出発!
第一章最終話です。
『カマイタチ!』
空気を裂く音が鋭く響き、縦一文字の深い傷を岩に刻んだ。
「うはは! すげぇすげぇ!」
その様子を少し離れたところから見ていた太一が歓声を上げた。
面白くないのは凛である。
「嫌味か! 渾身のカマイタチだったのにフツーに弾いてんじゃないわよ!」
そう文句を言う凛の視線の先には、右腕を払った体勢の太一。その右手は、淡い銀色の光に包まれている。
「いやいや! あんなの直撃したら無事じゃ済まねぇだろ!?」
「普通にやったらダメージなんて通らないから、強く撃つしかないじゃない」
「結構必死に防いでるんだぜ?」
「そうじゃなきゃ、こっちの自信が持たないわよ」
凛は言いながら、両足に風を纏わせる。次の太一の動きについていくためだ。
更に右手に火の玉を、左手には硬度を上げた石の塊を作り出す。もちろん、太一を攻撃する為に。一度に二つの魔術を同時に操る、デュアルスペルという技術。世界最高峰の魔術師であるレミーアと、彼女に師事しているミューラは出来る技術だが、普通はとてもではないが目に出来るものではない。
この辺の魔物相手なら、例え黒曜馬が敵だとしても不要なスキルだが、相手が太一となるとそうも行かないのだ。
「行くぞ凛」
「いつでもどうぞ」
彼我の距離はおよそ三〇メートル。純粋な魔術師の凛としては、太一となるべく距離を取りたいが故に保ってきた間合い。
その理由は、太一の圧倒的なスペックによる近接戦闘に、凛の反応速度ではついていけないからだ。
太一が腰をゆっくりと落とし、足に力を込めるのが目に映る。瞬間、太一の姿がブレた。
「ッ!」
凛はそれに一瞬遅れて地面を蹴り、同時に火の玉を地面に叩きつけ、更に石の塊を圧縮した空気を破裂させた衝撃で撃ち出した。
硬質な石を弾丸とした空気砲と、火の玉が生み出す爆発。普通なら過剰ディフェンスである。しかしそれだけやっても太一に対しては一切の安心をもてない。凛はすぐさま次の詠唱を始める。五つの火の玉が宙に生み出される。高速で後退する凛にぴたりと追随しながら。
たった二歩。太一は目の前にいたのだ。
三〇メートルの距離を、体感で二秒未満で詰める。
それが魔力強化を行った太一の速度。それでも全力ではないのだから、最早笑うしかない。
一度間合いに入られたら、凛は障壁を連続で紡ぐ事に終始せざるを得ない。近づかれたら負けなのだ。近づかれないために、圧倒的な防御力とスピード、攻撃力を誇る太一に対する防御策だ。
石を受け止めて投げ捨てつつ爆炎の中から現れた太一が目を丸くし、足を止める。
あれは、この世界で初めて見た魔術の一つ。
メヒリャが黒曜馬を一瞬で消し炭にした高い攻撃力を持つ魔術だ。
「ゲッ!」
『フレイムランス!』
思わず呻く太一に、凛は無慈悲に五つの炎の槍を放った。
火の粉を撒き散らしながら、高速で飛ぶ炎の槍。太一は動作をする間もなくそれに包まれる。
先ほどの火の玉が起こした爆発を、数倍にした規模のパワーが炸裂し、空気が震えた。
業火が周囲を焼き払い、凄まじいエネルギーだった事を主張している。はっきり言えば、メヒリャのフレイムランスを上回る威力である。
「マジ間一髪。ヤバかったー」
炎と煙が沈静化していく。元々延焼を目的にしていないため、炎はすぐ鎮火するのだ。
二十メートルに渡って焼け野原となった大地の中心に、太一が無傷で立っていた。彼を中心として一メートルの範囲が、一切炎の影響を受けていない。
あの強力な魔術を、魔力を大きく纏う事で防いだのだ。強引。力ずく。そんな表現がぴったりくる防御手段である。
「何で効いてないのよ……」
驚くよりも呆れた顔で、凛がげんなりしている。
魔力強度と魔力値にものを言わせた力任せの防御結界。太一に魔力を発揮させる機会を与えてしまうと、凛の攻撃は殆ど通らないのだ。
それは頭では分かっている。分かっているが、今のは凛にとっては最高クラスの威力を持った攻撃魔術である。
効かないのは仕方が無い、と割り切るのは心情的に無理だった。
「……凄い。あの威力の魔術もそうだし、それを当たり前のように防ぐなんて」
「全くだ。自分の弟子ながら、呆れるほどに強くなったな」
模擬戦闘の様子を遠巻きに見ていたレミーアとミューラも呆れている。
太一と凛の身柄をレミーアが引き取ってから丁度三週間が経過した。
そろそろ冒険者として、依頼を受けなければならないため、今日の模擬戦は最終テストのようなものだ。
太一と凛の上達は凄まじい。日に日に上達する二人を見ていて、分かっていた事ではあったのだ。
しかしそれを実際に見せ付けられると、改めて非常識だと感じさせられる。
「界○拳!」
「それはダメ!」
「男のロマンだろ!?」
「ロマンでもなんでもダメ!!」
たった三週間で、凛はミューラよりも強くなった。
模擬戦をして試したわけではないし、まだまだ魔術に対する知識等ではミューラのほうが上だが、単純な戦闘能力では凛には敵わないとミューラ自身が思っている。
ミューラの戦闘力はひとかどのものだとレミーアも認めている。そもそもの資質がミューラと比べてオーバースペックの上、全ての属性を駆使し、更に現代の知識もミックスするのだから、もう相手が悪いとしか言いようがない。
ではレミーアと比べてはどうか。相手が凛なら、まだまだレミーアの敵ではない。楽勝ではないが、負けるとも思わない。世界屈指の魔術師は伊達ではない。
但し比較対象が太一の場合、レミーアは戦うまでもなく「敵わない」と認める事になる。
太一の戦闘だが、技術は無いに等しい。武器は扱えないため無手。格闘術を会得しているわけでもない。何がレミーアを上回るかと言えば、圧倒的なスペックである。スピード、パワー、ディフェンス。自らが持つ全てを駆使して当たっても、それを打ち破る事は出来ないだろうとレミーアは思っている。
ついに太一に間合いへの侵入を許した凛が、腕を取られて降参の意思を示した。
凛が太一に勝ったのは二度だけ。模擬戦を始めて最初の方だけ。いずれも魔力操作が未熟だった太一が魔力を切らせて戦闘続行が不可能になったのだ。それ以降、凛は太一に勝てていない。
太一と模擬戦した場合、凛のような感じで敗北するだろうとみている。凛よりはいい線行くだろうが、所詮そこ止まり。それほどに太一の戦闘能力は凄まじかった。
「そこまでだな」
レミーアが終了の合図を出す。
そもそも勝ち方に力の差が現れている。
太一に余裕が無ければ、凛に打撃を加えているはずなのだ。近づいて腕を取るという決着をつけれる時点で、両者の力の差が少なからずある証明といえる。
それでも模擬戦をやるのは、太一にとっては、遠距離からひたすら強力な攻撃を繰り出す相手に対する訓練。
凛にとっては、近い間合いを得意とする相手に対する対処方法の訓練である。
そして恐ろしいのは、戦闘における太一と凛の常識が、狭いコミュニティの中にしか無いという事。この中で一番劣るミューラでさえ、その辺の野盗相手なら一〇人を一度に相手しても苦労せず無力化出来るだけの力を持っているのだ。
つまり、バラダー達と同じレベルの戦闘力を持っている、という事。流石に彼ら三人を同時に相手にすれば勝ち目は無いだろうが、一対一なら互角の勝負が出来るだろう。
つまり、太一と凛は、実力という一点のみではあるが、この世界で一流と呼べる冒険者を超えてしまったのだ。
その事はきちんと自覚しなければならないだろう。
そもそもミューラの実力すら、身につけられる者は圧倒的に少ないのだから。
「よし。戻るとしようか」
「あー、やっぱ勝てなかったぁ」
「……やる度に凛の攻撃がカゲキになるんですけど」
「あたしでもそうなるわよ。怪物相手にしてるのと一緒なんだから」
「ひでぇ」
自分がどれだけ非常識か、イマイチ分かっていない様子の太一。
それを見てミューラがため息をついた。
草原からレミーアの家に戻る。
ダイニングの椅子に座って一息つくと、レミーアが皮袋をテーブルの真ん中に置いた。じゃらりと鳴ったことから、中が硬貨である事が分かる。
「これは?」
首を傾げる凛。
「お前達の修行は今日でいったん終わりだ。明日からは街で冒険者として依頼をこなしてもらう。登録してから三週間経ったからな」
なるほど、と凛が頷いた。
「この金は、街での生活費だ。まずはFランクの依頼を受ける事になるが、その収入だけで安定させるにも先立つものは必要だからな。必要になったら使えばよい」
「でもただで受け取るのは悪いよ。それに俺達、金なら多少持ってるんだ」
バラダー達から受け取った餞別である。
それを滞在費用としてに支払う事も提案したがすげなく断られ、一切手付かずで残っている。
レミーアは頷いた。
「それも知っている。何、気になるなら借しにしておくからしっかり稼いで返しに来い。冒険者として生きるなら、その程度は全く問題ないレベルまでは仕込んだからな」
バラダー達と同じく、配慮してもらったのだ。
ここは受け取っておくのが礼儀というものだろう。
感謝の意を示し、凛が皮袋を手に取った。
「さて。出発前に、一つだけ忠告をしておこう」
今までのざっくばらんな雰囲気から真面目な顔に変わったレミーアを見て、凛が居住まいを正す。太一は普段と変わらないが。
「お前達の実力だがな。はっきり言えば、この近辺で敵になるものはおらん。他人から見れば、恐怖すらもたれる強さを持っている事を自覚しておくのだ」
「へ?」
「そうなんですか?」
日々必死になっていたために、自分たちがどれだけ強くなったのか、その物差しが無かったのだ。
「そうだな……例えばリン。お前で言えば、全力を一〇〇としよう。五〇程度の力を出すだけで、黒曜馬を一撃で倒す事が出来る」
「……」
「タイチ。お前は、三〇以上出すな」
「え? 俺だけ命令?」
「当たり前だ。リンと戦ってるとき、一〇〇のうちどの程度出した? 正直に答えろ」
「えっと……四〇くらいかな」
「そういう事だ。お前の場合オーバースペック過ぎる。まあ相性もあるだろうが、リンを相手に半分以下の力で勝てるようなやつが遠慮なく実力を発揮したら、怖がられて誰にも近寄られなくなる」
「うえ」
「店にも入れなくなってしまう。そうしたら街にいられなくなるぞ」
「それは困る」
「だろう? だから三週間ずっと魔力操作に費やしたのだ。今なら自分の力を一〇刻みで出すなど余裕のはずだ」
「一〇刻みどころか五刻みでもやれるよ」
「うむ。普段は一〇とか二〇で良い。それだけでも騎士団団長レベルの戦闘力を発揮する事が出来る」
「うわー、確かにオーバースペック」
騎士団団長。それは、一流冒険者と互角、ともすれば上回るほどの戦闘力を持つという。
確かに魔力を完全に操れるようになってから、太一は一〇〇の力を出した事は無い。
一度八〇の力を出した状態で地面を殴ったら、幅四〇メートル、深さ二〇メートルの大穴を空けてしまってから、流石に自重するようにはしていた。ここまで自分がありえない存在だとは、流石に思っていなかった。
因みに、その時ぴょん、位のつもりでジャンプしたら、穴から抜け出すどころか更に一〇メートル高く跳べてしまった事も、自重する原因として一役買っている。穴を埋めに来た凛に叱られたのは当然の報いである。
「まあ、一度自分と同ランクの冒険者がどれ程のものか見てみるといい。それを基準にして考えれば良いだろう」
「分かりました」
「気をつける。流石に好き好んで嫌われるほど変態じゃないつもりだから」
「うむ。冒険者としてそのまま街に腰を下ろしても良いが、しばらくしたら一度戻って来い。街でどういう生活をしたかも聞きたいしな」
太一と凛は顔を見合わせた。
「いや、冒険者やってるうちは街にいるけど、あくまで拠点はここがいいかなって思うんだ」
「そうですね。私達のこの世界での実家ってここ以外思いつかなくて。レミーアさんとミューラさえ良ければ、またここに住みたいんですが」
「そうか。まあお前達の好きにすると良い。戻ってきたいと言うなら私に否やは無い」
「ここはレミーアさんの家だから戻ってきたらいいわ。あたしも、まあ、戻ってくるなら、か、歓迎するわよ?」
レミーアとミューラに戻ってきていいと許可ももらったので、一安心だ。
ミューラは何故そこで詰まるのだろう。照れ隠しなのだろうか。こういう場面での彼女はいつもこんな感じである。
その後、いつも通り夕食を食べ、シャワーを浴び、この世界の常識について一通り復習して就寝した。
翌朝も朝食まではいつもどおり。
旅立ちの準備からは、非日常が訪れた。魔術の修行が今日から無いのだ。
「じゃあ、行って来るよ」
「うむ。お前達の脅威になるものはこの辺には無いが……まあ、気を付けろ。何が起こるか分からん世界でもあるからな」
「そうだなあ。注意して悪い事にはならないしな」
「そうよ。タイチなんか注意散漫なんだから。その辺の石でけっつまずくんじゃないかしら?」
「幾らなんでもそれはねぇよ」
「わかんないわよ? あ、そうそう。これ」
ミューラが手渡してきたのはバスケットだった。
「お弁当。街に着くまでに飛ばしてもお昼は絶対回っちゃうだろうしね」
「ミューラが作ったの?」
「つーか料理出来たのか」
「出来るわよ? レミーアさん程じゃあないけど、レミーアさんの代わりに作るのは問題無いわ」
そうなのか、と納得し、サンキューと礼を言う太一。
ふん、とそっぽを向くミューラ。
実は女性陣の中で唯一料理が出来ない凛が別の意味でそっぽを向いた。
そんな三人を見てほほえましそうな顔をしているレミーア。
少し名残惜しいのはあったが、今生の別れではないため、出発する太一と凛。
ミューラの予感通り、太一が足元の石にけっつまずいたのを追記しておく。
馬車で行っても一時間。
歩いても数時間の道のりである。
魔力強化をすればあっという間に着くのだが、これだけ心に余裕を持ってこの世界を歩くのは初めてのため、満場一致で道中急がないと決めたのだ。そのうち飽きたら、ササッと行こう、とは言っているが。
特に何が起きるでもなく、歩き始めて二時間が経った。
相変わらず目に入るのは見渡す限りの大草原。空も良く晴れていて気持ちがいい。
「ね、太一。あれ」
「ん? ああ、黒曜馬」
遠くに見える、巨大な黒い馬。それが、徐々にこちらに近づいてきている。
「相変わらず、旅人とか食ってんだよな」
「まあ、そういう生き物だし」
初対面の時とはまるで別人の落ち着き具合である。
あの時は、確かに殺されかけたよなあ、等と、懐かしむ余裕すらあった。
やがて完全に間合いに入ってきた肉食馬の巨躯が、一〇メートルほどの距離まで近づいてきた。
「最後に戦ったのいつだっけ?」
「えーっと、一〇日前かな」
「そん位か。圧勝だったよな」
「太一突進受け止めてたよね」
「凛こそ高水圧の弾丸で掃射とか割と酷かったぞ? 蜂の巣にしてたじゃないか」
「やり方が良くなかったのは認める……。あれはえぐかった……」
二人が慌てた様子を見せない事に、黒曜馬が怪訝そうな目をしている。今まで出会った人間の獲物は、全てが恐怖に染まった顔をしていたのに。
ミューラに教わったのだが、黒曜馬は中々高い知能を持つのだそうだ。また感受性も豊かで、獲物の感情の機微を敏感に受け取れるのだという。
問題は、今の太一と凛は、彼にとって獲物にはならない事である。
むしろ、太一と凛の獲物だ。
だが、魔力を一切放っていないため、黒曜馬には彼らの恐ろしさは分からない。
「駆除するか」
「ほっといても他の人とか動物とか襲うだけだしね」
「やる?」
「うん」
「任せた」
「任された」
太一が腕を組んで一歩下がる。
向き合う黒曜馬と凛。
ここに来て、彼らがいつもの獲物とおかしいことにようやく気付く肉食馬。
だが、気付いたときには、既に遅かった。
凛が左手を馬に向ける。
『ショック』
ドパァン! と盛大な炸裂音が響き、黒曜馬の巨体が一〇数メートル上に飛んだ。
空気を圧縮し、指定した座標で開放する魔術。ターゲットの足元で炸裂させたのだ。あの馬程度の質量なら吹き飛ばす程度は何も問題ない。
高い位置から叩き付けられ、馬が悶え苦しむ。
「さよなら」
ガン、と響いたのは、衝撃波の音だった。
黒曜馬の上空に小さな雷雲を発生させ、落雷させたのだ。
普通大規模な雷雲が必要となる雷魔術。レミーアはこれをサンダーと呼び、並の魔術師では一生かかっても実現できるか否かの風属性上位魔術だと言っていた。
凛は水属性と風属性を混ぜ合わせる事でより手軽に落雷を発生させられるようにしたのだ。
大きさの違う氷の粒を使い、雲の中で静電気を発生させるなどの細かい手順があるのだが、凛にとっては興味本位で調べて原理を知っていたため、問題なく起こせるだけだったりする。
重ねて言うが、普通は宮廷魔術師でも簡単には扱えないものである。
見ているほうは耳を塞ぐだけだが、数億ボルトの直撃雷を受けたほうはたまったものではない。
ブスブスと上がる煙。元々黒いためよく分からないが、丸焦げだろう。あれだけじたばたと暴れまわっていたのに、ぴくりとも動かない。
「あー、『サンダー』か。相変わらずすげぇ威力」
「一撃で仕留めたほうが、長引かせるよりいいでしょ」
「まあな」
一度は殺されかけた相手。
だが、今は彼らよりも圧倒的な優位な位置に立っている。
もう彼らに対して恨みはない。
むしろそんな思いに駆られていたずらに痛めつけるような真似は、二人とも一切するつもりは無かった。
因みに、生き物の命を奪う事にも、もう抵抗は無い。
最初は魔物相手とはいえ、そういう抵抗も確かにあった。
だが、それによって死ぬ人がいる事を考えると、無闇な慈悲は更なる被害を生み出す。
割り切りが必要だと、心構えもレミーアとミューラから教わっていた。
実力は確かに彼女達よりも上回ったかもしれないが、それでも頭は上がろうはずが無い。
「しっかし、上級魔術をこうもあっさり使うんだな」
「その私にあっさり勝つ太一は何なのよ」
「ごもっともだ」
太一はばりばりと頭を掻いた。
「まさか日本にいた時はこんな事になるとは思わなかったな」
「私もね。全くの予想外よ」
二人はこの世界でも有数の実力者だと言う。
未だ実感は無い。
冒険者として過ごせば、嫌でも思い知るだろうとレミーアからは言われている。
太一はため息をついた。
「普通だと思ってたら異世界ではチートでした」
「チートってのを否定できないのがとても嫌ね」
弱けりゃ弱いで苦労があり、強くなったらなったで苦労がある。というか度を過ぎて強くなりすぎである。
この先何が起きるのか。まだ見ぬ冒険者稼業を思い浮かべ、左右に首を振る二人だった。
これにて第一章終わりです。
ありがとうございます。
実は……この規模の物語を、ひとまずの区切りまで書いたのは初めての経験です(笑
今後もこの経験を生かして、太一君と凛ちゃんの異世界冒険譚を書いていきたいと思います。
現在第二章のシナリオの見直し&執筆を進めています。
作者都合ですみませんが、多少のメドがつくまでは次の更新をお待ちください。
~お知らせ~
今後、凛ちゃんの魔術は、化学&科学との融合となります。
優等生な凛ちゃんらしい感じにしたいのですが、残念ながら作者は授業中寝てる口だったのでそこまで詳しくありません。
知っている事象を思い出して、ネットで調べてから使っていく方針ですが、アイディアがかなり不足する事が予測されます。
活動報告にスレッドを設けます。
注意事項も該当スレッドに記載しますので、そちらをお読みいただき、もし宜しければ「こんな現象があるよ」と知恵を貸していただけると嬉しいです。
2019/07/16追記
書籍化に伴い、奏⇒凛に名前を変更します。