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売られたのです


 「酷いです。私を勝手に売り払うなんて」

 なんでも、隣国のディエテ国が国同士の貿易の条件に私の身柄引き渡しを要求したそうです。

 私さえ渡せばだいぶ輸入税が減税されるとか。

 いったい何が目的ですか?

 あれですか、異世界人とこの世界の人の違いを研究するために人体実験とかするつもりですか?

 嫌ー!

 この国の魔術研究所ではどのような階級の者、それこそ死刑囚であっても人体実験をする事は禁止されていたんです。

 だからこそ今まで無事に……そりゃあ、血液や毛髪、切った爪なんかちょこっと提供とかしましたが、なんとか平穏に生きてこれたのに!


 「今まで役に立たないお前をこの国に置いていてやったんだ。少しくらい役に立て」

 「び、微力ながら魔道の研究でお役に立てていたはずです」

 「お前の変わりはいくらでもいる」

 国王にそんな事ありません!と声を大きくしていえないところがつらいです。

 私はこちらの世界に来て魔法の才能と魔力があることが分かったのですが、その量が微妙。

 魔力の強さを数字で表すと、魔術を使うには最低50の魔力が必要なので1~49までの魔力量の人は実質魔力0と同じなのです。

 そんな中で、この国で殆どの人の魔力量が0~40程度、宮廷魔術師や私がお世話になっている魔術研究所にいる人はだいたい魔力量が70~90。

 そうして、私の魔力は60なのです。

 はいっ微妙!

 一応魔術は使えるけれど弱~い物のみです。

 魔石という魔力のこもった石を使えば魔力の底上げが出来るのですが、それにも限度があるわけで……。

 あ、ちなみに魔力量は生まれつきのもので一生変わらないそうです。


 もっと別の方向から説得しなくてはだめなようです。

 「私がディエテ国へ行ったらこの国の国家機密とか魔道の研究内容とか全部ばらしちゃいますよ!」

 「好きにしろ」

 なんとも冷たい国王様のお言葉です。

 う~、どうせ下っ端研究員の私なんて、そんなたいそうな情報はもってないと思っていますね。

 これでもいろいろな情報を私は持っているんですよ!

 えーっとえーっと、宰相が研究所で毛生え薬を優先的に研究させているとか、とある大臣が飼っている猫型魔獣のおもちゃ(マタタビ効果付属)をこっそり研究所で作らせたとか。

 うーん、機密としてはいまいちですね。

 えっとえっと、ほかには……えーっと、今は思い出せないですが、きっとすごい情報を私はもっているはずなのです。


 たぶん。



 「……せめて、今している研究がもうすぐ何とか物になりそうなので、それが終わってからでいいですか?」

 「イチカ様、すみませんがわれわれは今日中にこの国を立つ予定なのです。今からすぐ荷物を纏めてはいただけませんか?」

 「そんな!」


 妥協案として、もう直ぐ結果が出そうな研究を終わらせたかったのですが、私の願いはばっさりと切り捨てられてしまいました。

 ところで、見た事のない身なりの良いおじ様、たぶんディエテ国の方ですね。この方のおっしゃったイチカとは私の名前です漢字で書くと一華と書くのです。


 そんなこんなで、私は荷物を纏め、職場の仲間に本当に簡単に挨拶をし、 あっという間にジェーシャチ国からその日のうちに旅立ったのでした。


 うう、展開が速すぎます。


 そういえば、今まで数回しかあった事のなかった魔術師長が顔面蒼白になっていたのだけれど、体調でも悪かったのでしょうか?

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