二十三
街を捜索していた冒険者たちがアンテに出会い、そして撤退を始めたのと同時刻。
凛とミューラは、先日の記憶が鮮明に思い出されていた。
肌を刺す重圧。
視線の強さ。
押されそうな存在感。
そのすべてが思い出される。
「これが、そうか」
自分の存在を隠すどころか誇示することにしたらしいアンテ。
その効果はてきめんで、今街には相当な魔力が伝播している。
凛とミューラが出会った強敵。
どんな人物なのかは口伝でしか知らなかったが、この魔力を感じることほどに雄弁なものはない。
「そうです。もう、遠慮をするつもりはないってことでしょうね」
凛は杖を握りしめてそうつぶやいた。
彼女の額にはわずかに汗が滲んでいるが、さもありなん。
それはミューラも同様だ。
この圧力。
前回顔合わせをしたときとは全く違う。
あの時はただ会話をしただけ。
凛とミューラも警戒はしていたが別にそれほど圧をかけていたわけではなかった。
一方のアンテも、顔合わせ、という目的の通り、まったく威圧感を発していなかった。
それが数日前の夜。
現在は少々違う。
相手はやる気満々。
それにつられてか魔力からも気合十分であることが分かる。
その魔力に圧倒されている者が多い中。
確定的な情報が転がり込んできた。
「冒険者が本命を発見しました! 更に、敵の最大戦力が登場した可能性が大とのこと!」
やってきたのは聖騎士だ。
彼は必死の形相で矢継ぎ早に訴える。
「ひいては、殿下麾下の騎士、冒険者と是非連携を取りたく!」
それは重要だ。
シャルロットは立ち上がり、レミーアを見た。
この速報を得たうえで、これまでの情報と見比べれば、取れる選択はそう多くは無かった。
レミーアは当然とばかりに頷く。
自分たち以外、誰を向かわせても犬死するだけだと分かっているからだ。
「分かりました。では、わたくし子飼いの冒険者を、その最大戦力とやらにぶつけましょう」
「承知いたしました」
「わたくしの騎士については、わたくしの護衛を外れるわけには参りません。彼らにも立場がありますので、ご了承ください」
「それはもちろん」
さすがは鍛えに鍛え抜かれた聖騎士。
もうすでに息はだいぶ整っていた。
「ですので、わたくしを守りつつ助力する形になります」
「はい、存じ上げております。それを前提でいくつか作戦があるとお伝えせよ、と命令を受けておりますれば」
「ならば話ははやいですね。では、そのように」
「はっ! では、聖騎士団の基地にお越しいただければと幸いです」
「分かりました。準備ができ次第向かうとしましょう」
「ご考慮ありがとうございます。では、取り急ぎ了承の旨をご報告いたしますので」
カッとかかとを鳴らして敬礼する聖騎士。
「御前、失礼申し上げます」
聖騎士は失礼にならない程度に、しかし素早い動作で部屋を出ていった。
一気に事態は動き出す。
「それでは皆様……」
「ああ、分かっているとも」
凛、ミューラ、レミーアの三人を向かわせるしかない。
実力的に。
そして、アンテの話としても。
彼女たちが行かねばならないだろう。
「それでは、そちらはお任せします」
「うむ。お前も気を付けろよシャルロット。アンテとやらだけで終わるはずが無いからな」
「承知しております」
「気を付けてくださいね」
「皆様も是非、お気を付けください」
「ええ」
シャルロットとやり取りをして、三人は部屋を出ていく。
向かうは一路、アンテのところだ。




