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異世界チート魔術師(マジシャン) 作者:内田健

第二章:元高校生は冒険者として生活してます。

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それぞれの気持ち其の一

二話で一セット。

場面切り替わり多いです。
 バラダーたちが泊まるホテルに程近い場所にある酒場。そこでバラダーは、朝っぱらから酒をあおっていた。

「あー。失敗したなあ」

 口を開けばそれである。彼の前に座るラケルタは、お茶を飲みながらバラダーの愚痴を聞いていた。

「仕方無い……私たちも……知らなかった……」

 バラダーの横に座るメヒリャが、ミルクティーを飲みながら言う。彼女のそれは凄まじい白。ミルク入りのティーではなく、ティー入りのミルクである。因みに砂糖もたっぷり。見てるだけで胸焼けしそうな一品だ。

「まさか、タイチ君とカナデちゃん、人が死ぬところを見るのは初めてとは思わなかったね」

 二人にとって、昨日の盗賊殲滅劇はかなりショッキングだったらしい。朝酒場に行こうとして、ミューラとすれ違った。
 太一と奏は? と聞けば、まだ立ち直れていないという。二人には相当に刺激が強かったようだ。
 太一と奏はCランク冒険者。それが、二人の前で殺しを躊躇わなかった理由である。そう易々とCランクになどなれはしない。それを一ヶ月で達成した二人だから、問題ないと思ったのが、バラダーの正直なところだ。
 ラケルタとメヒリャもそれは十分分かっている。二人も同じ考えだったからだ。

「結構ショッキングだったと思うぜあれは」
「確かに」
「……うん」

 今でこそ盗賊程度なら気にせず倒すことができるバラダー。だが、最初からそんな真似が出来たわけではない。実力は勝っても、正当な理由があっても、盗賊に剣を振り下ろせるようになるまでは少なくない時間がかかった。
 力を持たない小さな集落が盗賊たちによって蹂躙された。男は皆殺しにされ、女は慰み者となり、子供は奴隷商人のもとに連れていかれた。後に分かったのは、それをやったのが、バラダーが殺せなかった盗賊たちだったと言うこと。
 打ちひしがれる程の思いを味わい、やっと悪党に手を下す事を躊躇わなくなった。
 あんな思いは二度とゴメンだ。あれで覚悟を決めれたとしてもだ。あれほどの出来事がなければ、太一も奏も難しいだろうか。

「ちきしょう! うじうじしてるのなんざガラじゃねえや!」

 がたりと豪快に音を立て、バラダーは立ち上がる。

「バラダー……どこ、行くの……?」
「ああ。タイチのボーズと色街にな。こーいう時はスカッとヌいちまうのが一番いいんだ!」

 何だか字が違うのは、きっと気のせいではない。

「……下品」

 顔をしかめるメヒリャに、バラダーはガハハと笑った。

「おいラケルタ。お前もたまにゃ付き合うか?」
「いや遠慮しておくよ」
「相変わらず付き合いわりいなあ。いっつも俺だけで行ってるんだぜ?」
「今日はタイチ君も連れてくんでしょ? 一人じゃないよ」
「おお、それもそうだ!」

 じゃあいってくらあ、と手を振って、バラダーは酒場を出ていった。
 残されたラケルタとメヒリャは顔を見合わせる。
 実は、バラダーは見掛けによらず気配り上手である。それであの強さと逞しさ。バラダーはモテるのだ。色々な街に行くが、場所によっては女性から本気でアプローチを掛けられる程だ。
 当人も女性は好きなはずだ。気が向いたらふらりと色街に繰り出す位には。だが、先述の本気でぶつかってくる女性には手を出したことが無いという。
 それは何故なのか。ラケルタはふと目の前の少女……もとい、大人の女に目を向ける。

「まあ……思うようにはいかないか」

 小首を傾げるメヒリャを見て、やはり気づく予兆すら無い、と溜め息をつくラケルタ。
 バラダーも前途多難である。

「さて。僕も行ってくるよ」
「……カナデの……ところね……?」

 ラケルタは頷いた。

「そ。タイチ君だけ慰められるのも不公平だからね」

 メヒリャは笑う。感情が読めないように。

「いってらっしゃい……」

 笑顔のまま、メヒリャはラケルタの背中
を見送ったのだった。





◇◇◇◇◇





「どう? 気分は」

 クーフェを持って、ミューラが部屋に戻ってきた。

「うん。少し良くなった」

 ありがとう、と受け取り、湯気を立てるそれを一口。少し薄めに淹れられたそれは、ブラック派ではない奏にも十分飲めた。

「美味しい」

 ほう、と溜め息をつき、カップを見詰める。
 人を殺すのは必要。宿に戻ってから、改めてミューラに説かれた。冒険者が相手にするのは、盗賊や脱走する犯罪者。或いは奴隷商人などの人に言えない何かがある者。ギルドが主体となって、冒険者の討伐隊が組まれることもあるという。
 因みに、奴隷商人にも真っ当な者ももちろんいる。国に認められた商人で、奴隷相手といえども不当な虐待などをすれば罰せられる。異性に対する立場を利用した性行為の強要など言語道断。食事も一日二回、そこそこのものを食べさせねばならない。そういうコストが掛かる分、奴隷の値段も高い。しかしその対価を支払って釣りが来るほどに質がいい。隠れて営業しているモグリの奴隷商人が売る奴隷とは雲泥の差である。またモグリの奴隷商人から奴隷を買うと、それだけで犯罪である。
 話を戻すと、Cランクなら、ギルドも積極的に選んでくると聞いた。盗賊ごときには負けない戦闘能力があると判断されて。つまり今後、奏がどれだけ嫌がろうと、向こうからやってくるという事だ。
 ならば、早目に慣れておくべきか。いや、いくら相手が犯罪者だろうと、殺人に慣れるなんてもってのほか。
 その辺り、太一はどう考えているだろうか。

「ミューラ。太一は?」
「出掛けたわよ?」
「出掛けた?」
「ええ。バラダーと一緒に」
「ふーん……」

 そういえば、この異世界で別行動を取ったのは、Eランクの依頼をこなしていた時だけだったと思う。
 太一とて気晴らしがしたいんだろうと、奏は不満には思わなかった。この時は、まだ。





◇◇◇◇◇





 ユーラフは中々広い。
 アズパイア程では無いが、そこそこに人もいるし、 酒場なども多い。その理由として、出稼ぎに来る坑夫が多いこと。鉱物の原産地という理由から質の高い武器を入手できる場所であるため、冒険者がそれを求めてやってくる。
 太一にすれば、片田舎の駅前繁華街のような感覚だ。
 それらの情報は、道すがらバラダーから聞いた情報だ。この街の話から、炭坑について。また周辺の地理や魔物について。
 話題には事欠かないが、太一が今聞きたい肝心なことについては、口を割ろうとしない。

「そろそろどこ向かってるのか教えてくれても」
「焦んなよ。じきに分かるからよお」

 終始こんな具合である。

「何でそんな勿体ぶるんだよ」
「楽しみは隠されてた方がいいだろうよ。なあ?」
「なあ? じゃなくてさ!」

 それは確かにそうだが、太一としては何となく嫌な予感が拭えない。

「男はドッシリ構えてるもんだ。はええとカナデの嬢ちゃんに嫌われちまうぞ?」
「何で奏が出てくる!?」

 思わず声を荒げて誤魔化した。心臓が跳ね上がったのは、悟られなかっただろうか。ゲラゲラと豪放に笑うバラダーからは、それを読み取る事は出来ない。
 太一の倍以上を生き、太一が生きてきた時間よりも長く冒険者をやっているバラダーが相手では、分が悪いのも当然と言えるのだが。

「さあて。着いたぞ」
「ここ? 何この店」

 外から見て分かるのは、ごく普通の宿屋のような三階建ての建造物。だが、そこに宿屋を示す看板はない。

「入りゃ分かる」

 二の足を踏む太一を無視して、バラダーはずんずんと進んでいく。
 慌ててついていった建物の中には、たくさんの女性がいた。

「あら。バラダーさんじゃない! 久し振り~!」
「えっ? 本当だ! バラダーさんだ!」

 大柄な男に群がる女性たち。太一は直視出来ない。七人中七人が、物凄く扇情的な格好だったからだ。刺激が強かった。

「おう! ちぃっとスッキリしにきたぜ!」
「あら! じゃあいっぱいサービスしちゃう!」

 バラダーにしなだれかかり、分厚い胸板を細い指でつつく女性。日本でなら大学生位の歳だろうか。

「あーずるい! 私も!」

 次々とバラダーに迫る女性たちを、バラダーは「全員まとめて面倒みてやる」と言いながら笑う。黄色い歓声が上がった。
 太一はようやく、ここがどういうところか分かった。ここは日本で言うところの風俗だ。いかがわしい店だ。
 真っ白になった頭で呆然としていると。

「ねえバラダーさん? 後ろの坊やが固まってるけど、その子もお客さん?」

 とても落ち着いた声の女性が奥からやってきた。
 太一は思わず息を飲む。
 何てエロい人なんだ。
 第一に抱いた素直な感想はそれだった。
 彼女は特に肌を露出させているわけではない。滲み出る雰囲気とでも言えばいいのか、とんでもない妖艶さだ。

「おお忘れてた。そいつはタイチっつーんだ。冒険者だ」

 視線が一気に太一に集まる。途端に全てが縮こまってしまった。前屈みになる必要がなくなった。安心すればいいのやら、情けないやらである。

「へえ。この子が。虫も殺せないような優しそうな子じゃない」
「まーな。でも見た目だけだ。そいつはCランク冒険者だぞ?」

 にわかにざわつく。
 晒し者になっているようで、正直勘弁してほしい。

「Cランク? 本当に?」
「ああ。本当さ。まー色々あったらしくてな。総合的にゃあまだまだだが、戦闘能力だけなら俺とタメ張るぜ?」
「へえ凄い坊やじゃない。で、私はこの坊やのお相手をすればいいのかしら?」
「話が早くて助かるぜロゼッタ。まー冒険者ならではの洗礼ってやつを味わってな。優しく慰めてやってくれや。ついでに男にしてやってくれ」
「そういうこと。しかも初めてなのね。じゃあ、確かに私の出番ね」

 クスっと笑うロゼッタ。その空気に圧倒されて太一は動けない。

「じゃよろしく頼んだぜ! 俺は楽しんでくらあ!」

 バラダーは七人の女性を引き連れて奥へと引っ込んでいく。

「さ、私たちも行きましょうか」

 ロゼッタが太一の腕を取る。太一よりも少し背が低い。ナイスバディというほどではないが、その色っぽさはその辺の女性を遥かに凌駕する。
 連れていかれるままに入った部屋は、ベッドとテーブルがあるだけの簡素な部屋だった。

「座って」

 言われるままにベッドに腰を下ろす太一。
 ロゼッタはその真正面に立ち、シニヨンで纏めていた髪を優雅にほどく。はらりと落ちる長い髪に目を奪われた。太一の視線が自分に向いたのを確認して、ロゼッタは胸元を薄く開く。見えそうで見えない絶妙なチラリズム。胸元の谷間が眩しかった。

「緊張してるのね。そのまま、何も考えなくていいわ。私が良くしてあげるから」

 近づいてくるロゼッタを、太一は働かない頭で見詰めた。


こういう話を書くのは初めてです。

さて、書かなきゃ。


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