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異世界チート魔術師(マジシャン) 作者:内田健

第一章:普通だと思ってたら異世界ではチートでした。

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異世界に来ました2

魔物と魔法初登場!
 ざり、と前足が地面を掻く。踏ん張る場所を作っているかのような動作。
 濃い紫の毛並みはつやつやと太陽の光を反射している。
 彼我の距離は凡そ一〇メートル。まだ多少距離はある。
 逃げるしかない―――
 頭でそう分かっていても、身体が一切言う事をきかない。

「何だ、ありゃ……」
「私に聞くな」
「もしかして、結構ヤバげ?」
「いや……もしかしないでしょ、コレは」

 相手からの明らかな害意というものに、太一も奏も今まで触れることなく生きてきた。
 今向けられているのは、殺気。捕食者が獲物を狙う目。とでも言えばいいのだろうか。
 例えるなら、小型のバス程もある巨大な生き物が、鋭い牙を剥いて剣呑な空気を向けてきている。
 そう考えれば、その恐ろしさは少しは伝わるだろう。

 ぶるるる―――そんな粗い鼻息が、二人の耳朶を強烈に叩く。

 こんな巨大な生き物が、ここまで近づくのに一切気付かないとは。この見晴らしのいい草原で、一体どれだけ注意散漫だったのだろうか。
 地球で似たような場所を探すとすれば、アフリカのサバンナが筆頭だ。あそこに生息するライオンやハイエナ、ジャッカルなどの肉食動物の名前は、動物に別段詳しくなくても聞いた事くらいはあるだろう。そして、それがどれほど危険なのかも、体験はしていなくとも知識としては知っていた。
 まして、ここは地球じゃない。そういう仮定を否定できなかったはずではないのか。
 このような危機が発生する可能性を、考えてしかるべきではなかったのか。
 太一は、全く周りが見えていなかったことに舌打ちする。
 どう考えてもこれはまずい。
 生き延びるビジョンが一切見えてこない。
 姿は馬。太一が知る限り、馬は人間とは比べ物にならないほどの長距離を、世界最速の人間の倍に達する速さで走る事が出来る。彼らと張り合うなら最低でも原付バイク。この状況で逃げ切るならオフロードバイクや四駆のSUVが欲しい。どう考えても、徒歩で競っていい相手ではない。
 太一と奏が知る馬よりも明らかに巨大だが、それでも彼らよりは確実に速いだろう。いや、この状況では自分達の常識に囚われるべきではない。
 ちらりと横の奏を見る。
 最悪、彼女だけでも逃がそうか―――
 出た結論は、自分が囮になるという事。
 奏を見知らぬ世界に放り出すことになる。
 もしかしたら、ここで死んでしまったほうが楽なのかもしれない。
 それでも、この親友を死んでも生かす、という気持ちに変わりは無い。
 生きてさえいれば、きっと何か救いはあるはずだ。奏は強い。見る限り、今まで出会ってきた女友達の誰よりも。きっと彼女なら、こんな訳の分からない世界でも生き延びてくれるだろう。そして、彼女だけでも、地球に戻れればいい。
 そのためにも、まずは時間を稼がなければ。一呑みで終わり、なんてことは無いだろう。太一を捕食している間を使えば、奏は逃げられるはずだ。願わくば、ゆっくり喰ってくれれば。
 そこまで考えて、今更ながら身震いした。
 踊り食いした事はあるが、される立場になるとは考えていなかった。どのような苦痛が待っているのか、想像すら出来ない。
 そのまま、にらみ合うこと数瞬。
 太一と奏は動けない。
 紫の馬は動かない。
 そんなこう着状態の中、太一にははっきりと見えた。馬が両足をぐっと畳み、身体中に力を込めるその瞬間を。

 ダウッ!

 地面を蹴っただけとは思えないほどの音と共に、馬が一気にトップスピードとなって迫ってきた。
 速い。ただの馬とは思えない。

「くそっ!」

 太一の行動は、考えてのものじゃなかった。

「うらあああああっ!!」

 横で硬直している奏に抱きつき、全ての力を足に込めて思いっきり跳んだ。
 奏の色々やわらかいところが太一に密着し、太一の左手は彼女のお尻を思いっきり掴んでいるのだが、この際それを痴漢と責めるのは筋違いだ。当の太一も、そんな感触を楽しむ気持ちは一切無い。
 間一髪で飛びのいた場所を馬が高速で駆け抜ける。その余波を受けて、太一と奏は三メートル程転がった。
 下が地面で助かった。これがアスファルトだったら……いや、考えるのは止めた。
 二〇メートル程走っていって止まった馬が、ゆっくりとこちらに向き直ったからだ。

「た……太一……」

 驚きに染まった顔で太一を見上げる奏。震えてはいないようだ。突然の出来事に驚いた、というのが正しいか。

「第一回は凌いだか……さぁて、次はどうするかなぁ?」

 余裕ぶってみたものの。
 打開策などあろうはずがない。ショットガンでもあれば少しは違ったかもしれないが、あんなもの触った事も無いし、ましてや射撃の知識も腕も無い。せいぜいエアーガンでサバイバルゴッコが関の山だ。例え都合よくショットガンを持っていたとして、銃火器の実射経験など持っていない太一に、まともに扱える自信は無い。
 馬がゆっくりと近付いて来る。
 あれだけ隙だらけな歩き方なのに、太一も奏も動く事が出来ない。
 あの馬がどれ程の速度で走れるかを、たった今身をもって知ったばかりなのだ。
 こちらが背を向けて走り出した瞬間に、あの馬も一気にスピードを上げるだろう。自殺行為に等しいとしか思えず、逃げたいのに逃げれない。
 もちろん、ここでただ馬と睨みあっていても事態の好転などありえない。
 ただ死の瞬間を先延ばしにしているだけだ。
 先ほどと同じ程度まで近づいてきた馬が、そこで歩みを止めた。じっと二人を見据える目は、先ほどのように殺気に染まっているばかりではない。
 太一と奏には想像もつかない事だが、馬が抱いているのは嗜虐心。弱いものを虐げて愉悦に浸る、あまり趣味の良いとはいえない感情だ。
 そんな事とは露ほども思い至らない太一たちにとっては、ただ恐怖を上塗りされる地獄の時間が続く。
 ややあって。
 太一は、己の考えを奏に伝えた。

「俺が囮になる。奏はその隙に逃げろ」
「え? ダメよ。何言ってんの、死んじゃうじゃない」
「分かってるんなことは。でもこのままじゃ二人とも死んじまうだろ」
「それは……でもダメよ。囮なら私がやる。太一が逃げて」
「それこそダメだっての。お前、ちょっとは男に華持たせろよ」
「嫌」
「いやって子供じゃねえんだから。じゃあどうすんだよ」
「嫌よ!」

 思いのほか強い否定の言葉に、太一は思わず目を見開いて、馬から視線を外した。
 奏が、顔を真っ赤にして怒りに顔を染めていた。
 怒りを視線と表情で訴えるものの……打開策を口に出来るわけでもない。
 ただ精一杯、自分の気持ちを太一に伝える。奏に出来るのはそれだけだ。

「……もう、それしかないんだよ」

 分かっている。そんな事は。
 どちらかが囮になることで、二人とも死ぬしかない状況から、どちらかは生き残る可能性が出てくるのだから。
 お互いに譲れない視線が交錯する中。
 ドン、と地面を強く叩く音が、二人の意識をかき乱した。
 思わぬ放置プレイを喰らっていた馬が、自分に意識を向けさせるため、大地を叩いたのだ。
 どうやらイライラしているらしく、鼻息が荒くなっている。
 決断するなら、ここしかない。

「じゃあな、奏」
「あっ」

 未だへたり込んでいる親友の頭をぽふぽふと撫でてから、太一は馬に向かって駆け出した。

「こらあ悪趣味な馬野郎! これでも……喰らえっ!!」

 走る途中で見つけた石を素早く拾い上げ、その助走でもって思い切り投げつけた。
 全力で放った石。元来の運動神経とそのセンスのよさで、野球未経験者にしては見事と言うしかない速度とコントロールで石が飛ぶ。
 ガツ、と鈍い音を立てて、石が馬の首元に当たった。
 ストライク。
 この状況で、我ながら見事だ、と褒めずにはいられない成果だ。
 しかし。当然というかなんというか、一切効いた様子は無い。
 ちょっとは効いてくれてもいいじゃないか、とごちる。それでも、馬の意識を太一一人に出来たのは狙う最低限の成果。それを達成できただけでもよしとするべきなのだろう。
 馬の鋭い目が一直線に太一を睨む。もう五メートルと離れていない。今更ながらに、凄まじいプレッシャーを感じる。
 この期に及んで膝が笑っている。
 何だかんだ怖いのは嫌だし、死ぬのはもっと嫌だ。
 それは偽りの無い本音である。
 しかし同時に後悔も無い。
 こうする事で、奏が助かるかもしれない。
 その可能性に至った瞬間、ずっと考えていたのだ。
 後はこいつが、太一をゆっくり味わえばいいだけの話。これ以上は太一の及ぶところでなく、運の要素もかかってくる。
 もう犀は投げられた。
 後は野となれ山となれ、の心構えで、太一はやけっぱちになって叫ぶ。

「オラどうしたクソ馬! とっとと来いよ! その図体は飾りか!?」

 人間の言葉を理解するとは思わない。
 しかし、言葉のニュアンスからバカにされている事位は理解する知能を持っているのだろう。
 腹立たしげにいなないた馬の眼光が一際鋭くなった。
 命を賭けて挑んだ『生』への執着。
 それが自分のものではなく、大切な親友を想っての行動が幸いしたのか。
 天は、太一と奏を見捨てはしなかった。

 ゴバッ!!

 轟音と共に襲った強烈な突風に、馬がたたらを踏んだ。
 太一は抗う事すら出来ずに地面を転がる。
 勢力の強い台風の突風が、巨大なトラックを横倒しになぎ払う事故を引き起こすのを太一も知っている。今それに等しい風が馬を襲ったのだ。
 そんな強力な風にちっぽけな人間では抵抗など出来るはずも無く、ごろごろと数メートル転がって太一は止まった。

「え……?」

 その風が吹いてきたほうを見る。遥か数十メートル離れたところに、三人の人影。そして、そこから一人が猛烈な速さでこちらに迫ってきていた。

「ごらあ! 見つけたぞ馬野郎!!」

 腹の底に響く怒声と共に迫ってきたのは、身長二メートルはあるかという大柄な男。
 全身を覆う筋肉の鎧と、禿げ上がった頭がこれでもかという位の威圧感を放っている。
 一〇秒もかからずに馬の元に辿り着いた大男が、両手で上段に構える巨大な剣を一気に振り下ろす。馬が一歩飛びのくと同時、地面が土を巻き上げて吹き飛んだ。

「急に逃げ出したと思ったら、今度は旅人を襲ってるだあ!? どんだけ節操ねぇんだてめえは!!」

 その場に立ったまま、少し離れた場所に立つ馬に向けて剣を振り上げる。その距離では切っ先を精一杯伸ばしても三メートル程届かない。斬撃そのものは目で捉えるのも難しいほどに速く力強いが、無駄ではないか……。
 と思ったが、そうでも無かったらしい。剣閃をなぞるように放たれたのは、風圧。馬の右胴が切り裂かれ、血飛沫が舞う。
 太一の常識を遥かに超越した場所で行われるありえないやり取り。
 驚きすぎてマヌケ面になってしまっているが、本人は気付かない。
 大男が再び馬に飛び掛ったところで、ハッとする。大男が太一をちらりと見て、そして視線を更に右に向けた。その視線を追えば、同じく呆然とへたり込んでいる奏の姿。
 剣を振るだけでカマイタチのような現象を引き起こせる大男と、小型のバスのような巨大な馬の化け物。
 あんなのの闘いに巻き込まれたらひとたまりも無い。思いもよらぬ闖入者に命を救われた太一は、自分の命と引き換えに助けようとした奏の元に近寄る。

「奏っ!」
「太一!」

 素早く奏に駆け寄り、その手を引いて立ち上がらせる。そして、二人で大男と化け物馬を見た。
 人間離れしたパワーとスピードで、人外の戦いを繰り広げている。見る限り、大男が若干押しているようにも見える。パワーそのものは馬のほうが強いのだろうが、その巨大な身体が災いしている。大男からすれば、でたらめに剣を振っても射程圏内なら当たるような状況だ。事実、致命傷こそ無いものの、馬の身体あちこちから出血しているのが見て取れる。

「誰なの?」
「知らねえよ。でもラッキーだ。離れるぞ、巻き込まれたらヤバい」

 返事の代わりに頷いて、太一と奏は走り出す。
 その先にはいつの間にいたのか、弓に矢を携えた青年が立っていた。あの大男に比べればひょろい印象を受ける。しかしそれは柔和な顔立ちと温厚そうな表情がそうさせているのだろう。鍛えられた腕を見れば、彼がここに酔狂でいるのではないと教えている。

「良かった、間に合ったね。もう大丈夫だよ」
「あん……貴方は?」

 思わず警戒してぶしつけな言葉を使おうとしてしまったが、何とかギリギリで訂正する太一。それを見て、青年は気を悪くした様子も無く、むしろ安堵したように頬を緩めた。
 彼にこちらを害す気はなさそうだ。でなければ、矢の先は馬ではなく太一たちを狙っているはずだ。
 何より彼は、あの大男と共にいた三人組のうちの一人なのだから。
 そんな考えは蜂蜜にガムシロップをミックスして砂糖を振りかけるが如く甘いものだが、今の太一と奏にはそれを知る由は無い。

「僕はあそこの筋肉だるまの仲間さ。信じて、というのも酷だろうけど、君たちをどうにかするつもりはないよ」
「誰が筋肉だるまだこの優男! 聞こえてねぇとでも思ってんのか!?」

 青年の思いもよらぬ毒舌と、これだけ距離が開いていて、尚普通の会話を聞き止める大男の聴覚に、太一も奏も驚いた。
 愉快げに青年は笑って、弓を引き絞った。

「聞こえるように言ったんだよ。 右八!」
「後で覚えてろ! 任せた!」

 詰りながら会話とは器用だな、と思う太一たちの気持ちなど露知らず。青年は少しだけ狙いを定めなおし、矢を放った。
 ひう、と空気を裂く音と共に、鏃が銀糸となって空中に線を描く。
 矢が放たれてから数えて丁度八秒。矢が、馬の右後ろ足を貫いた。
 馬のいななきが、聞いた事も無い悲鳴となった。
 途端に遅くなる馬の動き。隙有りとばかりに大男が剣を何度もたたきつける。刃が何度も当たっているのだが、あの毛皮は思った以上に防御力が高いらしく、打撃攻撃になってしまっている。

「やっぱり堅いな黒曜馬は。ミスリルの矢を使って正解だったね」
「こくようば?」

 ああ、と青年が頷いた。

「あの化け馬の名前だよ。この近辺では最も凶暴な魔物なんだ。馬のクセに肉食だしね」

 あの矢高かったから後で回収しないと―――とごちる青年。どうやら彼にとって……いや、この世界の人々にとっては、それは常識らしい。
 しかし。
 太一と奏にとっては、聞き流してはならない単語が聞こえたのは気のせいではない。気のせいだと思いたいというのが本音ではあるのだが。
 彼は確かに「魔物」と言った。
 ゲームや漫画の世界でなら聞きなれた単語。空想の世界に存在する、主人公や物語の世界の人々を虐げる存在。そして時折、人と心を交わして仲良くもなったりする存在。
 総じて人間を遥かに上回る身体能力を持ち、高位になれば様々な術を駆使して主人公を苦しめる典型的な障害となる存在だ。

「でも、もう終わりだよ。ほら」

 青年の言葉で我に返る。彼の視線は、馬の化け物ではなく―――黒いローブをまとい、杖を掲げている少女へ向いていた。
 彼女はそこでなにやら口を小さく動かし続けている。
 そして、太一と奏は、自分たちがビックリ箱の中に放り込まれたのだと、今更ながらに思い知った。
 少女が杖を天に突き上げると、その先に生まれたのは火の玉。少女の身体ほどもある大きな火の玉はやがて五つに分裂し、そのオレンジ色の輝きを鮮やかに瞬かせている。

「何……あれ……」

 奏がやっとの思いで声を振り絞る。
 それに対し、青年が不思議そうな顔をした。

「え? 何って魔術だよ。……ああそうか。彼女ほどの魔術師には早々出会えるものでもないからね」

 いや、そういう事ではない。
 二の句が告げずに唖然とする。
 魔物に魔術。
 自分達が置かれている状況があまりといえばあまりな事に、もう言葉も無い。
 ファンタジーな世界にいるという事実を受け入れきれていない太一と奏のリアクションを、初めて見た強力な魔術に驚いているのだと勘違いした青年が、解説をしてくれた。

「彼女はこの地域では五本の指に入る実力派の魔術師だよ。あ、そうそう。彼女に向かって小さいとかそういう言葉は厳禁だよ。あれでも二五歳だからね」

 どうみても小学生にしか見えない。が、もう驚かない。
 これまでに突きつけられた事実が想定外過ぎて、見た目と年齢が合致しない、という程度は些細にしか思えなかったからだ。

「……聞こえてる」
「聞こえるように言ったからね」

 可憐な声と共にキッと少女……もとい女性が青年を睨むが、彼は肩を竦めてニコニコと受け流すばかりだ。

「黒曜馬の後は……貴方を焼く。こんがり」
「僕を焼いても美味しくないよ。それにホラ。彼らを巻き込んじゃうよ?」
「……ずるい」
「いいから仕事してね」

 もう一度青年を睨むと、少女は視線を黒曜馬に戻した。その視線は驚くほど冷徹で、太一と奏はごくりと唾を飲んだ。

『フレイムランス!!』

 反響する声と共に、五つの火の玉が槍へと姿を変えた。少女の声を聞いて、大男が思いっきり後ろに跳ぶ。
 炎の槍は先ほどの矢に近い速さで飛び……ミスリルの矢で機動力を大幅に削られ、大男の攻撃で体力も奪われていた黒曜馬には避ける術も無かった。
 炎の槍は五本とも見事に化け馬の胴に突き刺さり、そして轟音と共に爆発した。
 熱をともなった突風が、周囲の草を焼きながら太一と奏を襲った。あまりの威力に唖然とする二人。爆発の余波だけで並の人間なら火傷で死んでしまう。が、そうはならなかった。
 青年がどこからか取り出した布で彼らを素早く包むと、その中では驚くほどに熱を感じない。周囲の草を焼くほどの熱なのに、何故なのか。
 少し考えて、これは魔法の道具ではないかと思い至る。RPGゲームでも、炎のダメージ軽減や、最高級品では炎のダメージを吸収などの効果がある装備品があった。魔法や魔物がいるこの世界ならば、そんな道具があっても特に不思議ではない。
 布をはためかせていた風が収束し、青年が布を取り払った。そこには、消し炭となった化け馬の遺骸と、それを中心に焦げた大地。
 太一と奏、後ろの青年を中心にそこだけ残った草から、どれほどの威力だったのかは推して知るべしだ。
 炎を防ぐ布に包まれていたのは太一と奏の二人だけだったから、青年はあの熱風をまともに受けたはずだ。それなのに汗ひとつ掻かずに平然としている青年が、ニコニコと笑みを湛えているのが、とても印象的だった。
太一君と奏ちゃんを助けた冒険者パーティは、この世界ではもう少しで一流と呼ばれるような凄腕です。
ここまで辿り着ける冒険者は一握り。
しかし、太一君と奏ちゃんはそれを軽く超えていく予定です。
チートとは恐ろしい。。。

○黒曜馬
体長4m。体高3メートル半。体重2トン。
全力疾走での最高時速は140km/h。その突進は岩をも砕く。
非常に高い身体能力を持つが、物理攻撃しか手段が無い。
+注意+
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