっ。


「ずっと、皆で冒険できたら……いいですよね」


 顔を上げると、儚げに微笑むリエラ。

 ザバリ、水路から恨み辛みで出来た呪詛を纏い岸に手を掛けゆっくりと這いあがってくる嫉妬の悪魔。リエラの背後に怨霊のようにるぅぅと近づくルクル様。

 顔を赤くしてえへへと笑うリエラ。その肩にルクルが顎を乗せた。


「ひゃっ! ひゃあああああああああああああああああああああああああああっ!!?」


 一瞬、肩に感じた違和感に驚き、さらにルクルが居たことで悲鳴を上げるリエラ。

 当然ながらルクルが僕らを二人きりになんてする筈も無かったのだ。

 でも……そっか。リエラ、僕のこと好きでいてくれるのか……


「あーもうっ、驚いたじゃないルクルっ」


「るぅーっ!」


 抜け駆けすんなっとばかりに唇を尖らせるルクル。

 そんな彼女を見てリエラはふふっと微笑んだ。


「透明人間さん。私ギリアムさんは綺麗な顔だと思いますけど、恋愛対象には見ませんから安心してください。……なんてね。ちょっと、自意識過剰ですかね」


 たはは。と頭を掻くリエラの頭をぽんと叩く。

 うん。僕もいろいろ、今後の事考えなきゃダメだな。

 ずっと一緒に、皆とこのまま……


「な、なんか、このままここで待つのちょっと恥ずかしいですね。歩きで皆さんの後追っちゃいません?」


 照れ隠しのリエラに引き連れられ、僕とリエラとルクルが陸路を北の湖へと向かう。

 かなり遠いのかと思ったけどそこまで離れては無かった。十分と掛からず湖へと辿り着く。

 そこでは岸辺に降りたメンバーと湖の上を歩く一匹の馬。


 ぶるひひひーんと告げる馬に、ギリアムが自己紹介をしようとして蹴り飛ばされているところだった。

 うわ、あの馬性格悪過ぎだろ。今の言葉、男はお呼びじゃ無いんじゃボケェ! とか叫んでたぞ!?

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