表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
その彼の名を誰も知らない  作者: 龍華ぷろじぇくと
第三話 その不良系魔物の生態を彼らは知らない
101/1818

その娘が船を漕いでいるのを彼らは知らない

 水晶の勇者と呼ばれる勇者が昔居りました。

 彼はもともと王国の王子でした。

 放蕩王子と呼ばれ散財する彼は、ついに国王から勘当を言い渡されてしまったのでした。


 遊び歩く金もなく、途方に暮れる彼は、冒険者になろうと一念発起します。

 しかし彼には実力が無かったのでした。

 王族なのでそれなりの剣技は習っているのですが、彼は本気でそれを覚えていませんでした。

 だからにっちゃうすら倒せなかったのでした。


 一度だけ、本当に一度だけキルベアに襲われた時、護身用として持っていたクリスタルソードを身代わりにキルベアを狩れたものの、それは武器の御蔭であると彼も直ぐに理解しました。

 クリスタルソードの攻撃力はとても高い。素人が振ってもキルベアを一撃で倒せるほどに。

 代わりにクリスタルソードは砕けるが、その働きは王子を生かすには十分過ぎる働きでした。


 王子は働くこともできず、乞食へと身を落としていました。

 町を視察するために外を歩いていた国王はそれを見てさすがに不憫に思ったのでしょう。宝物庫に彼を連れて行き、冒険のために必要なお金だけを持ちだして構わないと告げました。

 それが間違いだったのです。


 次の日、宝物庫のお金が全て消え去り、武器屋からクリスタルソードが全て消え去りました。

 商業用の馬車を一つ買った王子はそれに詰め込めるだけお金を詰め、一番攻撃力の高い剣ながら、脆いとされるクリスタルソードを護身剣として買い溜めし、王国から姿を消したのです。


 国庫を失った国は次第に落ちぶれ、国王は飼い犬に手を噛まれたと叫びながら失意のうちに狂い死んだのでした。

 それを風の噂に聞いた王子は、その時別の国でギルドに所属し、手にしたクリスタルソードで凶悪な魔物を倒していました。

 本来なら躊躇する高額剣を惜しげもなく使う彼の闘いのおかげか、凶悪な魔物はまたたく間に彼の経験値へと変わって行ったのです。


 さすがに自国を滅ぼしたのは彼もやりすぎたと思ったのでしょう。

 あるいは、ここでお金を溜めて祖国に戻すつもりだったのかもしれません。

 しかし、国は滅亡した後であり、彼がクリスタルソードで巨万の富を得たのはその後でした。


 結果、彼は手にした金を全てクリスタルソードに変えました。

 巨万の富は1000本のクリスタルソードへと姿を変え、王子は時の魔王へと闘いを挑みます。

 勝てる者はないとされた魔王に、失うモノの無くなった王子は彼を心酔する仲間たちにクリスタルソードを持たせ、自分一人が闘いながら進んでいくのでした。


 たった一人、無数の水晶剣を操りながら魔王軍を蹴散らす王子は、まさに勇者を彷彿とさせる姿だったと後に彼の仲間は興奮して語ったのです。

 攻撃の度に消え去るクリスタルソード。

 おおよそ800本の犠牲を経て、ついに魔王のもとへと辿り着いた王子一行。

 王子はただただクリスタルソードを浪費しながら魔王に闘いを挑みます。


 王子と魔王の闘いは熾烈を極めました。

 無数のクリスタルソードが犠牲となりました。

 そして最後の一本。それが魔王の心臓を貫き粉々に砕け散った時、ついに勝敗が決したのです。

 ですが、勇者もまた、決して生還できない傷を負っていたのでした。


 血溜りの中に沈む魔王と勇者。

 その勇者を抱き上げたのは、剣持ちを最後まで貫き通した少年でした。

 一人、また一人と仲間は倒れ、最後まで生き残っていたのは王子と少年だけだったのです。


 少年は力尽きかけた王子を抱き上げ勝利を祝います。

 そんな少年に王子は告げました。


「思えば、これは滅びてしまった我が国への罪滅ぼしだった……ソウタ、頼みがある。クリスタルソードの欠片と我が骸を祖国へ蒔いてほしい。亡き父に謝りたいのだ。私にクリスタルソードをくれたのも、国の金を自由に持って行けと言ってくれたのも父だった。私が悉く彼の好意を無碍にした。その愚かさを謝りたい。もう、生きたまま向う事はできそうにないが、頼む、我が最後の頼みを、聞いてくれ……」


 剣持ちのソウタは王子の言葉に感銘を受け、その場で犠牲となったクリスタルソードの欠片を掻き集めると、王子の骸と共に彼の祖国へ向けて旅立ったのです。

 ソウタは王子を亡国に送り埋めた後、その国跡にクリスタルの欠片をちりばめた石碑を建てました。

 人々は王子の過ちと偉業を知り、亡国へと参拝に訪れ、水晶剣の勇者は伝説になっていったのでした。


 後にソウタによって新しくセルヴァティア王国が建国された後も、その地には水晶剣の墓がモニュメントとして創設され、末永く繁栄を誇ったのだという。

 と、いうのが絵本の内容でした。

 リエラ読むの上手いね。なんか水晶勇者の苦悩と決意が伝わってくるようだ。


 というか、コレ絵本にしていいのか?

 なんか国が一つ滅んでるんですけど?

 というか最後の方剣持ちソウタの冒険譚みたいになってるんですけど?


 というか、1000本のクリスタルソードって、買い過ぎだろ。そしてソレ全て注ぎ込んで魔王倒してるし。わずか800撃でよく魔王軍倒せたな!? 魔王に200本注ぎ込むってどうなの?

 思わずツッコミ入れる僕だった。誰にも見えないけど、ツッコミどころ満載な絵本でした。

 ……あ、アルセが寝てる。魔物だから寝ることないはずなのに絵本の魔力恐るべし。

 明日は100話になるようなので特別話を挟みます。

 時間は巻き戻って第二部始まる前辺りです。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ