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本のセカイ  作者: 窒素
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はじまり

もし、自分の運命がわかるとしたら、あなたは知りたいですか?たとえ、その運命から逃れられないとわかっていても。


カッカッ…

暗く細い通路を一人の人間が歩いている。髪で顔が隠れており、表情はよく分からない。その人間の着ている服は血まみれになっており、時折り立ち止まりながら歩き続けている。


歩いていき、大きな広間に出てきた。

「どうして……」ぽつり、とその人間は呟いた。


周りには誰もいない。


「何故こうなってしまうんだ……」


まるで何かに訴えるかのように、

誰もいない空間に向かっていう。


その方向に唯一あるもの、

それは一冊の本であった。


その人間は嘆くように呟いた。

「こんなものがあるから……こんなものがあるから……『この世界』なんて…消えてしまえば……」

突如、その人間は動かなくなりそのまま倒れた。


そしてそのまま動かない。

…………………………………

そう遠くない日の記憶。

親友との会話を思い出した。

「実は、僕は―」

…………………………………

一章・はじまり


「フラれるって分かってたら告白なんてしなかったのに………」

僕は歩きながらそう呟く。

隣のクラスの女子に告白したところ、「ごめんなさい!」と即答されてしまったのだ。

そして現在、同じクラスであり、幼なじみである庵沢秋人に相談…というよりは愚痴を言っている。

「元気だせよ、青春にはそんなのよくあることだろ。」

「よく言うぜ…他人事だと思ってさ……。あぁーあー。未来が見えるようになりたいよ。そしたら、フラれることもわかっていて、落ち込むこともなかったのにな……。」

そんな夢みたいなことを言う。どちらにしろフラれることを知るのだから落ち込むだろうけど…。しかし、未来が見えたらテストのヤマだって少しくらい……いや、何でもない。

「…まぁ、人生っていうのは、どうなるか分からないからこそ、面白いんだろ」秋人が最もなことを言う。

「だけどよー、少しくらいは、この先その先どうなるか知りたいよなー」

「…まあな」

秋人は少し、苦い顔をして言った。

さほどそのことは気にしなかった。

このときはまだ、僕は秋人の心境も、何も知らなかった。


「秋人が入院した?!」

次の日、いつものように学校へ行き、朝のHRの時、先生の話に驚いた。

いつも元気で病気とは無縁のあいつが?信じられない。

入院の原因はまだよく分からないという。


その日は土曜日で、午前中授業だったため、早々と学校を出た。

昨日は元気だったのに何故だろう?

詳しい話を聞くため、先生から秋人のいる病院を教えてもらい、その病院へ向かった。


秋人は俺の昔馴染みだ。昔から元気で風邪だって年に一度引くか引かないようなやつなのに……。


病院に着き受付で秋人のことを聞いたが、面会は駄目だそうだ。

仕方なく帰ろうとしたところ後ろから声をかけられた。

「…雄介くん?」

振り向くと秋人のお母さんが立っていた。

「やっぱり雄介くんね、最近見かけないから……。秋人のこと心配してくれたの?」

どこか疲れた様子でそういうおばさんに「はい…あの……秋人くんは大丈夫ですか……?」するとうつむき加減に応えた。

「あの子なら…今は大丈夫よ…」無理して笑顔を作ったような微笑みだった。

もう少し気の利いたことは言えばよかった、と反省していたら思い出したかのようにおばさんは鞄から一冊の本を取り出した。

「一昨日のことなんだけど…秋人がこれを雄介くんにって言っててね……自分で渡せばって言ったんだけど結局渡さないままで………今、秋人、あんな状態だから…」

「…ありがとうございます」

本というよりも日記のようなそれを受け取った。

(続く)

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