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異世界チート魔術師(マジシャン)  作者: 内田健
八章 強敵・対決・完遂

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三十二

 右手に持つのは、氷で作り出した銃。

 その中には当然氷の弾丸。そしてバレルには螺旋を刻んでいる。

 細かい造作ぞうさくはしていない。銃の形をしていて、引き金を引くことで撃つ、というイメージが成立していればいいからだ。

 これは別に自前の魔術でも可能だが、違うのは強度。

 そして、威力。

 照準をアンテに合わせ、発射。

 火薬の代わりに圧縮した氷を弾けさせて推進力とした。

 速度に全振りした一撃。

 その代わり自由度はなく、弾丸も小さい。

 なので仮に当たっても大きなダメージにはなるまい。

 一応、傷が出来る程度で。

 だが。

 命中率は、極めて高い。

「くっ!?」

 アンテは、ぎりぎりで避けた。

 今度は必死そうだった。

 先ほどのレミーアの攻撃よりは。

 それだけよけづらかったということだろう。

 そうでなくては困る。

 凛の攻撃を回避させる、すなわち、酸での防御をさせないためにはどうするか。。

 それを判断するための一撃だったのだから。

 アンテの方も、何があるか分からないということで避けたのだろう。

 凛としてはかなりの収穫だ。

 アンテが一生懸命避けるだけの速度で撃てたわけで。

 弾速で言えば『電磁加速砲』の方が速い。

 しかしそちらでは威力が圧倒的に足りない。

 アンテにダメージを通すには、氷の精霊魔術を使う必要があった。

「やるわね……!」

 特殊能力全振りのアンテだからこそ凛の攻撃が通るのだが、そこは幸運だったと喜ぶところだ。

 自分の練りが甘いことを嘆くのは、この戦闘が終わってからでいい。

 このことはミューラとレミーアにとっても朗報である。

 長期戦にはしたくはない。

 ならば、立て続けにダメージを与えるか、強力な攻撃で一発で仕留めるか。

 それしかないわけだ。

「やられっぱなしで終わるとは思わないことね!」

 アンテがさらに酸を生み出した。

 とんでもない量だ。

 魔力を変換しているのだろうが、無尽蔵にも思えてしまう。

 特殊能力全振りという推測が正しければ納得もできる。

「わらわも行くわよ!」

 アンテはその酸を全身にまとわせる。

 すさまじい量が浮いていたのだが、それがすべてアンテの身体に。

 触れるものすべてを溶かす鎧だ。

 そのまま突進を開始するアンテ。

 なるほど、攻防一体。

 強力な攻撃である。

「凍れ!」

 アンテが突っ込んでくるのに合わせ、凛が急いで絶対零度の空間を作った。

 酸を凍らせて無力化しよう、という魂胆だ。

 絶対零度という高威力なので効果範囲は広くないが、確実にアンテを巻き込むことができた。

 結論から言うと、うまくいかなかった。

 表面をはがしただけにすぎず、パラパラと氷の欠片が散らばるだけだった。

「散れ!」

 レミーアの声で、凛もミューラも散開して突進を回避した。

 ただ凍らせるだけではうまくはいかない。

 あの酸の鎧をはがすのは容易ではなさそうだ。

 そして。

 避けただけでは終わらなかった。

 アンテは、通り過ぎた後に酸の弾丸をばらまいたからだ。

 狙いはつけていない。

 指先ほどの弾を無数にただ放っただけにすぎない。

 狙っていないからこそ脅威だった。

 視線や殺気などで射線を読んで予め避けるのではなく。

 目で見るなりしてその存在を肌で感じ取り、回避する必要があったからだ。

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