二十四
「……来たわね」
凛とミューラ、レミーアが現場に辿り着いたとき。
アンテは、冒険者が調べた家の屋根に腰かけて待っていた。
彼女たちの姿を見て、アンテは待ち遠しかった、という顔を浮かべた。
「約束通り、来たわよ」
まずは直接話をしたことがあるミューラと。
「私たちと戦うのが、望みなんでしょ?」
凛が対応をする。
「ええ、そうね。それで、そっちのもう一人は誰なのかしら?」
「こちらは……」
「お初にお目にかかる」
ミューラの言葉を遮り、レミーアはカツカツと前に出てアンテを見上げる。
「私はこの二人の師をやっている、しがない魔術師だ」
「ふうん?」
興味なさげな返事をするアンテ。
どこに興味がないのか。
しがない、のところだ。
アンテほどの実力者が、レミーアが秘めた強さに気付かないはずが無いからだ。
実際に気付いているからこそ、しがない、の部分に興味を示さなかったわけである。
「じゃあ、あなたたち三人が、わらわと戦うということで良いのね?」
「ええ」
「そうだよ」
「うむ」
凛も。
ミューラも。
レミーアも。
アンテからの気合のこもった問いに、間髪入れず返事をした。
その返事こそ、アンテが欲しかったもの。
彼女はにんまりと笑った。
「いいわ。やりましょう」
立ち上がったアンテはひょいと屋根から飛び降り、三人の前に立つ。
彼女のやる気は十分といったところだ。
そのあたり、凛とミューラが報告した通りだ。
戦いを待ち望んでいる。
凛とミューラに出会って満足そうだった。
本番になれば、それに加えて彼女たちの師であるというレミーアまでいるのだ。
アンテの機嫌がよくならない理由がなかった。
「ところで、あなたたちはここで戦ってもいいのかしら?」
構えていざ尋常に、となるかと思えば、アンテはやる気はみなぎらせているものの、すぐにはかかってはこなかった。
彼女は、気を遣っているのだと、すぐにわかった。
ここは住宅街のど真ん中。
まあ、住宅街のど真ん中であること自体は、そこまで大きくはない。
むしろ、そもそも論だ。
「もしかしてと思うから聞くのだけれど、貴女方、街中じゃあ、存分に力を発揮できないのではなくて?」
それはその通りだ。
パリストールでは相手がキメラだったのもあって、余裕こそ少なかったものの周囲への被害も考慮しながら戦えた。
しかし今回、相手は格上だ。
周囲への配慮がどこまでできるか。
いや、できないと思った方がいいだろう。
「あなたたちが全力を出せないのでは、せっかく戦う意味が半減してしまうわ。街の外なら全力で戦えるというなら、そうしましょう」
願っても無い提案だ。
どうやってここじゃないところで戦うかを考えなければならなかった。
誘導できるかわからないがやるしかないだろう、という認識だった。
しかし、アンテから提案してくれるのなら望むところ。
「そうだね。街の外なら、今まで出したことのない全力全開も辞さないつもりだよ」
「そう」
凛の決意の言葉に対して。
アンテの短い返事。
だが。
全力を気兼ねなく出せるというのなら。
「いいでしょう。あなたたちの提案に乗りましょう」
アンテに、一切のためらいはなさそうだった。




