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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第四話 その盗賊達がどうなったかを彼らは知らない
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その刈り取る者の恐怖を彼は知らなかった

 結局、強制的に依頼を受けることになったアルセ姫護衛騎士団。

 アカネが率先して宿取っとくらしいので、僕とアルセ、リエラ、アニア、落ちこぼれニンニン、ジョナサン、レーニャがメンバーで森に探索行くことになりました。

 案内人はセネカさんです。


 他のメンバー? なんかアフロにされるのも刈り取られるのも嫌だからって理由でぺズンに残りました。部屋でゆったりしとくんだと。

 リエラもあまり行きたくなさそうにしてたけど一応リーダーなので仕方なく同行。

 流石に女の子がアフロ化させられて丸坊主にされるのは可哀想なので守るから、安心してねリエラ。ついでにアニアも、リエラの近くに居るあいだは守りましょう。勝手にどっか行ってアフロブレス……じゃなかった火炎放射食らっても僕にはどうしようもないからね。


 森というよりは湿地帯を歩く。

 相手がザリガニらしいので湿地なのは納得だ。

 というのも、街に水路が走っている理由も、この近辺は水分が多いかららしく、周辺の森やら平原もぬかるんだ場所の多い湿地帯になっていた。


「南が街道付きの平原、東はこの湿地森林。北は湖、西には塩湖。出現する魔物は街道側が一番弱く、塩湖、湿地森林、湖の順に強力になってます」


「へぇー、湖が一番なんですね」


「主であるオヒシュキ様がいらっしゃいますから、それに伴い周囲の魔素が多く。強力な魔物が多くなるんです。ただ、オヒシュキ様の御蔭で魔物が街を襲うことは無く、週に一度オヒシュキ様を女性がブラッシングするだけで街ごと保護してくださいますから」


「へー。オヒシュキってアレでしょ。ケルピーの上位種の奴」


「そうなのですか? 精霊様としか認識しておりませんが?」


 アニアは妖精なためか精霊などにも詳しいらしい。

 どうでもいい話をしながら湿地帯を歩く。

 にしても、魔物の姿が……ないぞ?


「変ですね」


「どったのリエラ?」


「いえ、ふつうなら既に一回か二回魔物の襲撃があってもいい気がするのですけど」


「それは多分私のせいだと思います」


 おずおず手を上げたのはセネカ。

 自分の腕輪を指差す。


「これはオヒシュキの腕輪と言いまして、オヒシュキ様の加護で弱い魔物は近づいて来ないんです」


「え? それってアフロ狩りとかいうのも近づいて来ないんじゃ……」


「いえ、それはないと思います。水先案内人も襲われた人がいたらしくて、この前湿地帯を案内する時は髪に気を付けるよう指示がありましたから」


「つまり、それだけ強力な存在なのですか」


「もともとアフロ狩りガニの下位種は居たんです。ほら、あそこの湿地で泡吹いてるのがアフロザリガニです」


 なんかもっさりした毛が浮いてると思ったら、あれザリガニなのか。

 よくよく見れば、僕等が近づくと近くの個体が慌てて逃げてるけど、遠くのアフロっぽいのはその場から動かず泡吹いてるな。


「元々はアフロのザリガニなんですか?」


「はい。どうやら成長するごとにアフロを新しくするみたいで、結構なアフロが放置されるんですが、そのアフロを捕獲して集める個体が出てきたようで、それが経験値を積み重ねて魔王種になったようです」


 それが今回の討伐相手アフロ狩りガニ。多分ここのザリガニたちはザリガニというよりはヤドカリの亜種なのではなかろうか。成長と共に大きめのアフロに移動する奴らなのだと思う。

 その為か周囲を観察するとアフロ型魔物が多い。

 アフロザルとかアフロリスとか。


「泥田坊という魔物には気を付けてください。ダメージはそこまでありませんけど泥を吐き付けて来るので、衣類が汚れます」


「それは……微妙ですね」


 あ、もしかしてあれか?

 どろどろの人型っぽいのが湿地帯からざばりと現れすっと息を吸い込むと、僕らに向けて一撃。

 吐き出された泥がアルセに直撃した。

 って、アルセぇぇぇぇ!?


「おー?」


 泥まみれになったアルセは一瞬なんだこれ? みたいな顔をしたあときゃっきゃと笑いだす。

 子供って泥まみれになった方が楽しそうにしてるよね。なんか、楽しくなってきたようで湿地帯に自ら飛び込み泥田坊に突撃。焦って逃げようとした泥田坊の腕を掴んで踊りだす。

 困った泥田坊はどろどろの身体をくねらせなんとなく合わせるように踊りだす。

 うん、シュール。


 ムンクの叫びとか埴輪みたいな空洞の目と口を持つ泥の人型。下半身は汚泥であり、湿地の中でどうなってるか見えないけど、上半身と二股にすら分かれていない下半身をくねらせアルセに合わせて踊る姿はまさにシュール。僕らは何を見せられているんだろう? というか、アルセに攻撃して来た奴に反撃しようとしたのにアルセに止められた気分です。


 しばし二人の踊りを見ていた時だった。

 背後に気配を感じた僕が振り向くと、リエラの背後にアフロがゆっくりと浮上して来るところだった。

 アフロを被ったザリガニが二足歩行で立ち上がり、挟みを持つ腕の肩部分に掛けられている紐は背負い籠のモノ。大きな籠の中にはもっさりとアフロの群れ。


 刈り取る者は既に、僕等に狙いを定めていたのであった。

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