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異世界チート魔術師(マジシャン)  作者: 内田健
七章 再会・試練・罠
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二十話

「よし」

 ミィに作ってもらったものなので触れても問題ない温度になっている。

 この環境にいつまでも置いておけば普通はこれも熱くはなるが、太一は熱気を完全に遮断している。

 地面からの熱も、自分で手を加えたものならば遮るのは難しいことではなかった。

 本番の射撃では、その岩を使って腕を固定する。

 さて、まずは弾丸の製作と試射だ。

 土の魔術で銃弾のガワを、水を螺旋状にまとわせて貫通力を上げる。火を炸薬の代わりとして、風で弾道が変わらないように調整。

 これでどうだろうか。

 太一は適当な標的を見つけると、右手を銃の形にして撃ち出した。

 そこそこの距離がないとテストの意味がないので、視力を強化して麓の樹木を狙った。

 銃声。

 そして、着弾。

 山風にも負けずに狙った木に命中。

 そこそこ立派な木だったが、それを軽く貫いて地面に突き刺さった。

「こんなもんか」

 威力は申し分ない。

 狙いがずれても、魔力による操作である程度のカバーも効く。

 条件は術式を止めること。その際術者ジョバンニを殺さないこと。

 当たり前だが、ジョバンニが館の外にいるわけでもない。

「こりゃあ館の中だよな。当たり前か」

 サラマンダーは黙ったままだ。

 太一も返事を期待していたわけではないので構わないが。

「シルフィ、ミィ、探れるか?」

 太一は三人を顕現させた。ここにはサラマンダーしかいないので、念話を使う意味もない。

「やろうか?」

「探るよ?」

「ああ、手を貸してくれ」

 ここでも、彼女たちに探ってもらってその結果を教えてもらう……といういつもの方法は使わなかった。

 シルフィとミィの探知を使えばほぼ盤石……なのだが。

「あ……ウンディーネの力でも探知できるんじゃないか」

 これまで意識してこなかったが、できないことはないだろう。

 シルフィとミィの探知性能はすでに理解している。

 太一が思いついたのは、水による探知だ。

 水というのは、どこにでも存在する。

 空気中にも。そう、水分として。

 湿気だ。

「ええ、できますね」

 ウンディーネは肯定した。

 水分に触れているものを察する。

「さすがにすべてを把握しようとはしていませんよ」

 それはシルフィやミィと同じである。

 特定の条件に絞ってやるのだ。

 そうでないと、入ってくる情報が多すぎるからだ。

 それこそ、エレメンタルであっても情報処理が追い付かないほどに。

 できるのならば話ははやい。

「そりゃそうだよな。よし、じゃあやってみるか。探知対象はパリストールの領主の館。目標はジョバンニの居場所と術式の位置」

 まずはもっとも馴染みのある風の魔法による探知。シンプルに、もっとも触れてきた属性の魔法だからだ。

 数をこなせばこなすだけ習熟していくのはいうまでもないこと。

 太一の手で空気をたどっていく。

「……ぐっ」

 空気に触れる石や木の感触。そこにある絵画や鎧の感触など。

 探っているのは領主の館の中だけだというのに、すさまじい情報量だ。

 これを調整してもらっているのだと、太一は改めて理解した。

 とはいえ、自分で使ってみるというのは決めていたので、最後までやるつもりである。

「……いた」

 しばらく屋敷を探索し、執務室の奥にある隠し部屋にジョバンニを見つけた。

 ついでに陣も発見することができた。

 ジョバンニは陣の真ん中に立っていたのだ。

 赤紫の毒々しい色の陣の中に立って何かをしていた。

 風の魔法でやったことと同じように、土の魔法や水の魔法でも同様に探査を行う。

 結論からいえばどちらも成功した。

 土の魔法では、石造りの屋敷であったことで、土や金属、石から得る情報で。

 水の魔法では、空中に浮かぶ水蒸気を介した情報で。

 それぞれ見つけることができたのだが、強い頭痛に襲われてしまった。

 あまりに入ってくる情報が多すぎて、頭をフル稼働させたからだ。

 それ以外にも、シルフィ、ミィ、ディーネの知見を借りながらだが、陣の構成を確認して肝も探した。

 おかげでどこを撃てばいいかまでは判明したのだが、その代償としての頭痛であった。

「いててて……」

「ほんの少しくらいなら休んでも大丈夫だろ」

「そうだな……ちょっとだけな」

 状況は理解している。

 太一が探知した限りで、領主の館近辺で何が起きているかも同時に分かった。

 今まさに、凛たちが領主の館の前にたどり着かんとしていたところだ。

 これならば入ってくる情報はほとんど変わらないので、じきに頭痛もおさまるだろう。

「よし、今のうちに弾だけ作っておくか」

 先ほど試射した弾で十分。

 場合によっては一発だけでいけるだろう。

 一発ではうまくいかない可能性も考えて三発用意はしたが。

 ともあれ、頭痛が治るまではこのままだ。

 手を止めているからと言って何もしていないわけではない。

 この瞬間もずっと監視は続けている。

 現在は隠し部屋と執務室だけを探りながら、それ以外の情報をシャットアウトしている。

 頭痛がある程度おさまってきたころ、凛、ミューラ、レミーアが執務室にたどり着いた。

「頃合いだ。やれ」

「わかった」

 サラマンダーに促され、まだ残っている頭痛を横にうっちゃって、まずはざっくりと指先を領主の館に向ける。

 先ほどの試射と比較すると距離は数倍にもなる。

 距離が増えれば難易度も上がる。

 視力をいくら強化しても、標的の視認はできない。

 石造りの部屋の中にいるのだから当然だ。

 なので、探知で得た情報をもとに正確に撃ち抜く必要があった。

 今しがた腰かけていた岩に肘を置き、固定する。少しでも手ぶれしないようにするためだ。

 膝をついて身体がなるべく動かないようにもする。

 視力を強化して、狙いを領主の館の一部分、執務室の隣に設置されている隠し部屋があるであろう場所に定めた。

「……」

 汗が滲む。

 火山の熱は断たれているのに。

 太一の周囲の空気は快適だ。春先くらいの気温になっている。

 額に汗が滲んできているのもわかる。

 太一にとって一ミリのずれが、目標地点から見れば「明後日の方向に飛んで行った」ということになってしまうだろう。

 そうならないためにも狙いの調整には細心の注意が必要だ。


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