十八
ギイ、蝶番が軋む音をたてる。
途端に、じっと周囲から視線が向けられる。
そこにいるのは一般人とは違う、戦いを生業にする者たち。
その視線を一身に受けて、凛はそのまままっすぐカウンターに向かった。
「いらっしゃいませ。どのような御用でしょうか」
受付嬢は笑顔で凛を出迎えた。
この異常事態に疲弊しているのは間違いないだろう。
日常よりは忙しくなっていてもおかしくはない。
その疲労は顔に出ている。
隠しきれなくても仕方あるまい。
とはいえ、それでも笑顔で迎えようとする姿に、凛はさすがプロだと感心しながら返事をする。
「調べてもらっていた件の状況を確認しに来たんですけど」
「かしこまりました。ではギルドカードを――」
滅多に見ない顔がギルドにやってきて受付嬢と話をしている。
年若く成人しているかどうかというくらいだが、かなりの美少女でスタイルもいい。
が、それらの情報に注目しているのは、ギルドにいる冒険者の中ではまだまだ実力が伴わない者に多い。
そうでない者は。
堂々とした立ち振る舞いに、彼女がかなりできることを理解していた。
足の運び。
度胸。
纏う空気。
それらで分かる者には分かるというものだ。
一方。
それで分からない者はまだまだこれから、というところである。
ところで。
冒険者は、舐められてはいけない職業だ。
何故か。理由は割とシンプルで。
自分自身が商材で、自分の身体ひとつを武器に世の中を渡り歩く。
そして、主に武力を行使する。
そういう仕事だからだ。
暴力が当たり前の世界で自分の身一つで生きていくのだ。
舐められては仕事にならないのである。
だからこそ。
まだまだ自分の実力が足りない者たちにとっては、新人などに絡むのは自尊心を保つために必要なのである。
冒険者全体のために擁護しておくと、そういう方法でしか自己表現できない冒険者などごく一部、と注釈は入れておこう。
ともあれ。
見慣れぬ女冒険者。
年若く、剣などの近接武器ではない魔術師。
見抜けぬ者には、カモに見えても仕方なかった。
「おい」
「何か?」
背後から声をかけられ、凛はゆっくりと振り返った。
そこには、男が三人。
ガタイが良く、明らかに荒くれ者といった風体だ。
彼らのような者でも、一般的には相当な強者に入る。
ただ、冒険者的にはそうでもない。
パッと見ただけだがこの三人組は凛が見てきた冒険者たちと比べても、まだまだこれから、といった印象だった。
「一人できちまったら危ないって教わらなかったか?」
「オレたちが冒険者について教えてやるよ」
口々にさえずる男たち。
そんな三人組に対し。
「要らないよ」
「何……?」
「あなたたちの相手をしても、私の得にはならなそうだしね」
すげなく断ってしまう凛。
別に時間があるわけではない。
こんなチンピラもどきの相手をしている暇はないのだ。
一方、さっくりと断られた三人組の方は、もう引き下がれなくなってしまった。
これだけ周囲から観察されている状況で。
凛に突っかかったのはいいものの、これで断られたからと引き下がっては今後の仕事に影響してしまう。
「てめぇ舐めてんのか!?」
どうやらうち一人は短絡的らしい。
ギルドの真ん中で得物を抜くなどありえないが、三人のうち先頭の一人は、どうやら我慢できなかったようだ。




