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異世界チート魔術師(マジシャン) 作者:内田健

第二章:元高校生は冒険者として生活してます。

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急変

今回、太一たちの活躍は少ないです。
次の話以降で。


アレンさんのお名前お借りしました(事後承諾

名前考えるの大変なんです……(笑)
 レミーアを連れて宿屋ミスリルに戻る。
 その時のアルメダのリアクションは凄まじかった。

「まさか、レミーア様!?」

 と、何と様付けで彼女を呼んだのである。
 一体何事だとレミーアを見てみれば、彼女は居心地悪そうに後頭部を掻いていた。どうやらこういう扱いは嫌いらしい。
 ミューラとレミーアを同室に、奏と太一をそれぞれ個室で部屋を取り直し、四人は夕食を摂って床についた。
 そして翌朝。
 場所は違うが、久しぶりに揃った四人で食卓を囲む。
 メニューはパンと目玉焼きとハム。サラダと琥珀色のスープ。
 食事は至って平凡なのに、作る人の腕がいいのだろう。ミスリルの食事に不満を覚えた事は一度も無い。料理上手なレミーアも満足の一品ばかりだった。
 スープが入ったカップを手に取り、少し。さらりとした感触の熱い液体が喉をすり抜けていく。薄いはずなのに満足感がある味のスープをコースター代わりのお皿において、太一はレミーアへ目を向けた。

「レミーアさんに『落葉の魔術師』なんて二つ名があったのは知らなかったなあ」
「もう止めろと言っているだろう……」

 力なくため息をつくレミーア。
 この世界で二つ名がつくのはそう容易い事ではない。
 たった一人で一〇〇〇人からなる敵兵を屠った騎士には『一騎当千』と正しくな二つ名がつけられたり。
 艱難辛苦を乗り越え、一貴族にも匹敵する財宝を探し当てた冒険者には『トレジャーハンター』なる二つ名が。
 例を挙げればそんな感じである。
 それ以外にも様々な人物が二つ名を冠せられているが、その全員に共通して言えるのは、一人では常識的に不可能な事を成し遂げている事だ。
 因みにレミーアの場合、一枚の葉が枝から離れ、地面に落ちる前に、一〇〇もの魔物を凄まじい速度で範囲魔術を連射して、一瞬で葬り去ったことからついた二つ名だ。
 それによって、アズパイアとユーラフ両方を一瞬で救ったのだという。
 既に三〇年も前の事だというが、アルメダが心酔した様子で様付けするのも何となく納得である。
 その行為に至った理由も聞いた。
 気に食わない貴族と、売り言葉に買い言葉で乗ったギャンブルに大負けして、自分が開発した魔術を持っていかれたのだという。集まっている魔物の群れを見つけ、これ幸いと持ちうる魔力を総動員して魔術をぶっ放した。討伐に訪れた冒険者チームが結構な数いたのだが、彼らの出番を一瞬で奪ってしまった。レミーアのあまりの鬼神っぷりに何もいう事が出来ず、むしろ戦わずに済んだイコール命を落とさずに済んだということで、感謝されてしまったらしい。本人は八つ当たりだっただけに、すこぶる居心地が悪かったと当時を振り返った。
 ムシャクシャしてやった。相手は誰でも良かった。今は後悔している。
 どこかの犯人の供述のようなレミーアの告白は、とてもではないがアズパイアとユーラフの住人には聞かせられないと、太一たちは思ったのだった。

「私の事はどうでもいい。それよりも、北の森の方が今は大事だろう」
「レミーアさんの過去も気になるけどなー。俺達そういえば、二人の事殆ど知らないし」

 太一の言葉に同意した奏が二回頷く。
 二人の今は知っているが、二人の昔は聞いた事が無かった。共に行動しているのだから、知りたいと思ってしまうのも当然の心理だろう。

「それを言うなら、あたしとレミーアさんも、タイチとカナデの事は殆ど知らないわ」

 確かにそうだ。二人の事を聞いたことが無かったが、自分達の事も話したことは無かった。せいぜい日本がどういうところか、どういう文化か。その程度である。

「じゃあ、その辺の情報交換と行こうか」
「それも良いな。但し、私の家にさせてもらおう。ここで色々話すのはお前達としても良くないだろう?」

 言われて気付く。そういえば、異世界人である事は隠しているのだ。
 冒険者としての生活に慣れてきているのは、実感としてあった。その中では、日本の事を思い出す事はそう多くはない。必要な要素は戦闘力だけではない。他の事に気をとられながらこなせるほど、ぬるい仕事ではない。

「うーん。仕方ないか。今回はそれで手を打とう」
「何を偉そうに」

 レミーアの言葉に、四人で笑った。
 和やかな団欒。
 それが続くのは今日の午後まで。
 事態の急変は、すぐそこまで差し迫っていたのだった。





◇◇◇◇◇





 同日早朝、北の森の偵察及び討伐冒険者部隊で後方支援に回っているアレンは、北の森近くの岩場に設えられた陣営で、夜営の片づけを行っていた。
 Eランク冒険者に上がって二ヶ月。まだまだひよっこである彼に、北の森の偵察部隊への編入は許されない。
 後方支援も大切だと自分に言い聞かせ、目の前の皿をもくもくと洗っていく。
 ここに残っているのは当然アレンだけではない。他にもDランク冒険者等が率先して後方支援に回ったりもしている。三〇人からなる大所帯。七人ずつの偵察部隊三つと、後方支援の冒険者九人。Eランクだけでないのも当然だ。意図としては「ひよっこが覚えるのは何も戦闘だけじゃない」というものがある。

「よし……後少し」

 積み上がった皿を見て、腕で汗を拭った。
 食器を洗うのに、貴重な飲み水を使うわけにはいかない。陣営から一五分ほど歩いたところにある小川で洗い物。
 アレンは不思議に思う。何故こんな事をしているのだろう。どうして自分は、北の森を歩けていないのか。
 脳裏をよぎるのは、少年と少女二人の冒険者チーム。少年のほうは黒い髪が珍しいこと以外は至って普通。一方、彼とチームを組む二人の少女は飛び切りの美人だ。一人は少年と同じ黒い髪を後ろで束ねた少女。もう一人は、金の剣士と呼ばれるエルフの少女。
 受付でギルド職員と話している隣の席に座っていたときは、心臓が跳ね上がった。ちらちらと盗み聞いて、金の剣士の名前がミューラである事を知った。ギルド職員からの話が飛び飛びになってしまい、依頼中に酷い目に遭う程度には、隣の席に注意を払っていた。
 彼女の事を思い出すと、途端に頭が茹だる。
 話した事など無い。今年で一七歳になるアレンは女性と話すのが苦手だ。ギルド職員でさえ、わざわざ男性のところが空いたのを見計らっていくくらいだ。恋愛経験は勿論無いし、女性経験も当然無い。
 いつも、遠巻きに見ているだけ。
 そういえばここ数日、彼女を見ていないなあ。また見たいなあ。
 アレンが思えるのはその位だ。ミューラの姿を見れるだけで、今は満足だ。「もしもあの子と恋人同士だったら」という幸せな想像すら、彼はする事が無い。
 ミューラたちがたったの一ヶ月でCランク冒険者になった事。あのバラダーチームと仲良さそうに話していた事。それらを思い出すたびに、自分の小さな恋心にすら躊躇してしまう。
 Eランクになってからの、アレンの依頼達成率はおよそ三〇パーセント。未だにDランクに上がれる兆しすら見えない。
 自分がこなしている依頼と、その出来を考えるたびに実感するのは、ミューラたちの凄まじさだ。圧倒的な力量差だ。彼らからすれば、その辺の有象無象に変わらないのだろうな。アレンはそう思っている。隣のテーブルになっても、すれ違っても。自分は彼女達の事を覚えていても、彼女達は自分の事など覚えていない。
 それが現実だ。彼女達とは、生きている世界が違う。立つ舞台が、違うのだ。
 はあ、とため息一つ。
 最後の皿を洗い終え、重ねた山の一番上に置いた。
 うじうじと考えていて何かが好転するわけでもない。アレンのやる事はまだたくさんあるのだ。
 そう思って皿を抱えて、仲間が待つ陣営に戻る。
 皿を落とさないように気を使って歩く事一五分。陣営は、騒然としていた。

「戻りましたー」

 手近な台に皿を置いて、アレンは仲間が集まっているところに駆け寄った。

「おおアレン! やっと戻ってきやがったか! 呼びに行こうかと思ってたんだ!」
「何があったんですか?」

 アレンに気付いた先輩冒険者が、アレンの肩を掴む。
 そして。

「今から街に早馬を飛ばせ!!」

 切羽詰った表情でそう怒鳴った。
 事態が飲み込めずに呆然とするアレン。しかし、彼らはそんなアレンの尻を引っぱたく。

「魔物の大群が、街に向かって来てる!」
「四桁はいる! いるはずがないオークもいやがるんだ!」
「この中で一番馬が速いのはアレン、お前だ! 速く準備しろ!」

 矢継ぎ早に言われる言葉に、アレンの頭が真っ白になる。
 魔物四桁?
 何だその非常識な数値は。最早戦争のレベルである。それにオーク? 聞いたことの無い魔物の名前まで飛び出してきた。
 昨日までは何も無かった。フェンウルフは相変わらず多かったが、それ位である。
 それが何故急に、今日になって。
 アレンの頬を、冒険者の一人が叩く。
 ぼんやりとしていた思考が、急にクリアになった。

「ぼやっとしてんじゃねえ! もう時間がねぇんだ! 早くしろ!!」

 そうだ。ぼけている場合じゃない。
 自分出来ることをやる。そう決めて偵察隊の後方支援に志願したのだ。
 だがその前に。どうしても聞かなければならないことが、アレンにはあった。

「皆は!? 皆はどうするんだ!?」

 敬意から常に丁寧な言葉を使っていたアレンだが、やる事が明確になって焦りが出て、その辺の意識がすっ飛んだのだ。
 アレンの乱暴な問いかけに対して、冒険者達は、頼もしく笑った。

「俺たちが時間を稼ぐ。お前が街に辿り着けなけりゃ、街の連中も皆まとめてお陀仏だからな」

 アレンは言葉が紡げなかった。
 全てを、分かっていたかのような口調だった。

「お前が偵察隊に志願してきたときは断ろうかと思ってたんだが、断らなくて良かったぜ」
「後は任せろ。お前は自分の出来る事を精一杯やれ。一人前の冒険者になりてぇんだろう?」

 視界が滲んだ。
 何だ。自分の目はおかしくなったのか。さっきまで、正常に物が見えていたじゃないか。

「早く行け!」
「一人前の冒険者ってのはなあ!」
「どんな事があろうと!」
「テメェの仕事をまっとうするヤツの事を言うんだ!」

 アレンは馬に飛び乗り、鞭打って走り出す。
 彼らは分かっていたのだ。
 偵察隊としての活動期間内にもしもの事が起きたら、命を賭けて食い止める先駆けとなる事を。
 自分の命を、アズパイア存続の為に、使い切る事を。
 偵察隊の冒険者達は、森の中で奮闘したのだろう。例えそれだけでは事態が好転しないと分かっていても。
 強い風が頬を叩いた。
 もっと速く。もっとがんばれ。
 走りながら馬の首を撫でる。実家が馬車便で生計を立てているため、Eランクながら馬の扱いについては冒険者達の間でも一目置かれる存在だったアレン。
 できることは、馬を誰よりも上手く操る事。
 一秒でも早く、街に辿り着く事。
 だから、背後から僅かに響く爆発の音や、魔物の悲鳴は聞こえない。
 こちらに追いついてきた魔物など、振り切って当然だ。
 その魔物が小さな矢を放ってきた。関係ない。ヤツの特徴は一瞬の速さのようだ。いくら瞬発力に優れていようと、馬の持久力には敵わないはずだ。
 アレンは、馬の持久力を上げる強化魔術を使う事が出来る。アレンの家族は誰もが使える魔術。今までは「何の役に……」とバカにしていた魔術だったが、ここに来て感謝した。
 矢を撃ってくる魔物は、追撃を諦めたようだ。振り返ると、ぐんぐんと距離が離れていく。やがてその小さな影は、踵を返して戦場に戻っていった。
 何もかもが些細な事だ。
 肩に刺さった矢など、痛くは無い。
 アレンは馬を走らせる。
 大分遠くだが小さく見えてきた、アズパイアの街を目指して。





◇◇◇◇◇





 呼び出されて行ってみれば、たくさんの冒険者がギルド前にに集まっていた。
 太一たちの後からも冒険者が集まってきているが、全員ではなかったのだろう、まだまだ続々と人が入ってくる。太一たちは端っこのほうに場所を確保した。真ん中の方はぎゅうぎゅう詰めで、とてもではないがいられたものではない。
 ただでさえゴツくて暑苦しい冒険者たちだ。細かい事は気にしない彼らと対照的に、太一たちと同じような考えを持つ冒険者も確かにいた。
 主に女性冒険者たち。ふと、彼女らと目が合う。同じ考えである事を視線で確認して、苦笑いを浮かべた。
 それにしても凄い数である。少なく見積もっても一〇〇人以上はいるのではないか。
 ジェラードは、他の街からも冒険者を呼び寄せたと言った。アズパイアの冒険者だけでは、増え続けるフェンウルフにとてもではないが対応が出来なかったのだ。近所のありとあらゆる街に馬車を出し、高い報酬を出して冒険者達を誘致する。アズパイアの危機でもあるため、行政からも大分支援金は出ているという。街の経済状況は、今回のことでかなり悪くなったとジェラードはごちていた。
 太一は冒険者で埋め尽くされたギルドを見渡してみる。北の森の魔物大量発生事件前からアズパイアにいた冒険者もちらほら。彼らの中には、太一を見て手を上げる者もいた。そんな気さくな冒険者に返事を返しながら、再び目を巡らせる。
 ジェラードが言った通り、見たことのない顔もかなり多い。彼らが、別の街から来た冒険者たちだろうか。アズパイアの冒険者全員を見たことがないため、判別はつかない。
 顔は知らずとも、彼等を見ているだけで飽きなかった。鉄の胸当て。背中に背負う槍。湾曲した剣。そのどれもがくすんだり、傷がついたりして年季が入っている。レプリカとはリアルさが違う。
 こうして戦士たちが集うと、改めて思うが、迫力が凄まじかった。何度か新宿や渋谷に足を運んだことがあった。その時、街にたむろするやんちゃなお兄さんにビビったものだが、こうして冒険者を見ていると、彼らを怖がっていた理由が分からない。人を威嚇するような格好とポーズを取るお兄さんたちの前に、冒険者の一人でも連れていったら、多分逃げ出してしまうだろう。鍛え上げられた肉体と鋭い眼光。明らかに荒事慣れした本物だけが持つ余裕。太一とて、魔力強化がなかったらこんなところには近づきたいとすら思わない。
 ぼーっとした頭でそんなことを考えていると。

「命知らずのバカ共。集まってくれて感謝する。ワシはアズパイア冒険者ギルドのギルドマスター、ジェラードだ」

 良く知る声がこちらに届く。何の気なしにそちらに目を向けると、大きな台の上に小さいオッサン……もとい、ジェラードが立っていた。

「耳のいいヤツはもう聞いているだろうが、北の森の偵察をしていた冒険者部隊が、魔物の群れにトランプルされた。早馬の報告によれば、全滅はほぼ確実だということだ」

 ざわざわがやがやと騒がしかったギルドが、今はしんとなっている。

「ワシから伝えてもいいんだが、本人が自分の口でどうしても伝えたいと言うのでな。彼に任せる事にした。アレン。さあ、話せ」

 ジェラードに促され、一人の少年が壇上に立った。見た感じ、太一たちと同い年くらいの印象だ。肩には包帯が巻かれている。うっすらと赤いものが滲んでいることを考えると、傷は相当に深いようだ。
 数百の視線を浴びてなお、彼は臆することなく話始めた。

「北の森を偵察していた冒険者の話を総合すると、魔物の数は少なくても四桁。オークとかいう良く分からない魔物もいる。この傷は、小さい人型の魔物の矢にやられた」

 堂々と、場を制圧する。物凄い胆力。

「俺一人を逃がすために、三〇人いた冒険者たちは全滅した。この街を守るために散った冒険者たちのために、同じ冒険者として頼みたい。彼らの遺志を継いで欲しい」

 忌々しげに自身の怪我を睨む少年。

「情けないけど、この怪我じゃ俺は戦えない。俺の分も、お願いします」

 その言葉を最後に、少年は頭を下げて、黙した。後は全てを、集まった冒険者に委ねて。
 沈黙が支配する。
 吹き付ける風に乗り、空になった缶詰めがカラカラと大地を這う。
 やがて。
 一人が槍の石突きで強く地面を叩いた。

「いいツラしてんじゃねえか、ケツの青いガキがよお! 俺あ乗ってやるぜ!」
「バカか!? 四桁だぞ!?」
「ああ!? タマのついてねえ腰抜けはママのオッパイでも吸ってろよ!」

 ギャアギャアとけたたましい喧嘩に、そこかしこで起こる殴り合い。

「血の気しかねえ大バカどもが……」

 ジェラードが顔に手を当てて呆れている。
 大勢は考えるまでもない。
 魔物の侵攻に、アズパイアが抵抗することが今この瞬間、決まった。
最近牙の旅商人にはまってます。

どうやら、作者が基本的に好きなのはダークな物語のようです。

読んで下さってありがとうございます。
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