二十二
今出てきたのはごく一部の話。
彼ら彼女ら以外にも、たくさんの人が調査と探索に参加し。
誰も彼もが、こうして必死になって手がかりを探していたのだ。
そしてその日。
ある程度の実力を持つ者。
感覚が鋭い者。
そういった者たちが一斉に気付いた。
圧倒的な。
強大な。
その存在感に。
その魔力は、さすがに見逃せなかった。
これほどの大きさ、そうそう出会うことは無い。
「結構なもんだな……」
去年のことなので少しばかり記憶はあいまいになってはいるが、ダブルヘッドドラゴンよりは上ではなかろうか。
多少ではあるが、幻想種であるドラゴンよりも実力が上というだけでとんでもない。
なお、ここでは太一がかなり上であることはあえて無視する。
それはさておき。
今だからこそ強敵たりえないが、かつての太一は勝てない戦いに身を投じる必要があったのを覚えている。
「おう、なかなかやるな。奴さんも大盤振る舞いってとこか」
サラマンダーは敵ながらなかなか見事、という顔で頷いている。
正直太一の方はそれどころではない。
太一が戦えればいいのだが、凛たちに任せなければいけないのだから。
「お前にはお前の仕事があるからな。向こうは仲間に任せろ」
「……分かってる」
仕方ないが、その通りだ。
「あのそれなりにやるヤツは、お前の仲間にやってもらわないとな。そうでないと勝ちにはならないぞ」
「なるほど」
別の役割であるということ。
手を出せないというなら仕方がない。
それに、今も太一にはやることがあるのだ。
「そうだ。ギリギリまで、修行はしてもらうからな」
「望むところだ。この次の出番が最後の試練だったな?」
「ああ。それさえ終わったら街にいっていいぜ。お前がたどり着くのが先か、お前の仲間が勝つのが先か、ってところだな」
となると、気は抜けない。
何もできなかった、という状況にはしたくなかった。
必死に取り組むしかない。
絶対にこれで終わらせてやる。
サラマンダーの試練が嫌なわけではない。
いつまでも試練から抜けられない自分が嫌なのだ。
太一は引き続き、サラマンダーに与えられている試練に向き合った。
「ふふふ。始まりましたね」
マルチェロは、ついに始まった最後の作戦に、歪んだ笑みを浮かべた。
計画も、アンテのやる気に合わせて変更してしまった。
もはや後戻りはできない。
それもまた良し。
マルチェロは、もはや開き直っていた。
どうせならアンテという最強の手札が猛威を振るうのに便乗して手持ちの戦力を大放出。
高速で片を付ける。
そういう方向にシフトしたのだ。
この選択が正しいかどうかは分からない。
だが、もともとのじっくりと事を進めていく計画とて、それで失敗する可能性を捨ててはいなかった。
もちろん何か問題が起きた場合のフォローもきっちりと考えてはいた。
最後の最後でアンテを起用する、という流れだったのを、いきなり切り札を大胆に切る形にした。
それによって勢い一気に制圧し、相手に無数の選択を迫るというもの。
悪い形ではない。
急な変更によってフォロー体制の構築はできなかった。
ならばいっそ後先考えない方がいいのではないかと、早々に諦めたくらいだ。
もう、マルチェロにもどうなるかは分からない。
吉と出るか凶と出るか。
すでに賽は投げられた。
「では、勝負です。アンテさんにすべてを託した我々が勝つのか、それを打ち破り貴女方が勝つのか。ここでせいぜい高みの見物を決めさせていただきますよ」
マルチェロは高台から街を睥睨し、そうつぶやいた。
もはや、事態は完全にマルチェロの手から、離れていた。




