そのザリガニと街の関係を彼らは知りたくもなかった
黄金アフロ化した泥田坊改めマドアフロという新種の生物に手を振って別れた僕らは、アフロ好きガニを引き連れぺズンへと戻ることにした。
アルセは何故かアフロ好きガニと仲良く手を繋ぎながらの御帰還です。
「あれは……よいのだろうか?」
流石のジョナサンもアルセの奇行を理解できなかったようでしきりに首を捻っていた。
「いいのよ。だってアルセだし」
そしてアニアはにべもない。
今回唯一の被害者である落ちこぼれニンニンは忍者というかもはや小坊主みたいな姿になってます。小坊主忍者乙。
頭の頭巾も取り去っており、ぺっかーっと光り輝く頭を陽の光に晒していた。
なんか逆に小ざっぱりしたせいで頭巾被るのが気持ち悪いらしい。
収まりが悪いのでだったら素顔だしちゃいます。といった感覚らしい。
うん、全然忍んでないよね。だから落ちこぼれなんだよっ。思わずツッコミ入れそうになったよ。
「なんていうか、不思議な子ですねアルセちゃん」
セネカが湿地帯を歩きながらあははと苦笑い。
その視線の先には仲良く歩くアルセとアフロ好きガニ。手を振って歩く姿はまさに親友のようである。
「あはは。アルセがやることって結構突飛なんですけど、なんやかんやで結局丸く収まっちゃったりするのが多いんですよ」
時々収拾不能になるけどね。魚人島とか、あ、アレは僕のせいだった。あとグーレイ教とか……あれも僕のせいだっけ? あれ? 僕の方が問題児? い、いや、気のせい。気のせいだよ、うん。
ぺズンの街に戻ってきた僕らは、セネカさんの案内で再びギルドへと舞い戻る。
受付嬢はアフロ好きガニを見て一瞬唖然としたものの、リエラからもう被害はないと教えられ、一先ず納得。しかし、討伐対象の魔物が現存している以上報酬を出すか迷っているらしい。
「ギュリ」
「む? 私が言うのか? 仕方ないな。そこのお嬢さん」
アフロ好きガニがジョナサンに何かを告げた。
ニュアンスからお詫びがしたいって事みたいだけど、ジョナサン言葉通じるの?
「え? は、はい何でしょう?」
あまりにも異様な姿のアフロダンサーを見てしまい絶句した受付嬢。しかし気丈にもスマイル対応をしてくれた。
SAN値は大丈夫ですか? 回復方法は自然回復しかないですよ?
「こいつが詫びを入れたいと言っている。可能であれば彼の被害にあった者たちを呼び集めてくれまいか?」
「え? 被害者たちを……ですか?」
「ああ。アフロを刈られた者たちにアフロをプレゼントするそうだ」
なんだそれ?
受付嬢は意味が分からず知り合いのセネカに助けを求める視線を向けた。
セネカは苦笑いしながらお手上げですと視線を交わした。
二人して諦めたような笑みを浮かべて視線を天井へと向けた。
「少々お待ち下さい」
魔法で拡声して一先ずアフロ狩りガニの被害者でアフロ化を希望する者だけを集めて貰う。
数人髪が生えたままのおっさんとか髪が薄くなったおっさんもやってきたけど、10人くらいあつまりました。
なぜかギルド長もやって来て見学。
10人には一所に集まって貰い、アフロ好きガニがそれを一グループとして敵対。
そして、アフロフィーバー発動。場に居る敵性個体全体がアフロへと変貌する。
「お、おおっ!? 髪が、俺の髪がっ」
「おおっ、もう諦めていた髪がフサフサに!」
「見ろ、俺のアフロがアフロが戻ったぞ――――っ!!」
10人全員がアフロ化しました。アフロ好きガニ、こいつはもはやアフロ生成機としての生き方を手に入れたアルセ神教の宣教師だ。
アフロとなった男達がつぎつぎにアフロ好きガニに握手を求める。
一度髪を奪われたことは許せないが、再びアフロの手触りを手に入れられたことには感謝する。そんなことをいいながら、和解の握手が始まった。
「どうやら、本当にアフロ狩りガニはアフロ好きガニにクラスチェンジ。ぺズンの人々に危害は加えなくなったみたいですね」
「おっ」
万事解決。とばかりに拳を突き上げるアルセ。
なぜか隣のレーニャもれーにゃーっと拳を突き上げていた。
ところでレーニャ、君もアフロ気に入ったの?
アフロカレー猫はどうやら容姿に頓着ないようで、アフロ化を直すことなく……というか変化させたこと自体忘れてんじゃないか、猫だし。
「アフロ好きガニだったか。良ければこれからもこの街に居る気はないか?」
一段落すると、なぜかアフロ好きガニに近づくギルド長。
リエラが彼らの元に近づき一緒に話を聞くことしばし、どうやらこの街で新たな商業、アフロ化屋を開かないかという意味不明な商談でした。
ここに居る以外にも髪に悩んでいる人々が居るらしく彼らの為にアフロ化を役に立てないかということらしい。
アルブロシアを食べた御蔭か、ギュリギュリと声をだすザリガニ君は、商談に乗るようで、ギルド長と固い握手を交わしていた。
うん、なんていうか、人とザリガニが握手している姿を見ると手、挟まれる寸前じゃないか? と思ってしまうのは僕だけだろうか?




