その水先案内人の実力を僕は知りたくなかった
水の国ぺズン。その国内の殆どが水であった。
大型の湖の中央に城が存在し、湖に港のように隣接する岸にはゴンドラという数人乗りの船の群れ。
そのまま街中にも水路が広がっており、しいていうならば僕の元の世界地球のヴィネツィアあたりの街並みといったところだろうか?
街中の移動はもっぱら水路移動が主流のようで、歩道は殆ど使う人が居ないらしい。
近くへの移動で使うくらいなのだそうだ。
貴族も貴族で専用のゴンドラを持っているそうで、そういうゴンドラは大抵豪奢に装飾されているので直ぐに分かる。
船乗りは女性ばかりらしく、これはこの国で信望されている精霊オヒシュキという馬型の精霊が処女の女性が好きだからという理由らしく……なんか、ユニコーンみたいな存在かな?
まぁ、ようするに、精霊様が女好きだから男の船乗りをゴンドラに乗せると大嵐と共に津波が街を襲うとかいう伝承があるらしい。
「えー、と言う訳で、ですね。本日皆様を冒険者ギルドまでご案内、その後遊覧をさせていただくことになりましたセネカと申します」
ぺズン入口付近に無数に点在していたゴンドラ乗り場。いくつかカンパニーがあったのだけど、どこも忙しそうだったので、暇そうにしていた小さなゴンドラ乗り場にやってきました。
対応してくれたのがこちらの茶髪のお姉さん。長い髪をポニーテール、というか三つ編みにしているため、ボーイッシュに見えなくもない外跳ね気味の髪を持っていた。
胸はリエラよりはあるだろうか? それでもBかCぐらいだと思われます。
「今日はよろしく頼みます」
にこやかにほほ笑んだのはギリアム。そのさわやかな笑顔にぽぉっと呆けるセネカさん。ダメだよお姉さん。こいつに惚れても損にしかならないよ。
アルセ、やっぱりこいつにこんな変化させたのは間違いじゃないかな? なんならバグらせちゃおうか?
船賃は貸し切りで100000ゴス。
それでも充分過ぎる程一日の売上以上になるらしい。
臨時収入でウハウハなんだってさ。明日にでも友達と焼き肉食べに行こうとか口から洩れてました。
船のオールを一つ、ゴンドラの一番後ろに立ったセネカさんが優雅に船を漕ぐ。
なんだろう、昔こういうマンガを読んだ気がするんだよなぁ、アレを現実で体験しているみたいな凄く綺麗な光景だ。
流石に船乗りたちをウンディーネとかに例えたりはしないようだけど、街並みは水路メインの作りになっており、いくつかの家は家の地下に船場が常設されていた。
「風がいいですね」
船が進むごとに風を切るため、頬に当る涼しい風が撫でるように去って行く。
行きかうゴンドラから船乗りたちが手を振りあって挨拶をしている。
長閑と言うか優雅と言うか、一度は行ってみたい美しい国というのは伊達ではないようだ。
「そう言えばセネカさん」
「はい、何でしょう?」
「貴女のカンパニーは他のに比べて小さかった気がしますけど……何か理由があったりするの?」
アカネ、復活したのはいいけど聞き方。やっぱり本日も留守番させといた方が良かっただろうか?
「あはは。心配してくれてます? 違うんですよ。私ともう一人が大手のカンパニーから独立したんです。それで始めてまだ半年くらいしか経っていないので」
「ああ、それで。でも二人だけって大丈夫なの? 変な男に襲われたりとか」
「まさか。私達船乗りに不埒な事をしたら精霊様が黙ってませんよ。それに、荒事には対処出来るくらいの実力は船乗りの必須事項ですよ」
朗らかに笑うセネカ。
ふむ? 折角だから見てみるか。
セネカ・セガール・ぺズン
種族:ニンゲンD クラス:水先案内人、ぺズン王国第三王女
二つ名:闘う船乗りさん
装備:ミスリルオール、オヒシュキローブ、縄、オヒシュキの腕輪、コロハダル、魔銃、麻痺魔弾×20、状態異常回復魔弾×10
スキル:
オール斬り:オールなのに剣で切り付けた威力を叩きだす技。
ステータスメガブースト:ステータスを一時的に増強させる。
オールスラッシュ:真空波で切り裂くオールの技術。
水神木板斬り:オールによる水属性の技。
乱れ水飛沫:オールによる連続技。
捕縛術Lv72:縄と腕輪を使った捕縛術。不埒な輩に亀甲縛り!
常時スキル:
肉体強化Lv63
オール術Lv88
水上強化・大:水上での戦闘で能力増大。
ポーカーフェイス
精神耐性・中
種族スキル:
オヒシュキの加護:オヒシュキの加護付き。
水の担い手:水に関する作業にプラス効果。
案内人:案内をする職種に天性。
……なんかめっさ強いっ!?
水先案内人の強さを知った僕は隣から覗いたリエラと絶句するしかなかった。
うん、怒らせないようにしよう。アルセ、大人しくしててね?




