二十六
「……!」
すさまじい魔力の奔流が突き抜けた。
全員で慌てて外に出る。
すると。
街の真ん中からでも見える。
見え方的には、街の外。
巨大な氷柱が突き立っていた。
陽光を受けてキラキラと瞬いている。
そして、その周囲には白い煙がただよっていて、氷柱が発する冷気を見せつけていた。
「なんという……あれが、魔術だというのか!?」
第一聖騎士団の団長は、そびえたつ氷の柱を見て驚愕に目を見開いた。
ただの魔術師にできるような規模ではない。
すると、氷柱に一気にひびが入り、次の瞬間。
一気に氷柱が砕け、細かい微粒子になった。
いや、ここから肉眼だと微粒子に見えるだけで、実際は一つ一つが鋭いつららの様になっている。
それが一気に勢いよく飛んでいくのが見えた。
あれもまた、攻撃だったのだろう。
「……あれは、アンテという敵と戦っているわたくしが雇った冒険者です」
「なんと……」
あんな氷柱を生み出し、それを攻撃に転ずることができるような冒険者がこの世に存在するとは。
とんでもないことだ。
シャレになっていない。
いや、あの尋常ではない魔力で聖都ギルグラッドを蹂躙したアンテを相手にするのだから、これくらいでなくては話にならないのは分かる。
しかし。
しかし、だ。
「あれくらいできなければ務まらない、とは聞いていますから」
シャルロットがそう言った直後、どどおん、と地面が揺れ、巨大な土煙が上がった。
いったいどんな戦いをしているのか皆目見当もつかない。
ただひとつ分かること。
「これは、我々が何をしようと、手助けにもなりませんな」
団長は実力差が生み出す意味を正確に読み取った。
彼我の実力差、正確なところは分からない。
あまりにも隔絶しすぎていて。
ただ、それで十分だった。
それが分かれば、間違えない。
部下を無暗に殺さなくて済む。
「そうですな。それに、我々にも出番が来たようですぞ」
テスランが団長に話しかける。
彼の視線の先。
そこには魔物の群れと、ローブの人物が一人。
なるほど。
確かに、外にばかり気を向けているわけにはいかない。
街中に魔物。
近づいてきた気配はない。
いつの間にか現れた。
そう表現するのが正しく感じた。
「うむ、時間をかけている場合ではないですな! 時間は無いが出撃だ! 聖騎士の力を今こそ見せるときだぞ!」
「おお!!」
準備の時間は一切なかった。
しかしそこは、血反吐を吐くような鍛錬と厳しい規律の中自分を律しているだけあり。
唐突な襲撃に、慌てた様子は一切なく全員が一気に戦闘態勢に入った。
「それでは、我々も参るぞ。殿下の護衛騎士として、無様な姿はさらせぬと肝に銘じよ!」
テスランが大音声で部下たちを叱咤する。
彼らの気合も十分。
とはいえ基本的にシャルロット麾下の騎士たちはあまり打っては出られない。
シャルロットを守るのが第一なのだから当然。
そして、聖騎士団としてもシャルロットの部隊をあまり前に出せないのは当たり前のことだった。
なのでやや後方寄りで戦闘待機しつつ、抜けてきた魔物を狩っていくスタイルだ。
攻めに出た聖騎士たちだけで全滅できればいいが、現実はそう甘くないことは戦う者ほど分かっている。
だからこそ、二段構え、三段構えで作戦を立てるのが当たり前なのだから。
聖騎士たちが突撃していく。
凛とミューラ、そしてレミーアがアンテと戦い。
騎士や冒険者が、街中に現れた魔物たちと戦う。
火蓋は、切って落とされた。




