三十四
鋭い剣閃が魔物を切り捨てた。
あれから街の中をぐるりと巡回しながら、襲い来る魔物を倒していた。
どれだけ倒したのか。
すっかり魔物がいなくなっていた。
周囲に気配もないし。
遠くからかすかに聞こえる悲鳴も。
何かが破壊される音も。
今はもう聞こえない。
もしかしたらまだ残っているのやもしれない。
しかし、それは他の部隊が対処するだろう。
「ふむ、大体対処したと言っていいだろうか」
第一騎士団の団長が思わず、といった形でそうつぶやいた。
もう見かけないのだ。
そう思うのも無理はない。
しかし、団長はそこで気を抜かなかった。
「引き続き気を抜くな。全滅しきったと確定したわけではないのだ」
「はっ!」
部下からの返事にひとつ頷き、引き続き街のパトロールを続ける。
「ふむ。確かに貴殿がいう通り、ほぼ残っていないと言っていいでしょうな」
テスランは、団長が下した「ほぼ対処済み」という予測を指示した。
一時はなみいる敵の波状攻撃も受けたものだ。
その時は必死に耐えながら一体ずつ着実に減らしていき、どうにか被害を最小限に切り抜けることができた。
さすがに無傷とはいかず負傷した者も多数いたが、全員が戦闘継続不能にならずに治療だけして戦線に復帰できた。
それはひとえに団長とテスランの指揮が優れていたからだ。
そして、ここまでの間でシャルロットの周囲半径二〇メートル以内に侵入されたことも、一度たりともない。
敵を殲滅しながら、絶対に守らなければならないシャルロットを連れて、ここまで最良と胸を張れる戦果だろう。
ともあれ、連戦続きではいかに屈強な騎士や兵士であっても、休みなしではポテンシャルのすべてを発揮できない。
よって彼らは休み休み進んでいた。
急ぎたいのはやまやまだが、戦闘時に疲れが溜まったまま、というのも避けるべきなのだ。
「変わりませんな」
「そうですな。見渡す限り……」
壊された家。
魔物の死骸。
そして人の遺体。
地獄絵図に変わりは無かった。
それでもこれ以上被害を出さないためには必要なことだ。
市民を救うのも騎士の大事な仕事だ。
より多くの市民を救うためには適度な休憩も必要なことである。




