みらいのこと
「なあ、お前の父ちゃんて死んだ人生き返らせる方法探してんの?」
「死んだ人じゃないよ、眠ってる人だよ。」
「へえ。お前のことには興味ねえのに、眠ってる人には興味あるんだ。」
「え。なんで興味ないって言うの?」
「だって、お前服汚いし、意地悪されてても助けてもらえないんだろ。かわいそ。」
「服は、いいんだよ。パパはもっと大事な仕事してるもん。意地悪も、しょうがないよ。パパには関係ないし。」
「へえ。お前って本当に大人にとって都合のいいやつだな。勝手に汚ねえ服着せる父ちゃんのことすげえと思って、意地悪されても黙ってるだけなんだ。はー大人だわ。すげえすげえ。」
「何もしないじゃん。」
「あ?」
「お前だって俺に何もしないのになんでそんなに偉そうなの?」
「は?何?なんかして欲しいの?俺がお前のために?なんで?」
「別にしてほしくない。別に、誰かが助けてくれるなんて思ってない。」
「いいんだ。へー。お前がお前のままじゃあ、意地悪を止めるのは、簡単じゃねえからな。俺だって、結果が出ないことをやりたくはねえよ。」
「はあ。」
「お前が動いてもいいって言うなら協力してやってもいいぞって言ってんだよ。」
「気持ち悪い。」
「ああ?」
「そうやって、かっこつけてればみんな自分のこと好きになってもらえると思っている感じが本当に気持ち悪い。」
「あーそ。だったら俺の前で不幸そうな顔するんじゃねえよ。目の前に不幸そうな人がいたら自分の力が足りてないみたいに思っちゃうだろ。他の奴らと笑うのもなんかさ、不幸そうなやつがいると自分が悪人みたいに思えてくるんだよ。」
「はは。聖人みたい。あほだあ。」
「そういえばお前なんで、そんな声小せえの?
聞こえねえんだけど。」
「え?
ちゃんと喋ってるよ。」
「喋ってるのは分かるんだよ。
喋ってるくせに、聞き返されて、もう一回喋り直すの効率悪いだろ。」
「私が?
うーん、でもこれ以上声出ないよ。」
「嘘つけ。
お前が先生達と喋るときは聞こえる様に喋ってるの、俺見てるからな。」
「そうかな?
自分では声の大きさを変えてるつもりないけど。」
「先生には聞こえる声で喋るのに、私達には聞こえない様に喋るんだーって言われてたぞ。」
「え?え?そんなことないよ?」
「だから、大きい声で喋れって言ってるだろ。」
「うーん。喋ってるのになあ。」
「はあ?」
「ねえ、ねえ、誰?
誰が悪口言ってたの?」
「はあ?言わねーよ。
俺がチクったって言われるだろ。」
「意外と気にするんだね。」
「あたりめーだろ。嫌われながら毎日同じ空間で過ごすのはしんどいだろうが。」
「えっ珍しい。なんで2人が喋ってるの?まさか付き合ってるとかあ?」
「なわけねえだろ。なあ、こいつ声小さくねえ?」
「ああ。そうだね。ええ?て言うかそれ、触れて良かったんだあ?触れちゃいけない系かと思ってた。」
「はあ?声聞こえなかったらイラッとくるじゃねえか。」
「うん。そうだねー。もうちょっと大きい声で喋って欲しいかも。あっ。でも余計なお世話だったかな?声小さい方がこうやって男子に構ってもらえるもんね。」
「え。」
「ていうかあんたってさ、本当天然なのか意図的なのかよく分からないよね。」
「はあ?天然じゃねえから全部意図的だな。」
「そうかなあ?」
「大体さ、俺知ってるんだよ。
天然って、本当は後ろのバカかボケを言おうとしてるんだろ?」
「うーん。そんなことはないんじゃない?でもまあそういう人もいるかもね。」
「俺は、皆を笑わせたいのであって、笑われたいんじゃねーからな。もう天然って言われるのは嫌なんだよ。」
「皆を笑顔にできるなら、笑わせるのでも笑われるのでもでもすごいと思うけどなあ。」
「はあ?なに?お前俺のこと好きなの?」
「好きだったらどうするの?」
「喜ぶ。」
「子どもじゃない。」
「子どもは嫌いかよ。」
「ううん。でも、恋愛対象としては見られないかな。」
「ふーん。」
「気持ち悪い。」
「は?」
「お前さ、俺らと遊んでていいわけ?」
「は?」
「お前のクラスのやつ、あっちでドッチボールしてるけど。俺たちは俺たちで、同じクラスで集まってるし。」
「あー本当だ。気づかなかったわ。でも俺、お前らと遊びたいんだけど。」
「まあ、お前がいいんなら、いいんじゃね?」
「ありがとう。遊びたいやつは変わらないのに、皆誰と遊ぶかクラス替えで変えるんだな。先生に友達まで決められるみたいでなんか嫌じゃねえ?」
「そうか?まあ授業の話とかクラス内での話が合わなくなるからじゃねえ?」
「確かにな。まあ、あいつらとも仲良くしとくか。一旦俺のクラスの方行っとくわ。たまにはクラス違くても遊ぼうぜ。」
「うす。またな。」
「夏休み終わったから楽だわあ。」
「ああ、お子さん、学校始まったんですね。」
「そう。
学校嫌そうだったけどね。」
「ああ。
朝起きるのとか大変ですよね。」
「それもそうなんだけどね。
ずっと座ってるのが苦手みたいなのよ。」
「座っているのが?」
「授業が終わってるまで、毎日教室の椅子で座っていなきゃいけないのが耐えられなくて、明日は来ないって思いながら、なんとか座ってるらしいのよ。」
「それはまた、ある意味では精神力が強いのかもしれないですね。」
「そうね。
診てもらいたいときはお願いするわね。」
「はい。」
「キス、ですかね。」
「御伽話ですか。」
「ただ問題は、」
「誰がするか、ですね。」
「まあ、他のやつにさせるくらいであれば、俺がします。」
「へえ。兄妹で結婚はできませんよ。」
「何処の馬の骨とも分からない人間とするよりはましでしょう。」
「相手が運命の人で、一生添い遂げる可能性もありますよ?」
「とにかく俺はそんなもの見てられません。却下です。」
「何か聞こえた?」
「ええ。あなたの声が。」
「他には?」
「分からないけど、とにかく楽しそうな声。全部照らしては吹き飛ばしてしまうような笑い声。」
「その声で起きたの?」
「何が起こっているのか、気になったの。」
「子どもができた。」
「え?誰が?」
「妹。」
「え。目覚めたの?」
「ううん。目覚めない。」
「え。大丈夫なの?」
「生きてるよ。妹も。子どもも。」
「そっか。大丈夫?」
「分からないよ。二人とも、話すわけじゃないから。でも、産むときは痛そうだし、苦しそうだったみたい。」
「あの子は、未来なのよ。」
「え。ああ、ごめん。
分からなくて、名前は他の名前で呼んでるんだ、多分。
ああ、でも、もしかしたら変えられるかな。」
「名前じゃなくてね。あの子は、未来の破片から生まれたのよ。」
「破片?どうしよう俺、色々なことがよく分からないんだ。」
「私が少し未来にとんでしまったことがあってね、そのときに、未来で会った方の一部が入り込んでしまったのよ。その後、あの子が生まれたの。」
「そう、なんだ。」
「おはよう。」
「おはよう。」
「姉ちゃん、なんか楽しそうじゃん。」
「そう?ふふ。私、楽しそうなんだ。」
「何かあったの?」
「さあ?ちょっと言えないかな。」
「意味わかんねー。」
「ねえ、何か欲しいものある?」
「俺?なになに、珍しいじゃん。」
「暖かい服とか欲しいなあ。」
「暖かい服ね。」
「あと、母さんもなにか貰ったらたまには元気出るかな。
あれ、元気?なんでないんだっけ?」
「姉ちゃんが、幸せな人生なのか分からなくて?あれ、姉ちゃん、何かあったっけ?」
「姉ちゃんはね、みんなが幸せなのが一番幸せなの。
だから、母さんは、もっと自分の会いたい人と会って、したいこと素直にして欲しいな。
あんたはね、勉強しなさい。勉強して、面白いこと沢山見つけて自分を幸せにするための努力をしなさい。自分と自分の周りの人を幸せにする覚悟を決めて、流れに身を任せるの。」
「姉ちゃん俺にだけ厳しくねえ?俺にも優しいこと言ってよ。しょうがないから勉強は大変だけど、自分のできる限りするよ。でもさ、流れに身を任せるのも難しいんだよ、それぞれの方向が正しそうで間違っているようで流れがどちらなのかも分からないんだ。」
「あ、そろそろ行かなきゃ。」
「姉ちゃん、なあ、姉ちゃんは幸せなのかよ。」
「言ったでしょ、皆の幸せが私の幸せだって。
ちゃんとのってよ。あなたが感じた流れに。
あんた、鼻が良かったでしょ。ちゃんと嗅ぎなさいよ、幸せの臭い。」
「アドバイスが抽象的すぎるよ姉ちゃん。姉ちゃん、俺、姉ちゃんと出会えてよかったよ、たくさん勉強もさせてもらってる、生きていてくれて、ありがとう。」
「うん。私もありがとうね。じゃあ、さようなら。」
「さようなら。」




