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第七話 ~ファーストコンタクト~

 まずは謝罪から、バイト忙しくて昨日のうちに投稿できませんでしたすみませんごめんなさい。もうできないことを宣言しません、懲りました。

 ということで七話投稿です。お詫びも兼ねて長めに書きまみた(わざとです)。ようやく主人公とヒロインが絡みます。それでは第七話 ~ファーストコンタクト~ お楽しみください。

「つ、つかれた……」


 シンクは今までにない疲労感を感じていた。

 実際の疲労度で比べれば任務の方が辛いのだろうが、これはこれで別の辛さがある。


 自己紹介に始まり、孤立無援(こりつむえん)、教師さえも煽ってくる質問の嵐にさらされ。

 その後は、事務連絡と役員やらなんやらを決定し、試験に関する注意事項を聞く。

 それだけだったのだが、その間クラス中からの視線が己が身を刺しているのを感じていた。



 今日は始業式も兼ねていて午前中授業であったため、シンクはお昼時には解放された。


「これはしんどい……」


 シンクは机の上に突っ伏しすすけている。放課後となった今も周囲からの好奇の目は続いている。

いやむしろ増えている。それもそのはず、他クラスからも噂を聞きつけ、野次馬精神旺盛な学生が集団で押し寄せているのだから。



「(飯どうすっかな~)」


 なんてことを考えていると、


「ちょっとよろしいかしら?」


 頭の上から声が降ってきた。ゆっくり顔を上げるとそこにはブロンド長髪の少女(パツキンネェちゃん)が立っていた。


「俺になんか用?」


 正直いえばシンクは今は誰ともかかわり合いたくなかったのでそっけない返事を返してしまう。

 が、相手もシンクの状態を理解しているようで少し申し訳なさそうな顔をしながら、


「お疲れのところすみません。ですがそろそろお昼時ですし、お食事はどうなさるのかと思いまして。

もしよろしければ私たちとご一緒しませんか?」


 そう言って彼女は後ろを振り向く。そこには彼女に隠れるようにしてあの目が合った少女が立っていた。

 周りには「先を越された!」とでも言いたそうな表情をする生徒が見受けられる。


「あ!申し遅れました。コホン……

私はセリーヌ・ジャンヌ・ドゥ・アズナブルです、以後お見知りおきを。セリーとお呼びください。

そして彼女が各務(かがみ) りせさんです。ほらリセさん、挨拶くらいなさったらどうです?

(さ~て、せっかくチャンス作ってあげたんだからいいとこ……じゃなくて面白いとこ見せなさいよ、主に私のために)」


 ずいぶんと自分の欲求に素直な子である。ちなみに赤くもなく、角もなければ3倍でもない。


「(アズナブル……確かフランスの製薬会社だったか。

 貴族出身ということはほぼ間違いなくそうだろう。

 そしてこっちの子が……やはり名前にも聞き覚えがない。あれは……そう、気のせいだ)」


 完全に割り切れたようでシンクはリセの方に顔を向ける。彼女はというと、


「(セリー!? 何いきなり声かけてんの!? 馬鹿なの? ねぇ!?

 ……その表情はわざとね!? なに!? 何が狙い?

 あ、あんたもこっちみんな!! あ~、さっき妄想してた自分を殺したい!!

 どうすんの私? どうすんのよ!? ……ええい、ままよ!!)


 はじめまして、各務 りせって言います。ども。」


「ども、よろしく」


 見本になるほど素晴らしい安全策である。


「(つまんない~!! これだけで済まそうだなんて許さないんだから!!)


 ところでどうですか、お食事の方は? よろしければ学食まで案内しますわ」


「ほんとに? それは助かる。全然場所知らなくて。各務さんも構わない?」


「え!? ええ、構わないわよ(逃げられなかったよ……)」


 これはもはや運命だったのだろう……。




 3人で学食へ向かう。シンクとセリーは並んで歩き、リセはその後ろをとぼとぼとついて来ている。


「やっぱりあのアズナブルだったのか……」


「ええ、しかしよくお分かりになられましたね。

 アズナブル製薬はそう名の知られた会社でもないでしょうに?」


「能力者なら聞き覚えはあるだろうさ。

 なんてったって能力抑制剤を作ってる世界で唯一の会社なのだからさ」



 能力抑制剤……それは’過剰能力制御不全症(オーバースキル)’と呼ばれる障害を抑えるためにアズナブル製薬が開発した薬剤だ。意図せずに強すぎる能力を発動してしまうこの障害は当時は対処なしとされ、隔離、もしくは密かに処理(・ ・)されていた。


 だが、当時は普通の製薬会社だったアズナブル製薬が新薬を開発。

 それ以来、障害は治療できるものとなり、アズナブル家は莫大な資産を築くに至った。

 未だ対症治療にすぎないのが現状であるが。



「いえ、そんなことはございませんわ。一般能力者や学生はなかなか知らない名です」


「そういうものなんだな」


 実にたわいのない会話を交わしながら一同は学食へと歩を進めていく。


「(私はいらないでしょ? いらないわよね? 帰っていい? 帰りたい……帰らせて。

 帰ってベットに潜って今日の自分を反省したい)」


 一名ほど後悔の海へ飛び込んでいる模様ではあるが。




「さあ、ここが学食ですわ」


「おお!! 規模がおかしいだろう!?」


 そう言ってシンクが見上げるのは8階建てのスタイリッシュな建物だった。

 この建物のすべてのフロアは学食になっていて、フロアごとに違う会社が経営している。

 別々の会社というのがみそで、各フロアでの競争は激しく、どの店舗もかなりレベルの高い食事を学生安心価格で提供している。


「今日はどこ食べに行くの?」


 ようやくリセが口を開く。


「今日は私にお任せくださいな」


 そう言ってずんずんと歩を進めるセリー。そんなセリーを残された二人は急いで追う。

 そしてエレベーターに乗り最上階に向かう。


「フォレット・リーヴェに行くの?」


「ええ。いかがですか?」


「私そんなにお金に余裕ないわよ?」


 ’フォレット・リーヴェ’はこの学食の最上階に位置するイタリアンのお店で、全店舗の中でも割高な方ではあるがその味は保証されている。ちょっと贅沢したいときなどによく使われるお店だ。


「ご心配なく、今日は私に任せてくださいな。せっかく新しい友人と知り合えたのですから、おいしいものでも食べながら親交を深めるのもよろしいでしょう?」


「いいのか俺まで?」


「ええ、ご遠慮なさらないでくださいな」


 そんな会話をしていると最上階へ到着。エレベーターを降りるとウェイターが近寄ってきて一礼をする。


「ようこそいらっしゃいましたアズナブル様。ご予約の席はこちらでございます」


 そう言って案内を始める。


『ちょっと!? いつの間に予約なんてしたのよ?』


『私に抜かりわないわよ、ふふふ』


 シンクの見えないところで二人は会話を交わす。



「こちらでございます」


 そう言って案内された席は個室席だった。


「個室席ってあんた!?」


「だって、世渡さんはいろいろな視線にさらされてお疲れでしょうに。ここは気遣ってあげるのが当然ではありませんか? (他の人たちに邪魔なんてさせないわ!!)」


 その器量の良さを善意で生かせないのだろうか。


「メニューに関してはこちらで決めても構わないかしら? ……では湖畔のランチセットをお願いできますか?」


「かしこまりました」


 ウェイターは注文を取ると個室から退席していった。


『ランチで一番高いのじゃないの!? 何のつもりよ・・・』


『ゆ・う・じょ・う(楽しませてくれることに対する正当な報酬よ)、ふふふ』


 お金の使いどころを間違っているお嬢様である。


「先ほどからリセさんは全く話してないじゃないですか。少しはお話しなさったらどうです?」


「え!? わたし? ええと、その……」


 突然ふられたことに戸惑うリセだがむしろチャンスと考え気になっていたことを聞くことにした。


「教室でさ……その、私を見て驚いてなかった?」


「(やはりばれてたか……)

 いや、頭に虫が乗ってたから……」


 とっさの言い訳にしては苦しいとシンクは思うのだが……、


「え、嘘!?」


 と、鏡を取出し頭を映す。


「もういないから大丈夫だよ」


「え、そうなの? よかった」


 リセはほっとした様子で鏡をしまうが、


「(ということは私の勘違いって……何この自意識過剰な女。

 恥ずかしい通り越して嫌悪感しか感じない……)」


「(うわ、信じちゃったよ。素直な子なんだな~)」


 方や絶望に打ちひしがれ自己嫌悪の世界へ、方やほのぼのとした気分になっている。

 そんな対照的な二人を見て、


「ふ……ふ、ふふ……ふ……、あはははははは、もうダメ!! 何あなたたち!?

 面白すぎるわよ、ふふふふふ、あはははははは!」


 今回の黒幕は満足したようだ。


「ちょっ!? あんたねぇ!! なに一人で爆笑してんのよ!

 しかもさっきから黙って聞いてれば猫かぶってるしさぁ!!」


「はぁ、はぁ……ふ……ふふ……ふぅ…………。あ~おなか痛い。

 ごめんごめん、だってリセが可愛い(面白い)んだもの。

シンクさんもごめんなさいね、この娘ったら可愛くて(おかしくて)可愛くて(おかしくて)」


「いや、なんとなくそんな気はしてた(社交界でる人間は演技上手いからな~)」




 セリーがひとしきり笑った後食事が運ばれてきた。パスタがメインの豪華な食事であった。


「もう、リセったら、機嫌直してよ」


「フンッ!!」


 リセは散々笑われたことが癪に障ったのだろう、ふてくされた表情でパンに噛り付いている。


「まあまあ、各務さ「リセ」……え!?」


「リセでいいわよ。そのかわり私もあんたのことシンクって呼ぶから」


「いきなり呼び捨てするのかしら? 大胆なのね」


「あんたは少し黙ってなさい」


「はい、そうします。ごめんなさい……」


 リセの一睨みにセリー轟沈(ごうちん)


「さん付けとか気持ち悪いのよ、私の性に合わないわ。別にいいでしょ?」


「ああ、構わないよ。よろしく、リセ」


「よろしくね、シンク」




 その後は和気あいあいとした会話を交えながらの食事となった。リセの機嫌も治ったようで笑顔もあふれている。基本的にはリセが学校のことをはなし、シンクが分からないことを質問する形であった。


 これが少年と少女の能力者として(・ ・ ・)のファーストコンタクトであった。

 この二人が出会った瞬間から、物語は再び(・ ・)動き出したのである。






















 「私もそろそろしゃべってもいい?」


 少し黙っていいることをお勧めする。

というわけで第七話いかがだったでしょうか。お楽しみいただけましたか?とうとう次回!!な、なんと!!能力登場しま~す!!ここまで長かった・・・。ようやく能力物の物語がかけると思うとわくてかしますねww

最後まで見てくださった読者の皆様本当にありがとうございます。少しでも楽しんでいただけたようでしたら幸いです。感想などいただけるようでしたら励みになりますのでよろしければお願いします。

それでは次話でまたお会いしましょう。

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