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異世界チート魔術師(マジシャン)  作者: 内田健
八章 強敵・対決・完遂

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三十一

「そうこなくちゃ。なら、これはどうかしらね?」

 今度は酸を槍のようにして放ってきた。

 凛が使う水属性の攻撃魔術にジェット水流の魔術があるが、それと外見は似ている。

 液体が酸であること、その速度が凛の魔術以上であることを除けば。

 とんでもない破壊力があるのは間違いない。

 これは、撃ち返すのがいいだろう。

 冷気を固めて圧縮、凝縮。

 酸の槍に向けて放った。

 空中を下に向かって飛ぶ酸の槍と、凛が撃ちあげた氷の光線が正面衝突する。

 凝縮して極低温の冷気を内包した光線だ。

 何かの育成ゲームで冷凍光線みたいな攻撃があったが、まさにそんなイメージだ。

 酸の槍をバキバキと凍らせていき、結果的に相殺することができた。

 液体が氷になったことで、攻撃も勢いを失い地面に落ちた。

「くっ……」

 受けてみて思った。

 あんな無造作な撃ち方だというのに、かなり威力は高かった。

 精霊魔術以外では受けきれない。

 それ以外では間違いなく一瞬で押し負けていただろう。

「やるわね。どんどん行くわよ!」

 攻撃が連続になり、加速度的に激しさを増していく。

 それもそうだろう。

 あんな単発の攻撃が、彼女の本領なわけがない。

 どんどん攻撃力が増していくのは何もおかしくない。

「無理か……!」

 ミューラはもう一度切り込もうとするが、酸の弾幕があまりにも分厚くて断念。

 むしろ回避に専念した。

 ふと死角から狙う酸の弾丸に、石の塊をぶつける。

 石は完全に溶かされたが、酸もそれ以上は進まずに落ちた。

 なるほど……。

 さすが、精霊魔術。

 相討ちに終わったところに、ミドガルズのプライドを感じた。

「これは……よし」

 ミューラは全身に土の魔力をまとわせて飛び出す。

 それに向けてアンテも迎撃のために酸を放つ。

 当たりそうになったところだけを土で覆って防御。

 分厚く頑丈な鎧を局所的に生み出しながらどんどん接近していく。

「へえ、やるわね!」

「はああっ!」

 酸を攻略され、近接戦闘が出来るまでの距離まで近づかれたにもかかわらず、アンテは笑顔だった。

 ミューラが剣を振りかぶる。

 アンテもメイスを振りかぶった。

 ガァンーー

 激しい衝突音。

 精霊魔術による身体強化と剣の強化を施し、その細身からは想像もできない膂力を発揮するミューラと。

 そのミューラ以上の魔力の強さを誇るアンテの一撃。

 平凡なはずはない。

 離れているギルグラッド全域にまで響いているはずだ。

「ちっ! やっぱりね!」

「やるわね!」

 空中でガンガンと剣とメイスを打ち合わせる二人。

 ミューラの方は真剣だが、アンテは自分に力で張り合ってくる者がいることに楽しそうだ。

 ガツンとぶつかりあって、二人の距離がわずかに離れた。

 そのアンテを狙い、クロスを描く風の刃が飛来した。

「っ!」

 アンテがひらりと回避した。

 太一開発の『エアロスラスト』をブリージアの力を借りて放った。

 当然だが、声になど出していない。

 不意を突くのに声を出したらバレてしまうからだ。

「ちっ」

 見事避けられ、レミーアは舌打ちをひとつ。

 当たっていれば、どれだけのダメージになるかの試験にもなったのに。

「三対一は思うようにいかないわ、やはり戦いはこうでなくちゃね!」

 アンテは楽しそうである。

 さすがに空を飛ぶことはできないミューラは、足元に生み出した岩を蹴ってアンテから距離を取る。

「戦いが好きなのね」

「当然。勝敗が分かっている勝負など、面白くもなんともないでしょう?」

 どうして、こう。

「バトルマニアみたいな人に、とことん縁があるかなぁ」

 グラミしかり、スソラしかり。

 まあだからこそ。

 こうしてこちらの都合に合わせてくれている一面があるので、一概に悪いわけではないのだが。

 さて、視線がレミーアにいったことで、凛のこともバレてしまった。

 ならば、撃つしかなかった。

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