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たいたいづくし/クマのプー太郎OP

続・イタリア紀行(たいたいづくし/クマのプー太郎OP)

 生きること、則ち苦しいこと。楽して夜まで寝ていたい。ついでにモテたいプー太郎。色即是空空即是色。寝ていたら寝ていたできっと飽きが来る。それが人間だ。喰う為に働く。働く為に喰いたくはない。ぼくは勤務時間に暇があるといつも般若心経をココロコネクトか、半ば口の外でぶつぶつと唱えていた。何か勤務中に勤務以外のことをしないと気が落ち着かない。こんな低賃金でこの偉大な世界を動かすシーザーやナポレオンと方を並べる大傑物がへこへこあざらくと働かされるのは割に合わない。馴れてくると大きな隙間時間が生じることがわかった。何の気兼ね無しにぼけーっと突っ立ているだけでは単なる阿呆である。人生は有限なのだ。タイム・イズ・マニー!客が何か求めてないか注意深く観察し、ホールを見渡しながら高次認知機能を継続させたまま、心の中では受験勉強だったり、教養的なものに没頭する。小さなメモをポケットに忍ばせいつもいつも暇があればちらちら見てはぶつぶつつぶやく。メモには杜甫、李白、王維、陶淵明、芭蕉、一茶、シェークスピア、ブレイク、日本国憲法、ホラティウス、古今東西ありとあらゆる先人たちの知恵のコトバを可能な限り原文で覚える。いつ役に立つか?そんなことは微塵も考えなかった。いつか役に立つとかそういった次元ではなかった。ただいずれの日にか日本を背負った時といった漠然たるものはあった。ただ自らを“高める”ただそれのみだった。ただ栄華の巷低く見て、と旧制高校のエリートみた気概でただ知恵を常食とした。ギリシア語、ラテン語、サンスクリット、とりあえず、そのまま書いて覚えた。

 CHIVALRY is a flower no less indigenous to the soil of Japan than its emblem, the cherry blossom; nor is it a dried-up specimen of an antique virtue preserved in the herbarium of our history. It is still a living object of power and beauty among us; and if it assumes no tangible shape or form, it not the less scents the moral atmosphere, and makes us aware that we are still under its potent spell. The conditions of society which brought it forth and nourished it have long disappeared; but as those far-off stars which once were and are not, still continue to shed their rays upon us, so the light of chivalry, which was a child of feudalism, still illuminates our moral path, surviving its mother institution. It is a pleasure to me to reflect upon this subject in the language of Burke, who uttered the well-known touching eulogy over the neglected bier of its European prototype.

 武士道だって何のその。これくらいならすぐに暗記できらあ。一日一枚ペースで両面の内容をバイト中に完全暗記するようにナルトのリーみたく自分ルールを設定した。二宮金次郎が薪を背負って本を読むのならば、ぼくはトレーにコスモドリアを乗せてハムレットを口ずさもう。ゾマホンが街灯の下でぼろぼろの教科書を読むのならば、ぼくは真鍮を磨きながらLe vent se lève, il faut tenter de vivreと諳んじよう。目下開成灘のライバルたちは今もガリガリ勉強している。ぼくの頭も蒸気機関のように彼らに負けず劣らず熱く回転している。克己復礼、経世済民、刻苦勉励して家庭にお金を入れながら臥薪嘗胆、学問の茨の道を歩む。現役の甘ちゃんよ、君たちよりもぼくのほうが人間として幾分か尊いのだ、とそう自分に言い聞かせる。それよりかはバイトをせず一浪でしっかり大学合格を決めて早く社会人になって親を、身内を安心させたほうがよっぽど親孝行だったなぁ、と後で気付いたが当時のぼくはそう考えでもしないと李徴的メタンハイドレード生成可能プレッシャーで押しつぶされてしまっていたであろうから、何とか卑小なプライドでも保ちながら生きてるフリをしてお天道様に最後まで顔を向け続けたことは十分に褒められたことだ。バイトの時間はゆっくりだが確実に進む。明けない夜はないとルールーが語ったことを信じてバイトが終わるのをただ只管待つ。ただ一切は過ぎていきます、と語ったカルモチン中毒のモテモテデガダン詩人のように今日も般若心経を唱えて店から早々グッドバイする。

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