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ミス・パラレルワールド/相対性理論

続・イタリア紀行(ミス・パラレルワールド/相対性理論)

 店長有田の口撃がはじまった。ケンタは耐えている。こうねちねちと言われ続けると辛いを通り越して呆れてくる。弱い者をいじめたって過去の事実は変わらないのだ。それよりかは反省し自己を省みてこれから生かす方が個人にも周りにもよっぽど有益だ。とはいえ、少しでもにやにやしていたと疑われる隙を与えた自分も悪い。君子危うきに近寄らずを真に実践するのならそもそも店長の見えないところから見るか、さっと店長が床から立ち上がった時に、すっと身をのけぞらせてバックヤードに入るかして店長の視界から消えなましものを。心の中ではこれっぽっちも反省してないのに、顔だけは深刻でさも真に受けているように演技する。店長のタバコと寝起きの口臭がモルボル・グレート並みにきつい。さきほど彼の背中に見てとった“もののあはれ”なるものはどこかに消えてしまった。彼も人なり、我も人なり、それも訂正。そんなのは心の余裕があると時にだけ持てる超越論的な認識で、万人の万人に対する闘争下では性器剥き出しの裸子植物な獣にならなければ生存競争に勝てやしない、勝てやしない。くっくっくっく(ちびまるこ野口さん風)。

 「県高って人格的にねじくり曲がってる奴が多いんだな。」

 もはや何を言っても聞かないであろう。だまって聞き逃すのが得策だ。三十六計逃ぐるに如かず。訂正箇所もたくさん有るが、それを指摘したって火に油を注ぐだけだ。それがマヨネーズのボトルを投げ入れる結果になれば燃えだした鍋も一瞬で沈火するのだが。こういじられるのなら、履歴書に新潟高校なんて書かなければ良かったといつも思う。そうすればまた違う扱われ方もされただろう。しかし、違う高校名を書いたら書いたで学歴詐称であるから、しかたなく新潟高校と自信を持って記入するしかない。東大生が何かできないと、学歴コンプレックスを持つルサンチマンショウジョウ共から石を投げられるように、新潟においては県高が同じ憂き目に合う。もちろん、新潟高校と名乗れば少しばかりの優越感もなきにしもあらずだし、時折美味い汁だったりも吸えるから確かにいい面は多い。けれども些細なミスだったり、またこうしたまったくお門違いな八つ当たりの対象になった時には有名税として相手に恰好の攻撃の口実を持たせることになる。

 「新潟高校は関係ないんじゃないですか。」

 「いやいや絶対そう思ってるでしょ、なんで俺がこんなところでアルバイトしてんだって、そう思ってるよね?」

 「だから、思ってませんって。」

 「いや、わかるんだよ、それがさ、お前からはそういうところが滲み出てる。お前の考えていることはだいたいわかるよ。さっきだって、俺のことざまぁ!って思ってたじゃん、だって顔から笑みがこぼれてたもん。」

 議論は平行線を辿る。議論がある程度の決着を見るには空間が重力で曲がるか、オーダーが入るか、ゲストから呼ばれるかしなければならない。やった、やらない、それでもぼくはやってません!

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