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異世界チート魔術師(マジシャン)  作者: 内田健
八章 強敵・対決・完遂

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十九

 別に舐めているわけではない。

 舐められないようにはしたけれど。

 凛の心情としてはそんなところで、それ以上でもそれ以下でもなかった。

 初めて訪れる場所で、仮に舐められた場合はそれに対処しなければならない。

 舐められなければ必要のないこと。

 基本的に気質は穏やかで言葉遣いも柔らかめだが、実は気が強く負けず嫌いである。

 クールでドライなミューラとどっこいどっこいというところ。

 態度と言葉遣いにも表れているミューラの方が分かりやすいだけ、だった。

 キィン――と硬質で耳に刺さるような音が響き渡った。

 男が振り下ろした幅広の鉈のような剣を、手のひらで受け止めたのだ。

「なっ……!」

 少女の柔らかそうな手が、鋼鉄の塊を受け止めたことを信じられない男。

 しかもこの音。まるで金属を打ち付けたかのような。

 実際に手の皮にふれているわけではない。

 手のひらに薄くまとわせている風の障壁で受け止めただけだ。

 けれども、魔術に対する造詣が深くなければ他人には分からない。

「もういい? こっちも忙しいからね」

 相手の気勢を一気に削いだことを確認した凛は、グッと押しやる。

 強化魔術を施せば、膂力でも筋骨隆々の男を上回ることは難しくなかった。

 たたらを踏んだ拍子に、剣を取り落としてしまう。

 彼を含む三人を一度見やると、凛は再び受付嬢に向き直った。

 本来、ギルド内で武器を抜くのはご法度である。

 だがこの場は凛があっさりと収めてしまった。

 突っかかってきた彼らも、これ以上続ける気力は無い様子で、すごすごと去っていった。

 ギルドも本来は制裁を加えるべきなのだが、ここは見て見ぬふりをするようだ。

 見事に返り討ちを喰らった。

 しかも相手の力量も見抜けないことが露呈した。

 という点では、十分な社会的制裁だからだ。

 その辺、こちらの世界では割とざっくばらんというか、ファジーだったりする。

 まあ、この世界の流儀にだいぶ慣れてきた凛としては、現地のやり方にどうこう言うつもりはない。

 それよりも凛には凛の目的があり、それを果たす方が先なのだ。

「調査の結果ですが、こちらの地域は終わっています」

 終わっています、とは言うが、何かが見つかった、とは言われなかった。

 つまり不発だったのだろう。

 聖騎士たちが調べている地域とも被っているものの、ダブルチェックということで全然ありだ。

 なるほど。

 これらの場所にはもう何もない可能性が高い、とみていい。

 聖都は広い。

 探索範囲を狭めて絞れるかが大事なのだ。

「そうなんですね。分かりました、引き続きお願いします。以前も伝えた通り……」

「はい。何かが見つかるかよりも、より丁寧に、しらみつぶしに探したという事実自体が大切、ですね」

「そうです」

 この依頼は聖騎士が思いつき、レミーアが代表してパーティで冒険者ギルドに投げたものだ。

 嘘をつかない誠実であることが第一の条件。第二の条件として、万が一の事態にもある程度対処できるよう一定以上の実力があること。基準としてはCランク冒険者、という条件で出されたものだ。

 高ランク冒険者であっても割がいい依頼なので、素行が良くギルドからも信頼されている冒険者には人気の仕事である。

 特に、この街を大切に思っている冒険者にとっては、街のこの状況を解決するための一助にもなる、ということで自尊心も満たされる。

 もちろん何かを見つけられればいいのだが、前述のとおり「見つからなかった」ことで対象範囲をより絞れるということで、決して無駄にならないというのも大きかった。

 聖騎士団としても、投入する税金はかなりの金額になるので正直懐はかなり痛い。

 だが、背に腹は代えられぬ。

 出すべき金をケチって、大きな被害が出ては目も当てられない。

 人を、街を、国を守る聖騎士が聞いてあきれる、というものだ。

 受付嬢も、この依頼の大事さは理解している。

 何せ今も聖騎士が必死になって街全体を捜査しているのだ。

 街に居を構えている身として、この現状のままでいいわけがないというのがギルド全体の総意だ。

 何か実害があるわけでもない。

 しかしこの異常事態。

 頭がおかしくなってしまった人間も出てきていると聞いている。

「任せてください。引き続きやらせていただきます」

「お願いしますね。頼りにしていますよ」

 聖騎士からは、街を守りたい人全員で解決に動こう、という理念のもと出した依頼だ。

 協力してくれるなら、ありがたく力を借りる。

 プライドの高いエリートである聖騎士が頭を下げてまで出したというこの依頼。

 ギルドも。

 冒険者も。

 一丸になることができている。

 受付嬢の様子を見ていた凛。

 刻一刻と『その時』が近づいている、と。

 何の根拠もないが、そう感じていた凛だった。

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