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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第四話 その盗賊達がどうなったかを彼らは知らない
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その依頼をもはや受けるしかないことを彼らは知りたくなかった

「アルセ姫護衛騎士団の皆様、ギルド長の準備が整いましたのでこちらへ」


 告げる受付嬢。大声だったのでギルド内の冒険者達が一斉に振り向く。

 気恥ずかしい気分を味わいながらリエラ達が立ち上がる。


「おい、アルセ姫護衛騎士団って、あの噂の?」

「知ってるのかお前?」

「お前知らないのかよ。マイネフランからコルッカに掛けて活躍中の冒険者グループだよ。ゴブリンの大集団をそいつらだけで撃退したとか。魔王を1000体纏めて殺すスライムがいるとか、時代劇の逆塔をリーダーが単騎突破したとか噂の」


 話に尾ヒレ背ビレが付き過ぎっ。

 僕らだけでゴブリン軍団撃破は、今はアンサー一人でも可能そうだけどあの時は無理ですから。

 魔王1000体を纏めてって、さすがにくずもちでもムリだろ。いや、でもマターラだったら可能な気も……リエラが単騎突破は流石に無謀な気も……いや、でも今なら可能なような?

 あれ、この噂、嘘だとか過剰だとか否定できない?


「なぁ、ってことはよ、アレだろ。ナーロイアで神罰受けた全裸卿もいるんだろ?」

「マジ? 自分の信仰する神に神罰受けるとかウケるんだけどっ」

「つかそれって神意を無視したあくどいことしてたってことだろう。なのにまだグループから抜けてないってどうなんだそれ?」

「神経図太いんだろ。パーティー内に神様居るのにそんな事してるくらいだし」


 アカネさんが凄い槍玉にあがっている件。

 アカネは耳まで真っ赤になりながらも何も言えずに耐えている。

 珍しいけど今騒いだところでただただ恥ずかしさの上塗りになるだけだろうし、諦めてるのかな?


 人の噂を背中越しに聞きながら、僕らは関係者専用通路に入る。

 人の姿が見えなくなった途端アカネさんがギロリと僕を睨みつけて来た。

 いやいやいや、僕のせいじゃないよね!? 理不尽だよね!?


「ねぇ、エロバグ……ちょっとそこらの冒険者バグらしてきてくんない。具体的には……」


 すっと親指をサムズアップしながら首元へ持っていくアカネさん。表情がブラック過ぎます。

 ニタリ、微笑みながら親指を真下に裏返し、首前を一線、指先が通り過ぎる。

 いうなれば首切れ。とかぶっ殺せの合図ですね。地獄へ落ちろという意味もあります。


「ま、まぁまぁアカネさん落ち付いて。噂なんて直ぐになくなりますって」


 リエラが慌ててフォローする。

 ニンゲンたちは皆が苦笑い。セネカもなんとなく察したようで苦笑いに加わってました。

 ほらアルセ、アカネ向けて笑わない。ジョナサンも指差してHAHAHAしないっ。


「お待たせしたようですな。どうぞこちらへ」


 室内に入ると、既にソファに腰かけていたギルド長さんがそんな事を言ってリエラ達に対面のソファを促す。

 人数が多いので少し面喰っていたようだが、リエラとアカネとセネカがソファに座り、他のメンバーが後ろに立つのを見て話し相手はこの三人だと視線をリエラ達に固定する。

 いや、セネカはただ付添人なので座って貰っただけなんだけどね。

 あ、それと背後で変なおっさんが踊ったり魔物少女たちがのじゃおー言ってるだろうけど気にしないでくださいね。あ、カレーは今いらないっす。


「本日はアフロ狩りガニを退治していただけるとか」


「え? いえ、その……」


「私達は子供達を送り届けに来ただけよ。どんな魔物か気になったから聞いてみただけなの」


 口ごもるリエラに代わりぴしゃりと受ける気はないと言い張るアカネさん。


「成る程、子供達についてはこのギルドの威信を掛けて送り届けましょう。それでアフロ狩りガニについてなのですが……」


 聞く気が無いのに話しだすギルド長。このおっさん、是が非でも僕等に魔物退治引き受けさせる気だな。


「いや、だから、私達は受ける気はないって……」


「アフロ狩りガニはアフロを刈り取るザリガニ型の魔物なのです。我が国にはアフロが多いのですが、皆刈られてしまい、普通の髪の者も火炎放射でこんがりアフロにされてから髪を刈られてしまうのです。あまりの被害になんとかしようにも強力な個体の為もはやどうにも……優秀な冒険者の方が依頼を受けてくださればいいのですが……」


「だから、受ける気はないって言ってるでしょ」


「優秀な冒険者の方が依頼を受けてくださればいいのですが……」


「だから、受ける気はないって言ってるでしょっ」


「優秀な冒険者の方が依頼を受けてくださればいいのですが……」


「だから、受ける気はないって言って……」


「優秀な冒険者の方が依頼を受けてくださればいいのですが……」


 ちょ、コレループ入ってる!? 入ってるよね!?

 気付いたアカネも絶対に受けないとばかりに選択肢を常にいいえ選択。

 しかしギルド長の台詞は永遠繰り返されるだけだ。その目が力強く告げていた。

 受けろ、と。


 言葉が止まり、無言で睨み合うアカネとギルド長。

 二人だけの攻防が繰り広げられる。

 静寂な部屋の中、オーイエおーのじゃーと誰かの声だけが響く。

 不意に、踊り終わったジョナサンが歩き出すと、ギルド長とリエラの座る側面にあったソファにぼふりと腰を降ろし、足を組んで両腕を広げて椅子の背もたれを席巻する。


「落ち付きたまえ。聞けばアフロ狩りとかいうふざけた輩は、俺のアフロを狙って来るのだろう? このソウルハートを狙うようなクソ野郎は俺の踊りで改心させてやるさ」


「おお、受けてくださるか!」


 はい、強制選択肢進みました。もはや受けずに終わる訳には行かないから仕方ないよね。

 なんでジョナサンが率先して受けたのかは知らんけど。

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