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異世界チート魔術師(マジシャン)  作者: 内田健
第一章:普通だと思ってたら異世界ではチートでした。
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太一と凛の正体

ついに第一章も後一話です。

異世界出身である事がバレます。

 今日の修行はかなり実があるものだったらしい。自分たちでも多少の手応えがあったが、レミーアの総評がそれを確信に変えてくれたのだ。

 曰く「予想以上に上達が早い」ということ。太一は右手だけの状態から始め、両腕に魔力を宿せるようになり、安定感も上がってきた。凛は四属性の基本魔術全てが成功し、火属性と水属性で応用まで出来た。

 もともとセンスがいい太一は、凛からすれば当然の結果。

 スポーツ、とりわけ球技で遺憾なく発揮されるその才能だが、凛が見る限りそれは多方面でも生かせるものだ。

 試験もその気になれば平均点以上は楽に狙えるのだが、太一が勉強が嫌いで面倒臭がるため、眠ってしまうことが多いだけである。自分が怠けた癖に赤点を取れば一丁前に落ち込むのだから、その度にやれば出来るのだから、と進言しているのだが。

 恐らく今回の修行もそのセンスが発揮されたのだろう。やれば出来る子が優秀な講師の元でやることをこなしたのなら、その成果は推して知るべし。

 一方凛の成果にも、太一は驚くことはない。彼女は優等生だ。但し、特に優等生であろうとしている訳ではない。

 目的地に至るまでに『出来ることは全てやる』事を信条としている凛。彼女の優等生ぶりはその結果だ。本人は結果が良くても悪くても気にはしない。今日もそれを実行しただけだ。普段と何も変わらない。

 基礎魔術四つを成功させ、応用を行った。火の魔術では青い火を出し、水の魔法では生み出した水球を冷やして氷にしたという。ミューラはとても驚いていたが、凛からやり方を聞いて納得した。青い火はガスバーナーを、氷は水の原子運動を遅らせたのだと。太一は言われて「ああ」と思い出す程度だが、凛は最初から覚えていてもなんら不思議ではない少女だからだ。

 出足は上々と言っていいだろう。

 キッチンで料理をするレミーアの後姿を眺める。フライパンではハムステーキが食欲をそそる音を立てて焼けている。

 この世界には加工食品というものはあまり無い。今焼かれているハムステーキも、スーパーなどで売っている「後は焼くだけ」状態のものではなく、生肉から仕込まれている。昨日の昼頃やってきたレミーア懇意の商人から仕入れたものだろう。

 食事はブラックペッパーの香りが効いたハムステーキと、チーズとハムが乗った色合い豊かな緑野菜のサラダ、そして汁物に滑らかな舌触りのクラムチャウダー。炭水化物はパンだった。この世界には米は一般的にはあまり出回っていないようで、とある国に行かないと食べられないという。

 もちろんパンも香ばしく焼けていてとても美味しいのだが、食べれないとなると米が恋しくなってしまう日本人二人。この世界の米を味わう! と、冒険者として目標を密かに立てたのは凛であった。

 とはいえ、現状の食事に不満があるかといえばそういうわけではない。ファミレスで食べるよりはよほど美味しい。流石に料理専門店と比べてしまうとレミーアが可哀想だが、それでも家庭の手料理としては十分過ぎるほど美味である。

 結局今日の夕食も、ミューラが若干呆れるくらいにがっついてしまった太一。凛も控えめではあったが、いつもより空腹だったのか食べる量が多かった。作り手としては文句なしの食べっぷりに、上機嫌のレミーアだった。

 

「あー、食った食った」


 おなかをさすりながら背もたれに身体を預ける太一。もう食べられない、と顔に書いてある充足ぶりだ。少しだらしのない姿勢も、少しは大目に見てもらいたいところだ。

 その横で凛がコーヒーを上品に飲んでいる。別にいいとこのお嬢様ではない。姿勢とスタイルがいいせいか、妙にそういう仕草が似合うだけだ。


「ふふ。気持ちのいい食べっぷりだな」

「すみません、あまり遠慮もせず」


 自分も結構な量を食べた自覚があるのか縮こまる凛。

 レミーアがいやいや、と手を左右に振った。


「私もミューラもあまり食べるほうではないからな。作る側としては、そうやって食べてくれるほうが嬉しいものさ」

「そう? 明日もがっつり食っちゃうよ?」

「ああ。たくさん食べてくれ」

「何の宣言よ?」

「いいじゃねぇか、喜んでくれてるんだし」

「そうだけど。私達は居候なんだから。お金だって払ってないのよ?」

「構わんさ。金には一切困っておらんからな」

「そうなんですか?」


 居候二日目に使用した魔力値測定魔術。あれを国に売ったときの収入が凄まじい事になっているらしい。

 具体的には、贅沢をしながら一生を働かずとも、一〇人ほどは軽く養える程度に。それ以外にも趣味で行っている魔術開発の依頼を受けたりしてそこでも安くない報酬を得ているため、太一一人が少し多く食べたくらいでは全くもって揺るがないと言う。

 流石は超一流の魔術師といったところだろうか。


「さて。片付けてゆっくりしよう。修行は明日からもまだまだ続くからな」

「そうですね」

「はいよ」


 太一と凛が席を立つ。

 と、レミーアが一切動かないミューラに気付いた。

 普段からあまり会話に口を挟まない彼女だが、家事などは積極的に手伝う姿勢を持っているのを太一も凛も知っている。そんな彼女だから、こういうときは率先して席を立つのだが、今は一切動かなかった。


「ミューラ?」


 反応をしない、というリアクションが気になったレミーアが声を掛ける。

 太一も凛も彼女を見ていた。

 どうやら無視しているわけではないらしい。ミューラがやがて顔を上げ、そして、太一と凛をじっと見据えた。

 そして、その瑞々しい唇が、小さく動いた。


「ねえ、タイチ、リン。貴方達、どこから来たの?」


 それは二人の急所を突く言葉だった。

 ライター。ガスバーナー。原子の減速。

 ミューラとの修行中、凛が口にした言葉の数々。目を丸くして凛を見る太一。しまった、と口元を押さえる凛。

 時が来るまで自分たちが異世界人であることは黙っていよう、と考えていた。

 不用意に日本で知った単語を口にしない。それが、二人が決めた事だ。いつ話すかは分からない。もちろんいつまでも隠し通せるとは思わないし、明かすのは明日かもしれないし、一週間後かもしれないし、一ヵ月後かもしれない。

 二人が危惧したのは、「こいつらはおかしい」と判断される事。ここで再び放り出されては、今度こそ生きていけない。言うタイミングを計っていた事だった。

 太一がそのミスを犯すかもしれない、という事は、本人がやや警戒していた事だった。だが、凛がそれをやってしまうとは。彼女にしては珍しい、本当に珍しいミスである。

 取り繕えるか?

 誤魔化せるか?

 そう考えていた太一と凛だが、レミーアの「この世界には存在しない言葉だな」という一言が、ゲームセットを知らせるサイレンとなった。


「この世界に存在しない、ですか?」

「ああ。どういう事か、聞かせてもらうとしよう。ひとまず、ぱぱっと片付けてしまおうか」


 食器を流し台で洗いはじめるレミーアとミューラ。

 ダイニングに残された太一と凛。


「ゴメン」


 凛が口にした一言目はそれだった。

 太一としては彼女を責める気は微塵も無い。やってしまうのは自分だと思っていたからだ。

 むしろ、自分が謝るだろうと思っていただけに、謝られるのは完全に想定外。そんな思いを抱えながら、頭を小さく下げる凛の顔を上げさせた。


「謝らなくていいよ。どの道バレるか、バレなくても明かすつもりだったんだ」

「でも、追い出されるかも」

「それは仕方ない。もう誤魔化しも効かないだろうし、素直に話すしかない」


 太一の言う事は尤もだった。

 この世界には無い、ときっぱり断言されてしまったため、いくら誤魔化そうとしてもそれは裏目に出るだけだ。


「それに。案外、先延ばしにしていたのは無駄だったかもしれないぞ?」

「え? どうして?」


 どうやら、冷静なのは見た目だけで、内心では相当気が動転しているらしい。

 普通なら凛の方が洞察力に優れるはずなのだが、彼女は気付いていない。今まで言われて気付く側だった太一としては、立場が逆転していてちょっぴり面白い、と不謹慎な思考をしていた。

 やがて洗い物が終わったレミーアとミューラが並んで座り、対面に太一と凛が座った。四人の前にはそれぞれクーフェが置かれている。初日に魔術について講義を受けたのと同じ配置である。


「さてと。タイチとリン。お前達は『迷い人』だな」

「迷い人?」

「なんです、それ?」

「レミーアさん、それ、あたしも知りません」


 迷い人、という単語に、三人が揃って疑問符を浮かべた。


「うむ。多くて数十年に一度……少なければ一〇〇年単位で起きない事もあるそうなのだが、別の次元にある世界から、この世界にやってくる者がいる。文献では、そういう者を『迷い人』と呼んでいるのを思い出してな」


 一体どれだけの文献を読んでいるんだこの人は。

 この世界の人間でない事に驚いてない?

 そんな事が起こるなんて。

 それぞれ上から太一、凛、ミューラの感想である。


「何らかの切欠で次元に穴が空いて、落っこちてやってくる。或いはこちらの魔術師が、次元を超える魔術を行使し、異世界の人間を召喚する。この世界にやってくる手段としてはこの二つだな。タイチ、リン、お前達がこの世界に来るとき、穴に落ちてきたのか?」

「いや? 確か、足元がいきなり光って、気付いたらここにいたな」

「ええ。妙な円の中に私達がいて、それが強く光って目の前が真っ白になって……気付いたら、草原にいました」

「ふむ。お前達は召喚されたな」

「召喚……? 誰かが俺達を呼んだって事か?」

「そうだ」

「何のために?」

「それは召喚魔術を使った者に聞くしかないな」


 ごもっともである。


(気付いたら、草原に……? 召喚魔術、確か……。これは、予想以上に厄介事かも知れんな。いや、こいつらはむしろ幸運なほうか……)


 自身の庇護下に入っている時点で、この世界に存在する脅威の半分以上から遠ざけられていると言っていいだろう。着いた場所が魔物の巣だった場合、今頃消化されているはずだから。

 レミーアはその思考を、ひとまずは振り切った。現時点で大事なのはそれではない。


「召喚魔術を使ったのは、まあ端的に言えば時空魔術師だ。細かい説明は省くが、時間と空間を操る属性。それが時空属性だ。それを十二分に操れる優れた術者は、次元の壁に穴を開く事も出来るからな」

「じゃあその時空魔術師とやらが、俺達をこの世界に呼び出した、って事か」

「ン? ああ、まあな」


 太一の表情に若干の棘が入っている事に気付いた。生返事をしている間にそれは消えてしまったが。


「私達、異端ではないんですね?」


 凛の言葉が、心情を全て表していると言っていいだろう。

 二人が何をもって『異世界人』であることを黙っていたのか、レミーアもミューラもそれで察する事が出来た。

 つまり、自分たちがこの世界にとって『異分子』だという自覚があるという事だ。


「何だ、それで追い出されるとでも思っていたのか。心配要らんさ。迷い人の珍しさはユニークマジシャンと変わらんからな。私が読んだ文献には、この世界で生きた迷い人の生活も簡単に記されておったよ。この世界の人間と、協調して生活を営んでいた、とあったな」

「そうですか」


 ホッとした様子の凛。彼女は苦労性なのだろう。太一のようにもう少し楽天家でもよいのではないか。それは性格だから、無理な相談なのだろうが。

 いやこの場合、太一が気にしなさすぎ、という事も出来るか。


「一応確認しておこう。エリステイン王国。この言葉に聞き覚えは?」

「いや無い」

「シカトリス皇国は?」

「知らないです」

「ガルゲン帝国」


 二人揃って首を横に振る。


「お前達が住んでいた国は?」

「日本」

「ニホン……ミューラ、聞いた事は?」

「あたしは聞いた事無いです」

「私も無いな。この世界には存在しない国、と見ていいだろう。更に、この世界に生きていれば子供でも知っている三大国家を知らない。召喚魔法陣らしきものも見たと言うし、迷い人で確定してしまっても良い位に要素が揃っている」


 レミーアはクーフェを一口飲んだ。

 それに倣ってクーフェで喉を潤した凛が口を開いた。


「でも、召喚されたのに迷い人って変ですね」

「そうだな。どういう理由かは知らぬが、召喚された者も、次元の穴に落ちた者も一くくりで迷い人とするそうだ。異世界から来た者の総称のようなものだから、あまり気にする必要もなさそうだがな」

「そうですね」


 重要なのは語源ではなく、自分たちが異世界人であるという事だ。もし気になったら、また後ほど調べてみればよい。


「俺が不思議なのは、何で言葉が通じるか、って事だな。俺達の世界の言葉と、この世界の言葉が一緒とは思えない。なのに、俺達コミュニケーションで困った事は無いんだ」


 異世界から来たと言うのに、会話が出来る。

 それはずっと疑問に思っていたことだ。

 日本と同じ言葉を使っているのかと思ったが、文字を見ると読むことが出来なかった。まるで違う言葉を使っているはずなのだ。

 なのに、何故。

 とりあえずコミュニケーションは取れるためそこまで問題視はしなかったが、どうしても気になっていた事でもあった。

 太一の疑問に対して、レミーアは「恐らくだが」と前置きして答えた。


「召喚対象に、翻訳の効果をもたらす術式がオプションで組み込まれた召喚魔術だったのだろう。召喚対象とすぐにコミュニケーションが取れるようにな。相手を混乱させないための配慮だとは思うが……」


 召喚された時点で配慮も何も無いな、とレミーアが呟く。太一は大いに同意した。


「ところで、過去この世界に来た迷い人は、元いた世界に戻れたんですか?」


 凛の言葉に、太一もレミーアを見る。ミューラからも視線を向けられ、しかしレミーアは静かに首を横に振った。


「私が見た文献に記された迷い人は、皆この世界で残りの人生を終えたと記されてあった」

「それって何? 帰れない、って事か?」

「私が知る限り存在するのは、次元の向こう側にいる人間をこちらから呼び寄せる魔術だけだ」

「召喚があるのにその逆は無いんですか?」

「確かにな。召喚があるなら送還があってもおかしくは無い。だが、私には心当たりは無い。召喚する必要はあっても、送還する必要は無いのだろう」

「そんな勝手な」

「マジかよ……」


 嘆きも最もだ。

 こちらの都合を一切無視して呼び出して、帰る時のことは知りません、では無責任にも程がある。

 二人が言葉を失い、室内に沈黙が腰を下ろす。

 今までの覇気が無くなってしまった太一と凛にフォローが必要だと感じたレミーアが続きを紡いだ。


「これは慰めだから聞かなくても良いが、お前達は運が良い方だぞ」


 太一が顔を上げ、凛がぴくりと動いた。


「この世界に、どれだけ迷い人がやって来ているのか、正確な記録は残っておらん。文献で、そういった事例がありうる、という事しか私達には知る手立てが無い。何故なら、召喚魔術は最高深度の秘匿技術故に、実施したとしても記録を残さぬからだ。また次元の穴からこちらの世界に落ちてきた人間が、この世界で生活できるようになる確率が限りなく低いからだな。数十年から数百年に一度、というのも推測でしかない。文献にも、それを証明できるものは何一つ無かったしな」

「そうなんですか?」


 ミューラが続きを促す。彼女もこの件については詳しくない。二人が心配だという気持ちと共に、自分の知識欲もあった。


「うむ。タイチとリンの事例が、召喚魔術が安全ではないと証明しているし、次元の穴からやってきた者が、安全な場所に辿り着ける可能性は限りなくゼロに近い。タイチ。冒険者三人組が助けてくれなかったらどうなっていた?」

「いや……うん。死んでた、間違いなく」

「そういう事だ。現れた場所が草原や荒野のど真ん中なら、魔物に襲われてアウト。襲われなくても、彷徨っているうちに飢えと水分不足を解消できずにアウト。出会った人間が野盗のようなならず者でも碌な目には遭わぬ。この世界で迷い人が生き残るには、奇跡と言っても良い偶然が揃わねばならん。そういう知識と技術、戦闘能力を持っていなければ生きられん世界だ、ここは」


 仮に街に辿り着いても、自分の身を立てる手段が限りなく少ない事もラケルタとメヒリャから聞いている。

 この世界は本当に厳しい。

 バラダー達に拾われた。偶然の産物とはいえ、魔力の適性があった。レミーアに保護してもらった。冒険者として生きてゆくため、最高の師二人から魔術を教わっている。

 これだけの都合がいい偶然が重なり、今椅子に座ってクーフェで一息がつけている。

 これを奇跡と呼ばずに何と呼べばいいのか。

 一度、自分たちは運がいいと気付いたはずではなかったか。

 どんな理由と原因があれ、この世界に来た時点でそもそも理不尽だったはずではなかったか。


「そうだなあ……死ぬよりはマシか」

「太一」

「死んでたら、悩む事も落ち込む事も出来ないしな。贅沢してるじゃん、俺ら」

「また分かったような事言って……。うん、でも、そうだね」


 生きていれば、何とかなるかもしれない。

 諦めてしまっては試合は終了してしまう。

 ベストセラーとなったスポーツマンガでも言われていたことではないか。


「立ち直ってくれて何よりだ。元の世界に戻る事について手助けは出来んが、この世界で生きていけるようにはしてやる。この世界の常識も、知っておく必要がありそうだな」


 よろしくお願いします、と凛が頭を下げた。


「心配要らん。これでも八三年生きているからな。大抵の事は教えてやれるだろう」

「え?」

「え?」

「ん?」


 上から太一、凛、レミーアである。

 知っていたらしいミューラは「ああ、言ってなかったか」という顔をしていた。


「いや待った。レミーアさん、どう見ても二十代……」

「そうか、この世界の常識を知らなんだな。私はハーフエルフだからな。エルフのミューラと比べて見た目はまるきり人間だが、寿命は三〇〇年程あるのだよ」


 ミューラは耳が尖っていて類稀な美貌を持っている、という点で、エルフではないかと当たりはつけていた。特に確認はしていないが、ファンタジーな作品に登場するエルフと特徴がまるで一緒だったからだ。

 だがレミーアの場合、凄まじい美貌ではあるが、耳が尖っていなかった。人間の成人女性だとばかり思っていたのだ。

 因みにエルフの寿命は、個体差があるもののかなり長く、五〇〇年から一〇〇〇年程らしい。


「ハーフエルフは、両親のどちらかの特徴が出る。エルフと同じく耳が尖る可能性もあるし、人間と見分けがつかない可能性もある。私は後者だった、という訳だ」

「はあ……」

「寿命が三〇〇年とか、ファンタジーだわ……いや、今更か」


 既に魔術を使っている時点で、自分たちもそれに染まっていると気付いてしまった。


「この世界についても合わせて教えてゆくとしよう。明日からは忙しくなるな」


 魔術の修行にこの世界の常識。

 既に日本での常識に染まってしまっているため、新たな常識を詰め込むのは結構大変だろう。

 だが、生きていく上で必要な知識であるのは間違いないため、やらない訳には行かない。

 勉強そのものを苦にしない凛のケロッとした表情と、うんざりした太一の顔が、内心で何を考えているのかを露にしていた。

2019/07/16追記

書籍化に伴い、奏⇒凛に名前を変更します。

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