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助けが現れたのです

 ジェーシャチ国の国境を越え、ディエテ国に到着したのですが、ここから王都までまだ馬車で数日あるそうなのです。

 私のお尻は限界です。もう無理なのです。

 と、更なる馬車の揺れに耐えつつ一人嘆いてると、ディエテ国の外交官さん……ジェーシャチ国王に私の引渡しを求めて、この国まで連れてきたおじ様なのですが、ほっとしたようにため息をついてこういったのです。


 「ここからの旅は急がなくても大丈夫なので、次に着く町で数日休んでから出発しましょうか」

 「え?」

 「イチカ様には本当に無理をさせてしまい申し訳ありませんでした」

 「??」

 よく意味が分からず私がおじ様を見つめていると、外交官さんは目を細めて優しく微笑んだのです。


 「イチカ様、今まで何一つ説明をせず、無理やり国からお連れして申し訳ありませんでした」

 深々と頭を下げる外交官さん。

 そういえば、私がディエテ国についたらどうなるかとか説明されていなかったです。

 私も、「ディエテ国に着いたら研究の後、剥製になるんだよ♪」とか言われたら嫌だったので、昔の事を思い出しながら現実逃避をして何も聞かなかったのです。


 「実は、我が国のとある高貴な身分の方がイチカ様の事を大変気にしておりまして」

 「コウキナミブンの方?」

 唐突に語りだす外交官さん。どうやら私を買った理由を話してくれるようです。

 「その方は、身分が高いだけではなく、魔術の才能もこの国一番と言われるような方なのですが、少々放浪癖がある方でして、簡単な書置きを残してふらりといなくなり、数ヶ月音沙汰がないなんて事をよくされる方なのです」

 何だか自由な人みたいです。


 「イチカ様のいる研究所で一緒に働きたいとある日ポツリとおっしゃられたそうです」

 「はあ……」

 「目撃者によるとそのときの目が、本気だったようで」

 外交官さんはそう言うと遠くを見るように私から視線をそらしました。


 「さらに、国外移住の書類をこっそり準備していたようでして……。国のほうで、これはまずいと……あの方がこの国から出て行くというのはとてつもなく大きな損失です、どうにか阻止をしなくてはならないということになりまして」

 そんなに私に会いたかったのですか?

 やっぱり異世界人を研究するつもりなのですね!


 「ジェーシャチ国にとってイチカ様は、その、今のところ一応移民の手続きは済まれていましたが、一般市民の一研究員、さらにご家族や親類といったものもございませんので、他所から手が出ないうちにお早めに我が国で確保させていただこうと……」

 前に、とてもお世話になった魔術研究所の所長さんが貴族の身分の方だったので、養女にならないかとおっしゃってくれたのを断らなければ良かったです。

 もしかして、こんな事があるかもと予想していたのでしょうか?

 でも、あのときは書類の上だけでも貴族になるなんて、一般庶民の私には恐れ多く感じたのですよ。

 ああ、優しかった研究所の皆さんの顔が浮かんでは消えていくのです。

 これが走馬灯と言うものでしょうか?

 私はきっと、その高貴な身分な方に貢がれるのですね。

 わざわざ移住までして私を研究したいなんて怖すぎるのです!



 私がガクガクブルブルと震えていたその時です。

 馬車が止まったのです。

 もう街に着いたのでしょうか?


 「おかしいてすね、まだ町まではだいぶあるはず……」

 外交官さんが首をかしげていると、乱暴に馬車のドアが開け放たれました。


 「イチカさん!」

 私の名前を呼びながら馬車に入ってきたのは1年前トンボ玉をくれた……えーっと、名前なんでしたっけ?


 「アインス様!?」

 そう、アインスさんです。

 外交官さんが名前を呼んでくれて助かりました。

 お名前は何でしたっけ?と聞くのはさすがに失礼ですよね。

 そのアインスさんが急に馬車の中にはいってきたのです。

 お久しぶりなのです。

 つい最近思い出していたのでびっくりです。


 「イチカさん大丈夫ですか!」

 なにやら焦った感じでアインスさんが問いかけてきます。

 挨拶をするタイミングを逃してしまいました。


 大丈夫かと、問われれば答えは決まっています。

 「大丈夫じゃないのです。研究の後剥製は嫌です!」

 「剥製?何の事ですか?」

 「わざわざ移住してまで私を研究したいなんて怖い人がいるのです。きっと隅々まで調べられた後剥製にされて保存されんです!」

 「……」

 「……」

 私の答えの後、なぜか馬車の中が沈黙に包まれました。

 はて?どうしたのでしょう?

 この空気に困ってアインスさんを見つめてみました。

 すると、アインスさんは馬車の中に入ってきて私の手をその大きな両手でぎゅっと握り締めました。

 なにやら、捕まえられた感じがするのです。


 「イチカさん、私と逃げましょう」


 なんですと!?私を助けてくれるのでしょうか?


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