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異世界チート魔術師(マジシャン) 作者:内田健

第一章:普通だと思ってたら異世界ではチートでした。

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只今修行中

黄金週間に書き溜めする予定です。
 魔力量も魔力強度もありえない。
 それがレミーアから告げられた非常識その二である。
 しかし太一も奏もそれほど驚かなった。もう驚くのすら疲れた、というのが正直な気持ちである。
 いちいち驚いてその度に固まっていたら先に進まない。思うところはあるものの、一応の結論を出した二人は、予定通り修行を開始した。
 その判断は賢明だと、レミーアが同意してくれたのも後押しに一役買っている。

「魔術を扱うには、魔力を扱えなければな。まずは自分の魔力を具現化させてみるのだ。それが出来たら次の段階へ進もう」

 言われたのはそれだけ。
 二人揃って手のひらをじっと見つめている。魔術を扱うためには誰しも通る道とのことだ。

「うぐぐ……」
「……」
「ぐぬぬ……」
「……っ」
「ぐむーっ……」
「……っああ! うるさいもうっ!」
「っおわ!?」

 横で唸る太一に、奏が声を荒げた。
 集中はしてたらしく、突如声を上げた(ように太一は感じる)奏に驚く太一。

「なんだよ! ビックリするだろ!」

 太一としては当然の抗議だった。しかし。

「横でブツブツ言われたら集中出来ないでしょ?」
「え。声出してた?」
「うん。バッチリ」
「マジか。直ったと思ったのに」
「あの時もそうよね。入試試験の追い込み。方程式とにらめっこ」
「あああ思い出させるなよ!」

 今年の頭。入試直前にも関わらず、余裕ぶっこいてまともに勉強してなかった太一が、実力テストで現実(赤点)に直面し、奏に泣きついて家庭教師してもらったのだ。
 家だと誘惑が多いということで近所の図書館で勉強したのだが、その際に事件は起きた。考え事すると唸る癖がある太一。数学の方程式という強敵を前に、例によって唸りはじめた。集中しているためあえて見逃していた奏だったが、結局他の受験生から「うるさい」とお叱りを頂戴し、肩身の狭い思いをしたのだ。
 実は勉強という名のデートという見た目に、大いにやっかみも含まれたお叱りだったが、太一も奏もそれには気付いていない。

「いやー煮詰まるとどうもなあ」
「気持ちは分かるわ……」

 集中と一緒に緊張も途切れ、溜め息をつく二人。もうかれこれ数時間はこれに費やしているのだから、仕方ないといえばそうだろう。

『クスクス……』
「ん?」
「どうしたの?」
「いや……誰か笑ったか?」
「へ? ちょっと……変なこと言わないでよ」

 幽霊とかお化けとか、そういう心霊の類は苦手な奏がぶるりと震える。太一もしばらく気にはしたものの、それっきり声は聞こえなくなり、その事は頭から無くなった。
 結局進展が無いまま一日が過ぎ二日が過ぎ……そろそろ集中力が持たなくなって来た頃。
 何時ものように裏庭で魔力操作の修行を進めていると、ミューラがこちらに近付いてきた。

「どう? 何か掴めた?」
「いんやさっぱりだ」
「魔力なんて縁がなかったからねー。手探りよ」
「いきなり出来るわけ無いじゃない。最初の難関なんだから」
「それはそうなんたけど……」

 苦笑する太一に奏が首を左右に振る。
 ふと、ミューラが人差し指を上に向けた。

『火よ』

 その指先が仄かに輝き、やがて小さな火が灯った。ライターで着けた火に近い。

「うわー……」
「何でもないように使われるとへこむわね……」

 息をするように魔術を使われ項垂れる二人。

「魔術はイメージよ。明確なイメージに追随する。それが魔術であり、その大元の魔力も然り」
「……」
「だから自分の魔力をどうしたいのかイメージして……って、何よ?」

 訝しげな顔をするミューラ。太一と奏が呆けた顔をしていたからだ。

「い、いや。やり方なんかあったのか……」
「え。何も言われなかった?」
「うん……魔力を具現化させろ、としか……」
「またあの人は……」

 盛大な溜め息をつくミューラ。

「また?」
「肝心なところを端折る癖があるの、あの人」
「そういうこと」
「俺はミューラが教えてくれたことも驚いたけどな」
「は? 何でよ?」
「最初会ったときあんなに邪険にされたからな。嫌われてるのかと思ったぜ」
「っ……」
「それはセクハラ働いたからじゃないの?」
「奏……今日はやたらと抉ってくるな……」
「気のせいよ」

 ふとミューラが踵を返し、ずかずかと歩き去っていく。

「お、おいミューラ!」
「どうしたの!?」

 肩を怒らせるその後ろ姿に戸惑う二人。
 すると。

「勘違いしないでよね! あんた達がじれったいから、ちょっと気が向いただけなんだから! いつでも教えたりはしないわよ!」

 言うだけ言って再び向こうを向いて歩き去るミューラ。呆然と見送る太一と奏。実はこれこそレミーアの狙いだと、ミューラは一切気付かないのだった。



◇◇◇◇◇



「魔術はイメージ……指先に集まれ」

 先ほどのミューラの言葉を受けて、素直に実践してみる太一。
 しかし、変化はない。

「やっぱ簡単じゃないか」

 恐らくミューラのアドバイスはコツのようなものだろう。とはいえ、簡単に出来はしない。
 それは奏を見ていてよく分かる。
 彼女はテニスにおいて全国区の実力者。テニスという分野においては学生でも屈指のレベルである彼女だが、サーブが苦手だという。苦手だからこそそれを克服しようと理論やコツを幾つも学んだそうだが、だから出来るかといえばそうでもない。
 今は大分改善したようだが、それも気が遠くなるような反復練習を重ねた結果らしい。

「イメージ……指先に、力を……」

 奏も太一と同じようにしているが、いまいち掴めていないようだ。

「イメージは結構はっきりやってると思うんだけどな……」
「上手く行かないものね」

 この世界の人間でないことがネックなのだろうか。魔力なんてものと縁がなかった世界にいただけに。ぼんやりとそんなことを考えた太一だが、それは外れてはいない。
 幼い頃から、魔術そのものが珍しくない常識の中で育った者と、そもそも魔術が無い世界で育った者。
 どうやらゲームやマンガのようにはいかないらしい。精神的な疲れが大きい。今日は止めようか。そう思ったところで、

『がんばって』

再び、声が、聞こえた。

「え?」

 幻聴か?
 否、確かに聞こえた。
 幼い、女の子とも男の子ともとれる声。

『まりょくもってる』
『いっぱいある』
『もうすこしでできる』
『まりょくはかたまり』
『ふわふわ。ぽかぽか』
『からだのまんなかにある』

 幻聴では、ない。
 舌っ足らずな子供の声。
 一人や二人ではない。
 最低でも、四人。
 皆子供の声だが、確かに違う。
 太一は勢い良く振り返り、そして周囲を見渡した。
 誰もいない。
 では、この声は、どこから?

『クスクス』
『きこえてる』
『よかった』
『はやくあいたい』
『がんばって……』

 それを最後に声は聞こえなくなった。ふと横に顔を向ける。奏が微妙な顔をしていた。

「また何か聞こえたの?」
「あ。四人くらいいた……」
「止めてよ、ほんとに……」

 とはいえ、太一としてもどうしようもない。聞こえてしまうのだから。
 それよりも、だ。

「魔力は塊。ふわふわで、ぽかぽか」
「何、急に」
「身体の真ん中……っ!」
「ちょっと、どうしたの?」
「指先……来い」

 ふわりと。暖かい風が瞬間吹き、太一の人差し指が淡い光に包まれた。

「ちょっ……!」
「で、出来たの!?」

 太一は、光輝く自分の指先に、暫し見とれた。そして、何か聞きたげな隣の親友に、原因を教える。

「声が教えてくれたんだ。魔力は塊で、ふわふわしててぽかぽかしてるって。で、身体の真ん中にあるんだって」
「うっそお……」
「俺も信じらんねえ……でも、その通りにしたら、ほら」

 と、目の前に証拠を見せられては、それ以上何も言えることはなかった。
 半信半疑のまま、奏も太一の言葉に従ってみる。
 すると。

「ええー……出来たんだけど」

 あまりに呆気なく出来てしまい、今までの苦労は何だったのかとうんざりしてしまう奏。

「ま、まあ出来たんだからいいじゃん」
「そうだけどさあ」

 納得してなさそうな奏だが、これは一度出来てしまえば、何度でも出来ると思わせる類の技術だと何となく分かる。

「よし。じゃあレミーアさんに報告しようぜ」
「何も気にしないのね、太一って」

 呆れている奏。

「気にならない訳じゃ無いけど。悩んで解決するような事じゃ無さそうだし」
「そのアバウトさ羨ましい」
「……誉めてんのか?」
「誉めてるわよ。三割くらい」
「ビミョー。超ビミョー」

 軽口を叩き合いながら、家の中へ戻る二人だった。

「早いな……もう出来たのか」

 報告と共に、魔力を操れている事を確認したレミーアは、割と本気で驚いていた。

「ちょっとしか教えてないのに……信じられない」

 アドバイスを贈ったミューラも目を丸くしている。
 本来、魔力を操れるようになるまでが一番時間がかかるところなのだ。普通に修行して、高いセンスと適性を持っていても早くて一ヶ月。普通は三ヶ月、長い者は一年かかることもあるのだ。一週間どころか三日以内で出来るようになるとはレミーアもミューラも思っていなかった。ミューラによるアドバイスがあったとしても、だ。
 レミーアとしては、圧倒的な資質を持つ二人がどの程度で魔力を操れるか知りたかったため、あえて詳しいやり方を省いた。途中ミューラがちょこちょこアドバイスをすることも計算に入れたが、それでも最短で三週間はかかると見込んでいたのだが。

「ふむ。一先ずおめでとう」

 とはいえ出来たのなら次に進むべきだろう。一度操れるようになったら、後は修練次第で上達するのみで、使わないからといって忘れてしまうような技術ではない。足踏みしているのは時間の浪費だ。
 その前に、聞いてみたい事がレミーアにはあった。

「次は魔術の練習だが、その前に一つ質問をしたい」
「?」
「何ですか?」
「うむ。魔力の操作は、どれ程才に恵まれたとしても、三日やそこらで出来るものではない。何が理由か、教えてくれるか?」
「ええと。声が聞こえたんすよ」
「声?」
「はい。舌っ足らずな子供の声で、魔力は塊とか、身体の真ん中にあるとか」
「……」

 信じられない。それが素直な感想だ。もしそうなら。

「何か分かりますか?」
「うむ……いや、すぐに答えを出すことは出来そうにない。悪いが、少し調べさせてくれ」
「はあ……?」

 妙に歯切れの悪いレミーアだが、特に異論があるわけでもなく、太一は了承した。

「ちょうどよい。昼食を食べてから魔術の練習を始めようか」

 時計を見るといい時間だった。早速料理を始めるレミーア。ずぼらな割に料理が趣味だったりするので世の中分からない。
 心霊が苦手な奏が「声の正体はもしかして幽霊?」とおっかなびっくり尋ね、ミューラが「可能性として有り得る」とさも当然のように答えた。聞かなきゃ良かった、とかなりびびっていたのは余談である。


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