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微笑みがえし/キャンディーズ

続・イタリア紀行(微笑みがえし/キャンディーズ)

 店長が巡礼から戻ってきた。ぼくは何も見てませんよ、といった風体で無言でいつも通り作業していた。男って背中で語り合えるものなんですね、店長。その背中、魁!!男塾っした!もしくは謝男しゃーまんっした!

 …とバックヤードに消え行く姿を見送ったと思ったのも束の間、店長がぼくを呼んだ。開口一番、ぼくは驚んぱ。

 「お前、今、俺見てて、笑ったっしょ?」

 いやいやいやいや!意味が分からない。

 「えっ?なんでですか?いきなり、ぼくがなんで笑うんですか?」

 「いや、いや、今、笑ってたよね?確実に。」

 聞けば店長がサンティアゴ・デラ・コンポステラの帰り道にぼくの顔をふと見てみると若干の笑みが出ていたというのである。ぼくとしては笑みを浮かべたつもりはないのだが、ひょっとしたら店長を迎える時に、ぼくの善意の部分がひょっこりひょうたん島でドンガバチョ並みに顔を出して、それが幾ばかりかの微笑三四郎になっていて店長からしてみればそれが自分への侮辱に感じ取ってしまったのだ。ロマン主義的であればぼくがどう考えてそのようなことをなしたのかが重要になるのであるが、相手はラカン的なコンテキストでぼくの微笑みを解釈してくるから話が困った。普段、自分でぼくをいびっているという自覚があるからそういう風に取るのだろう。だがしかし、それをここで言ったって始まらない。なにより先ずはこの誤解を解かねば。生きねば。昔々は今の今なのだ。

 「いえ、そんなことはないっす。」

 「いやいや、わらってたよね、ざまぁみろって、そう思ってたでしょ?遅刻なんかしてって。」

 正直、心が見透かされてる!?っとは思ったが、それなら後半部分の心のひだまで読み込んで欲しかった。どうしてネガティブなところだけを掬うのだ。

 「いえいえ、そんなことは少しも思ってません。もし仮に思っていたとしても、店長、頑張れ!的な応援メッセージ的な何かです。」

 「は、応援メッセージって何?なんでさりげに上から目線なん?新潟高校だからって調子に乗ってん?」

 はぁ、どうして新潟高校の話題なんか出すかな。カンケーねえじゃん。焼き肉のタレ、ジャン。売り言葉に買い言葉的なものに乗っかってしまった自分が悪かった。何も相手にせず、ただ否定していれば良かったのに、正直者が馬鹿を見る世界なんだ、この次元宇宙は。

 「まじ、ありえねぇわ、お前、なんなん?」

 あぁ、また八つ当たりが始まった。こうなったらもう、よいしょはきかない。ただ堪えるのみ。思い出せ!ラサール石井のチャイルズクエスト!

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