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その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第四話 その盗賊達がどうなったかを彼らは知らない
1103/1818

その靴の名を僕らは知らなかった

「あの、セネカさん」


「はい、何でしょう?」


 にこにことしたセネカに、魔物図鑑を見たリエラが恐る恐る尋ねる。

 リエラも気付いちゃったらしい。

 ええ、まさかの王族発見です。


「な、なんで、その、水先案内人になられたのですか?」


 急に下から来たリエラにはてな? と小首をかしげつつ、セネカは隠す程でもないとにこやかに告げた。


「家から初めて外に出た時、案内人のお姉さんが凄く綺麗だったんですよね。素敵な場所に一杯案内してくれて、凄く輝いて見えて。私も大きくなったらこうありたい。そう思ったから技術を覚えて水先案内人になったんです。お父様からは結婚が決まるまでは好きにしていいと言われてますし」


「そ、そうですか」


「はい。あ、そうだわ。あのリエラさんたちはお時間はありますか?」


「へ? あ、はい。ギルドで子供達を預けた後は自由時間なので大丈夫ですけど?」


「桜並木の綺麗な水路があるんですよ。良ければご案内いたしますよ? 私が水先案内人になりたいと思った思い出の場所なのです」


「わぁ、それは素敵そうな場所ですね! アカネさん、どうします?」


「そうね。別にいいんじゃないかしら? 他のメンバーで行かない人、いる?」


 アカネの言葉に誰も反応しない。どうやら皆行ってみるのは問題ないらしい。バカップル共は綺麗な景色はむしろバッチコイだろうしね。

 お、アルセも楽しみ? きゃっきゃと喜んでいるアルセとのじゃ姫。のじゃ姫は花見なのじゃーとばかりに今からお団子を手にして喜んでいた。


「それじゃ、ギルドの後でお願いしますね」


「はい」


「あら、ねぇセネカ王女、このコロハダルって何?」


 ちょ、アカネさーんっ!?

 何の気なしにリエラの持ってた魔物図鑑を覗き込み尋ねるアカネ。

 王女という言葉にセネカもパーティーメンバーもピシリと固まった。


 聞いたアカネだけそこに理解が及ばず、返答が無かったので顔を上げて周囲に気付いた。

 あれ、自分また何か問題起こした? みたいな顔になる。

 固まった空気に顔を引くつかせるアカネ。しかし既に言葉として出てしまった以上、僕らがセネカが王女であると知っていることが伝わってしまった。

 無言のままオールを水から引き抜くセネカ。アカネにぴしり、オールを突きつける。


「何処の使者です? 私を政治に利用などできませんよ?」


 冷めた口調で告げるセネカにアカネは思わず両手を上げる。

 いつでもお前を殺せるぞ? そう告げられたような殺意すらセネカから発せられていた。

 まぁ、王女だと告げてないのに王族だとバレてたら暗殺者とか何かしらの下心を持った悪意ある使者の可能性が高いよね。


「ま、待ってくださいセネカさん。そういうのじゃないんです!」


 慌ててアカネを庇うリエラ。その手に持っていた魔物図鑑をセネカに見せる。


「こ、これを」


「これ? なっ!? 私の能力が……!?」


 思わず奪い取り自分の能力値を穴が空くほどに見るセネカ。


「あ、あの、これは……」


「す、すいません。セネカさんがどれ程強いのかと思わず登録してしまって」


「こ、これ、これってどこで? 何処で手に入るんですかっ!?」


 思わず叫ぶセネカ。その瞳はキラキラと輝いている。


「あ、あの、セネカさん?」


「凄いですっ! これで相手が要人かただのおっさんか直ぐ分るじゃないですか! ほしいっ! おこずかい全部注ぎ込んでも欲しいっ!」


「あ、あはは……」


 マイネフランでタダ同然で貰ったとか、言えないよなぁ。

 とりあえずセネカにはマイネフランの冒険者ギルドで貰ったと告げておく。

 深刻な顔で考え始めたセネカだったが少し離れた場所から対抗船が来て、考え中のセネカに案内人の女性が声を掛ける。


「こらっ、お客様案内中に何してるのセネカさん!」


「ひゃっ!? うわ、先輩!? す、すいません!」


 慌てて謝るセネカ。先輩の船が去って行くのを見届けて、ふぅっと息を吐くと、自分の頬を張る。


「すいませんすぐギルドに案内いたしますね」


「あ、はい。なんかいろいろすいません」


「大丈夫ですよリエラさん。突然身バレしたことには驚きましたけどね。でも凄いですねこの魔物図鑑。人も勝手に登録されるんですね」


「はい。私達のは試作品らしいんです。種族ごとではなく個人登録なので魔物図鑑として見るのはちょっと面倒ですけど、相手の能力を知りたい時は便利ですよ」


「ほんとに、これは凄いです。あ、えっとコロハダルでしたよね。これの事です」


 アカネの質問を思いだしたようで、セネカが自分の靴を指差す。


「雨季になると街の一部が水に沈んじゃうんですよ。なので足が濡れてもいいように木で出来た靴を履いてるんです」


 木でできた長靴がコロハダルらしい。

 普通の長靴と違うのは、足の側面に排水用の穴がいくつか空いていることだろう。

 内部に水が入っても直ぐに排出される便利機能らしい。

 濡れるのは前提だそうで、靴下は履かず素足で履くのが基本のようだ。

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