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言葉にできない/小田和正(オフコース)

続・イタリア紀行(言葉にできない/小田和正オフコース

 貴金属、貴重品をごとりと段ボールに入れる音が遠くから聞こえた。業者は作業が早い。動きに無駄が無い。フジロックも、夏フェスも、美術館の展示もそう、卓越したオーガナイザーやプロデューサー、キュレーターであるほど仕事が早く現場を切り盛りし仕事を早く上げる。メリハリがきっちりしていて休憩の取り方も実に上手い。曲がりなりにもたくさんの業者を見てきたが仕事がしっかりできる業者ほどとにかく早い。だらだらやっているところは最後まで締まらない。だらだらだらだら人材配置もままならない。所作に無駄が多いのが素人目にもわかる。それにまた別の観点からの付け足しで言えば概して派遣に対して敬意がない。ぼくはがちがちの儒教徒ではないから年功序列に従うつもりはそれほどないが、実生活でもビジネスの現場でも一応それなりに年上と年下でも現場の先輩には三人行けば我が師ありとそれなりの敬意を払うが、ダメな依頼業者は白髪まじりの中年リストラ再就職者にたいしてもモノのように扱う。もともとヤンチャな世界だから序列意識が強いのかもしらんが、目の前の白髪混じりのうなじに汗がまみれ、それで怒鳴られてへこへこしている姿を後ろから眺めるぼくのこの郷愁に近しいクオリアを彼は感じ取れているのか知らん。確かに現場はやきもちしているから焦るのもわかる。上手く事が運べなければ問われるのは自分の責任だからみな口角から泡を飛ばすのは致し方ないこと。人間の価値なんて簡単に測れる。極限状況化でのユーモア、ただこれのみでその人間の人的度量が容易に推察できる。今、仕切ってるあのバカは人に当たってばかりだ。周りも見えてない。岡目八目、ぼくだってきっとあの位置にいたらテンパルだろうなぁ。あぁ、また見えてない。そっちは人足りてるよ、何か言えば八つ当たりするから、気付いていても周りも誰も教えない。あいつは自分でそういう雰囲気を作った。自業自得なり。彼は自分にコンフュかパルプンテをかけていることに気付かない。おそらく、気付かない人は一生気付かない。メタ認知できることこそが人間の最も高次な機能であり、彼らとぼくを分ける一番のエリートの能力であるならばしばしの優越感にでも浸ろうかしらん。してみると、今、この瞬間も自分にメタ認知を試みてみる。PKかっこいいもの!ぼくの時代はPKファイヤーならぬPKラモスだった。心に潜る。今は夏フェスの現場、灼熱の湘南之風な人ばかりの中、超難関大学に6浪で入って芸術の秋のヨーロッパ旅行の資金捻出の為にグッピーとして泥中の蓮として異文化理解しつつ、低能たりんポリンの塔に、登ってみせるぜ、バベルの塔、と火の鳥の名言をリフレインする。怒鳴られてばかりいるおっさんの後ろ姿を見て、自分の心内意識を満たす決して形式知では説明できないポランニーの暗黙知のクオリアは元を辿れば情動に行き着いて、それは進化論的に生物学的な機能としてぼくたちに備わり、それをぼくたちは後天的に環境的に周りから調整され、また自分で調整して生み出した脳機能だと現代科学は説明する、とリーダーの話をそっちのけで院試の勉強がてら違うことを考えている。あぁ、そうとは言え、頭がこんがり焼けて意識が遠くなってきている気もする。メタ認知、超越的はイデア論的なもの、超越論的はメタ超越的ってことでつまりカント的的な合目的的な批判哲学的なもの、メタメタメタ、メメタァ!あれはおれの親父だ。そしてあれは未来の自分であり、今の自分だ。とぼくは何度も噛み締める。あれは自分だ、彼は自分だ。

 ああはなりたくないな

 …と心の奥底で誰かの声がした。誰?

 ああはなりたくないな、って言ってるんだよ

 …今、自分は彼を下に見ている?可哀想だ。大変だ。生きていても意味が無いのに。あんなにみじめになるくらいなら死んだ方がまし。現在の山本キッドを世間が笑う。世間は山本キッドの膝蹴りで開始4秒でマットに沈んだ宮田を笑う。今はキッドを笑う。笑う。笑う。笑笑www。ベルグソンが人間だけが笑うとしたがユーモアと緊張のヒッチコックも遺伝子にプログラミングされたプロクラテスのベルベットモンキーなり。誰だ、彼を蔑むのは?誰だ?俺か?では俺を蔑むのは誰だ?世間だ。世界だ。宇宙だ。世間から馬鹿にされるのが一番辛い。世間から惨めと思われるのが一番心にこたえる。人に後ろ指を指せば残りの4本は自分を刺す。俺をバカにするのは?自分を馬鹿にすることだ。同情するなら金をくれ。ただ金をくれるもののみが彼を、俺を蔑む権利を有する。己を美しくして初めて美に近づく権利が生じるように、自らも哀れまれて初めてぼくたちに近づくことができる。聞け!聴け!Hark!怒鳴られたって、ちっちゃくたって、リストラされて公園をぶらついたってビニールシートの家に暮らしたって、コパンコパン、ちっさくたって一人前〜♪

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