召喚されたのです
私が生まれてからずっと住んでいた国日本からこのジェーシャチ国に召喚されたのは今から5年前、私が20歳の時でした。
その時私は行きつけの手芸屋の特売セールで大量に手に入れたお宝を持ってうきうきと家へ帰るための電車を待っていたのです。
私はちまちまっとしたアクセサリーや小物を作るのが好きなので、その日の買い物袋の中にはビーズやトンボ玉にレースにくるみボタン、アンティーク調の端切れやアクセサリー用のパーツなどがぎっちりと詰まっていました。
駅のホームの人の気配がふっと消えたかと思うと消えたかと思うと、次の瞬間に私は広いホールの真ん中におり、私の周り半径3メートルほど離れてたくさんの人がぐるりと私を囲んでいたのです。
実はその日は当時王太子であったツェーン様の27歳の誕生日で、その祝いの一環として異世界の物を召喚したそうなのです。
異世界の「物」。そう、「者」ではなく「物」。
召喚はツェーン様への貢物として異世界の何か珍しい物を呼んだ筈だったのですが、なぜか私「人」が召喚されてしまったのです。
後から聞いた話だと、今までにないすごいものを召喚しようと宮廷魔術師長が召喚のための陣に無駄にアレンジを加えたため、私が呼ばれてしまったようです。
何が起こっているのかわからず、パニックになっている私の手から宮廷魔術師が買い物袋を取り上げ、その中身がツェーン様へと渡されました。
中身の物にツェーン様は大変満足されたようで、すぐに私の事は眼中になくなったのでした。
もし私が人目を引くような美女だったならツェーン様の目に留まりその後の待遇も変わったのでしょうが、私は所詮平凡な一般人。
ツェーン様に荷物をとられた私は不要のものとされ、その後路頭に迷いそうになったのですが、いろいろあってなんとか王宮の魔術研究機関に拾ってもらい、その後ちょっとした特技が発覚してこの五年間なんとか無事にすごしてきたのですが……。
私は5年ぶりにツェーン様と対面しています。
まあ、5年前は対面とはいえないほど遠~くにツェーンの姿を見ただけですけれどね。
ツェーンは今年から王位を譲られ現国王にとなられました。
先ほどまで私は、研究室でとある魔術の研究をしていたのですが、何だかよく分からないうちに騎士様に連れられて、ぺいっと国王の前に出されたのです。
この場には国王となにやら身分のよさそうなおじ様やおじい様達が数人いらっしゃいました。
研究のためあちこち染みのついたローブを着ている私は、なんとも場違いです。
そうして、私はとても驚く内容を聞かされました。